ー密 会ー溺れる前に抱き止めて 【最後にSS】

光月海愛(こうつきみあ)

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助け

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   この人は、キライな女にもキスをする事が出来るらしい。
    冷たい床に押し倒された途端、

 「……ッ、」

    恐らく昼に食べたんであろう、豚骨とニンニク臭のする唇を押し当てられた。

    悲鳴を上げようとしても、それが邪魔をする。
手で立道の顔両サイドを掴んで押しやろうとしたけれど、全然ダメで。
    足をばたつかせて、間にある立道の腰を蹴り狙うも当たらない。

    無情な位の圧倒的な力の差で、その足も大きな手に押さえつけられた。

  「……ハぁ……ハァ」

    荒くなった呼吸が耳元を襲い始めて鳥肌が立つ。

   もう、ダメかも。

   お願い。

   誰か来て。

   警備、来てーーー

    顔を上げると、頭上のドア横にある、緊急時の通報送信ボタンが目に入った。

    あれを押せばーーー


     無駄だと分かっていても、必死に手を伸ばしていたら、ーーカチッ……と、ドアが開かれた。

    無我夢中で服を脱がそうとする立道は、それに気づかずに、顔をそちらに向いた私だけが、扉を開けた人物を見ることが出来た。

    けして、大柄ではない、細いシルエット。

    でも、革靴は男性もの。

    見覚えのあるスーツのズボン。


    まさか。

    嘘。

    僅かに開けられた隙間から、驚いた顔を見せていたのは、


  「……さん」


    室岡さんと接待に向かった筈の、葉築さんだった。



    目を丸くして、床上の猥褻な光景を見下ろした葉築さんと目が合う。

 「……葉……」

   葉築さん!

    叫ぼうとした私の唇を、

 「ッ!」

    再び、立道のニンニク臭が覆うとそれもできなくなった。
   もがきながら、見上げるとーー

   え?

   いない?

    助けてくれるどころか、葉築さんは姿を消してしまっていた。

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