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trial 試練
滑らせる
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私が、会った中で、一番最年長は36歳の橋元先生だ。
「……乗り換えるとか、そんなんじゃないですから」
でも、どうしてそれを、この立道が知ってる?
立道は、まだ何か言いたげに私を見ていて、動かない。
「ちょっと、退いてもらっていいですか?」
穴を開ける為のパンチを取りに立ち上がろうとすると、
「ここのラーメン、俺、週に二回は食べるんだよな」
阻むようにして、何かポケットから取り出して、私に見せた。
「!」
それは、
「ここの醤油と豚骨の特製ラーメン最高なんだよな。外回り中も、仕事帰りも良く行くよ」
私と先生が久しぶりに行った、ラーメン店のクーポン券だった。
「いい感じだったよな。カウンターの端っこで、くっつく様に座って。もしかして、不倫かなぁと……」
立道に襲われそうになった時の、豚骨とニンニクの口臭を思い出した。
まさか。
よりにもよって、こんな質の悪い男に見られるなんて。
「先生とはそういう間柄じゃないから。……それに、不倫でもない」
イラッとして、つい、口を滑らせた。
「……先生? あの人、教師なの?」
立道が面白そうに言うと、
「え?? 何の話?! ちょっと楽しそうね!」
荒城さんまで近寄って、話に食い付いてきた。もう、こうなるとややこしい。
「これ綴じて仕舞ったら帰りますから、とりあえず、そこを退いてください」
私の中で、腹黒名コンビの位置にある二人の間を、強引に割いた。
「ね、立道くん何の話してたの?」
背後で好き勝手に他人の話題をする二人は、本当にお似合い。
極限、関わりたくない……。
ーーPM 6:50
帰りは不運にも雨。
寒い。
止みそうで止まない空を眺めながら、駅前のカフェに立ち寄る。
先生からメールでも来てないかとスマホをいじっていると、誰かが私のそばを通った。
フッ……と顔を上げる。
「……あ」
あちらも、私に気がついた様子。
雨で、茶色い髪が白い顔にへばりついているその人は…………。
「……お疲れ」
「……お疲れさまです」
久しぶりに、葉築さんとバッタリと 会ってしまった。
「……乗り換えるとか、そんなんじゃないですから」
でも、どうしてそれを、この立道が知ってる?
立道は、まだ何か言いたげに私を見ていて、動かない。
「ちょっと、退いてもらっていいですか?」
穴を開ける為のパンチを取りに立ち上がろうとすると、
「ここのラーメン、俺、週に二回は食べるんだよな」
阻むようにして、何かポケットから取り出して、私に見せた。
「!」
それは、
「ここの醤油と豚骨の特製ラーメン最高なんだよな。外回り中も、仕事帰りも良く行くよ」
私と先生が久しぶりに行った、ラーメン店のクーポン券だった。
「いい感じだったよな。カウンターの端っこで、くっつく様に座って。もしかして、不倫かなぁと……」
立道に襲われそうになった時の、豚骨とニンニクの口臭を思い出した。
まさか。
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イラッとして、つい、口を滑らせた。
「……先生? あの人、教師なの?」
立道が面白そうに言うと、
「え?? 何の話?! ちょっと楽しそうね!」
荒城さんまで近寄って、話に食い付いてきた。もう、こうなるとややこしい。
「これ綴じて仕舞ったら帰りますから、とりあえず、そこを退いてください」
私の中で、腹黒名コンビの位置にある二人の間を、強引に割いた。
「ね、立道くん何の話してたの?」
背後で好き勝手に他人の話題をする二人は、本当にお似合い。
極限、関わりたくない……。
ーーPM 6:50
帰りは不運にも雨。
寒い。
止みそうで止まない空を眺めながら、駅前のカフェに立ち寄る。
先生からメールでも来てないかとスマホをいじっていると、誰かが私のそばを通った。
フッ……と顔を上げる。
「……あ」
あちらも、私に気がついた様子。
雨で、茶色い髪が白い顔にへばりついているその人は…………。
「……お疲れ」
「……お疲れさまです」
久しぶりに、葉築さんとバッタリと 会ってしまった。
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