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frustration 挫折と屈辱
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「室岡さん……」
この会社に勤めて六年、室岡さんが支店長になってから二年。
一緒に飲みに行くなんて、強制参加の送歓迎会くらいだ。
それなのに、
「昼間も、珍しく立道が鷲ちゃんを乗せて行ったからオカシイと思ってたんだ。立道、お前、あれだろ? 鷲ちゃんが今日やけにキレイだから、なんとかモノにしようとしてんだろ? それはダメだぞ? もうすぐ人妻になるかもしれないんだから」
「はぁぁ?……あ、いや、」
何か考えがあって私を誘った立道さんも、室岡さんの飛んだ憶測に困惑。
「鷲ちゃん守るために、さっさと仕事切り上げて俺は飲みに付いていくぞ」
この様子に、荒城さんが不快感をもろに露にしていた。
うわー、私の事、睨んでる。
その後方に葉築さんの姿が見えて、助けを求めるように視線を送ると、
「俺も飲みに行こっかな。鷲塚さんの貞操守るために」
火に油を注ぐような言葉を放って、事を面白がっていた。
「なになに? 鷲塚さん、モテ期ぃー?」
完全に歪んだ笑顔で、荒城さんまで入ってくる。
「そういうんじゃなくて……」
元はと言えば、あなたが原因でーー……
「なんか楽しそー! 私も行こうかなー♪ いい? 立道くん」
荒城さんが睫毛を瞬きさせてお願いすると、″ 待ってました!″ と言わんばかりのニヤケ顔を浮かべる立道さん。
「荒城さんの好きそうな店はリサーチ済みだよ!」
それなら、始めから室岡さんで、荒城さんを釣れば良かったのに。
なんでこのメンツでも飲まなきゃいけないのよ?
……ため息が出そうな私の横で、
「荒城さんが加わるなら、別にナイトのお出ましでもないよな?」
帰り支度を止めた室岡さんと、同じく再び仕事を始めた葉築さんが、飲み会参加の撤回をした。
荒城さんの可愛い顔が、また鬼のようになった。
これは、ヤバい。
「……あの、私もやっぱり、今日は帰ります」
「はぁぁ?!ちょっとぉ?!」
結果。
立道さんの思惑通り? 荒城さんは、眼中になかった彼と二人で飲みに行くことに。
ホッとして、事務所をあとにし、駅に向かっていると、
ブブブーー!
葉築さんから、メッセージがきた。
【昼間の続きをしたいんだけど】
一昨日、ホテルを出た後も、もしかしたら、一度だけの関係かもしれないと思った。
″ 駅で一目惚れしたんだよ ″
あれも、思わず出た言葉で、酔ったはずみなのかも、と。
でも。
【頻繁に会ったら飽きない?】
【全然、足りないくらい。俺、ハマりすぎ?】
こんな些細なやり取りにも、心が躍ってしまう。
【ううん。じゃあ、待ってる】
【寒くないところで待ってて。あと三十分もしたら片付くから】
もうすぐ冬がやって来るというのに。
浮き足たった私の心は、まるで春のよう。
この会社に勤めて六年、室岡さんが支店長になってから二年。
一緒に飲みに行くなんて、強制参加の送歓迎会くらいだ。
それなのに、
「昼間も、珍しく立道が鷲ちゃんを乗せて行ったからオカシイと思ってたんだ。立道、お前、あれだろ? 鷲ちゃんが今日やけにキレイだから、なんとかモノにしようとしてんだろ? それはダメだぞ? もうすぐ人妻になるかもしれないんだから」
「はぁぁ?……あ、いや、」
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「鷲ちゃん守るために、さっさと仕事切り上げて俺は飲みに付いていくぞ」
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うわー、私の事、睨んでる。
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なんでこのメンツでも飲まなきゃいけないのよ?
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帰り支度を止めた室岡さんと、同じく再び仕事を始めた葉築さんが、飲み会参加の撤回をした。
荒城さんの可愛い顔が、また鬼のようになった。
これは、ヤバい。
「……あの、私もやっぱり、今日は帰ります」
「はぁぁ?!ちょっとぉ?!」
結果。
立道さんの思惑通り? 荒城さんは、眼中になかった彼と二人で飲みに行くことに。
ホッとして、事務所をあとにし、駅に向かっていると、
ブブブーー!
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【昼間の続きをしたいんだけど】
一昨日、ホテルを出た後も、もしかしたら、一度だけの関係かもしれないと思った。
″ 駅で一目惚れしたんだよ ″
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でも。
【頻繁に会ったら飽きない?】
【全然、足りないくらい。俺、ハマりすぎ?】
こんな些細なやり取りにも、心が躍ってしまう。
【ううん。じゃあ、待ってる】
【寒くないところで待ってて。あと三十分もしたら片付くから】
もうすぐ冬がやって来るというのに。
浮き足たった私の心は、まるで春のよう。
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