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frustration 挫折と屈辱
企み
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5分ーーと言っていたのに。
重なった感触を忘れたくないかのように。
まるで性行為してるみたいに、いつまでも唇を吸い合ってた。
秋が深まり、風が少しだけヒンヤリしてきたせいもあって、葉築さんの指は一段と冷たく感じた。
その指が時折、シャツの中の膨らみを掴んだり、ブラの隙間を泳いだりするから、たまらず、
「そろそろ仕事モードに……」
押さえるように掴んで、このまま突っぱしることを制御した。
「そうだな、俺はいいけど、鷲塚さんがあんまり乱れるとマズイかも」
葉築さんは聞き分け良く、開けた私のシャツのボタンを手際よく閉めると、自分の口元に微かに付いたピンクのグロスをサッと拭き取った。
「先に行って」
「あ、うん」
そして、柵にもたれかかって、一呼吸。
「ちょっと、落ち着かせてから行く」
「……え?」
「あれだけでも、めっちゃ元気になったもんで」
「わー……大変」
ちょっと恥ずかしそうに言う彼は、やっぱりまだ若いんだなぁ、と思った。
信と一歳しか変わらないのに、性欲の強さも全然違うなぁ、と。
「……別にそれだけが全てじゃないけど」
エレベーターの中で独り言を吐いて、事務所に戻る。
「いつもより遅くなかった? あ、さては立道に……」
「はいはい」
室岡さんのツマラナイ冗談にも、今日は思い切り愛想笑いを浮かべることができた。
「お疲れ様です、お先に失礼します」
残業するほどの仕事も、他社員からのお手伝い要請もない私は、今日も定時に帰る予定だった。
もしかしたら、あとで葉築さんから何かお誘いがあるかもしれない。
そんな期待を秘めて退社の認証を済ませようとしたら……。
「鷲塚さん、ちょい待って」
「……え、……はい?」
なぜか、
「なに、その嫌そうな顔」
また、独りよがりな立道さんが声をかけてきた。
「嫌、というかさっきのお話なら、もう」
「昼間の話はいいからさ、たまには飲みにでも行かない?」
「……え」
「鷲塚さん、結婚したら飲みにも行けないじゃん、今のうちに誘っておこうと思って」
はい?
どういう風の吹き回し?
というか、何を企んでるの?
「二人で?」
「俺は二人でもいいけど、他に誰か誘う?」
普段、荒城さんしか見えてないくせに、なぜか馴れ馴れしく肩を抱いてきた。
昼間、私に舌打ちした奴と同じ人とは思えない。
返事に困っていると、
「俺も行く」
低く、太い声を出して、手をあげる人が現れた。
なんと、
「鷲ちゃん、困ってるじゃん」
室岡支店長だった。
重なった感触を忘れたくないかのように。
まるで性行為してるみたいに、いつまでも唇を吸い合ってた。
秋が深まり、風が少しだけヒンヤリしてきたせいもあって、葉築さんの指は一段と冷たく感じた。
その指が時折、シャツの中の膨らみを掴んだり、ブラの隙間を泳いだりするから、たまらず、
「そろそろ仕事モードに……」
押さえるように掴んで、このまま突っぱしることを制御した。
「そうだな、俺はいいけど、鷲塚さんがあんまり乱れるとマズイかも」
葉築さんは聞き分け良く、開けた私のシャツのボタンを手際よく閉めると、自分の口元に微かに付いたピンクのグロスをサッと拭き取った。
「先に行って」
「あ、うん」
そして、柵にもたれかかって、一呼吸。
「ちょっと、落ち着かせてから行く」
「……え?」
「あれだけでも、めっちゃ元気になったもんで」
「わー……大変」
ちょっと恥ずかしそうに言う彼は、やっぱりまだ若いんだなぁ、と思った。
信と一歳しか変わらないのに、性欲の強さも全然違うなぁ、と。
「……別にそれだけが全てじゃないけど」
エレベーターの中で独り言を吐いて、事務所に戻る。
「いつもより遅くなかった? あ、さては立道に……」
「はいはい」
室岡さんのツマラナイ冗談にも、今日は思い切り愛想笑いを浮かべることができた。
「お疲れ様です、お先に失礼します」
残業するほどの仕事も、他社員からのお手伝い要請もない私は、今日も定時に帰る予定だった。
もしかしたら、あとで葉築さんから何かお誘いがあるかもしれない。
そんな期待を秘めて退社の認証を済ませようとしたら……。
「鷲塚さん、ちょい待って」
「……え、……はい?」
なぜか、
「なに、その嫌そうな顔」
また、独りよがりな立道さんが声をかけてきた。
「嫌、というかさっきのお話なら、もう」
「昼間の話はいいからさ、たまには飲みにでも行かない?」
「……え」
「鷲塚さん、結婚したら飲みにも行けないじゃん、今のうちに誘っておこうと思って」
はい?
どういう風の吹き回し?
というか、何を企んでるの?
「二人で?」
「俺は二人でもいいけど、他に誰か誘う?」
普段、荒城さんしか見えてないくせに、なぜか馴れ馴れしく肩を抱いてきた。
昼間、私に舌打ちした奴と同じ人とは思えない。
返事に困っていると、
「俺も行く」
低く、太い声を出して、手をあげる人が現れた。
なんと、
「鷲ちゃん、困ってるじゃん」
室岡支店長だった。
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