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エレベーター
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葉築さんが指指したのは、道を挟んだ真向かいにあるコンビニだった。
「いいですね、でも怒られないかな?」
「誰に?そんなヤツいる?」
「小村さんとか」
「なんでそこで経理が出てくんの? 会社の金で買うわけじゃねーし」
お金の問題ではなくて、帰りが遅いとチクチク言われそうな気がして。
何せ、私は営業とは違って、事務所が本拠地だから。
「なんか言って来たら、″ ガタガタ言うな、あんたのメイク直しの時間よりよっぽど早いわ ″ って鷲塚さん言いな」
「私が言うの?」
「いーじゃん、どーせ寿退社するんだろ?」
小さい事を気にしない葉築さんは、笑いながらコンビニのカフェラテを2つ購入。
「あのホテルの珈琲より美味しいから」
ちょっと気恥ずかしそうに珈琲を注入していた。
「あ、鷲塚さんて砂糖入れるの?」
「どっちでもいけます。でもカフェラテなら入れようかな?」
葉築さんが入れてくれた珈琲にシュガーを入れる。
ついでに備え付けのシナモンパウダーも入れてみた。
「甘そうな匂いだな」
「葉築さんはだいたいブラックですよね?」
「うん。飲み物に甘味は要らないと思ってる」
「……おとなー」
「さっき子供扱いしたくせに」
「両刀遣い」
「使い方ちがわねー?」
コンビニを出て、会社までの一キロほどの距離を、珈琲をすすりながら、何気ない会話で埋めていく。
歩きながら、ふと、久しぶりに遭遇した橋元先生が口にしていた缶珈琲を思い出した。
あれ。かなり甘いやつなんだよね。 昔から、そういうのばかり飲む人だった。
″ 糖尿になりますよ ″
良くそんなこと言ってたっけ。
懐かしいこと思い出してたら、いつのまにか会社ビルに着いてしまっていた。
「ね、女子社員っていつもこの距離歩いて銀行に行ってるの?」
葉築さんがエレベーターを待ちながら、私の足元を見ていた。
あ。
爪先、ちょっと痛んでる。
「……そうなんです。電車に乗っても、駅から近くじゃないので結局は歩かなきゃいけなくて。だからパンプス、直ぐにダメになって」
靴がキレイじゃないのって、すごく恥ずかしい。
「大変だよなぁ、俺はたまたま今日歩きだったけど、普段は車か電車で移動だし」
「いい運動にはなるけど」
「荒城さんとかは、あんまり歩いて銀行行かないんじゃない?」
「え、あー……そーですね、確かに営業の車に便乗させて貰ってる事が多いかな」
「だろうな、あの人の靴。ヒールが細くて高くて、歩き用じゃねーもん。本当に見た目だけ」
「営業事務なんで時にはお客様の所へ集金にも行くし、見た目は大事かも」
「誰もモデル歩きする集金人は望んでねーって」
前から感じてたけど……。
葉築さんは、本命の彼女は美人だけど、他の美人には興味がないみたい。
ちょっと、変わってる?
私の不可解な視線にも気が付かないまま、
「はい、どうぞ」
葉築さんが、降りてきたエレベーターに先に乗せてくれた。
「良かった、誰も乗ってない」
「……そー、ですね」
とっくに気がついていたものの、やっぱり、自然と敬語になってしまう。
″ 二人の時はタブー ″
そう言われてたけど、あの時酔ってたし、気にしないでいいのかな。
エレベーターの上がっていく時の、脳ミソが置いてきぼりになる感じが苦手。
特に会話もないまま、ーーチン。
あっという間に会社に到着。
だけど、
「この前、聞きそびれた、というか流されたけど」
「……? はい?」
「先生とは、どこでセックスしてたの?」
葉築さんは降りることを許さずに、そのままエレベーターの扉を閉めてしまった。
「いいですね、でも怒られないかな?」
「誰に?そんなヤツいる?」
「小村さんとか」
「なんでそこで経理が出てくんの? 会社の金で買うわけじゃねーし」
お金の問題ではなくて、帰りが遅いとチクチク言われそうな気がして。
何せ、私は営業とは違って、事務所が本拠地だから。
「なんか言って来たら、″ ガタガタ言うな、あんたのメイク直しの時間よりよっぽど早いわ ″ って鷲塚さん言いな」
「私が言うの?」
「いーじゃん、どーせ寿退社するんだろ?」
小さい事を気にしない葉築さんは、笑いながらコンビニのカフェラテを2つ購入。
「あのホテルの珈琲より美味しいから」
ちょっと気恥ずかしそうに珈琲を注入していた。
「あ、鷲塚さんて砂糖入れるの?」
「どっちでもいけます。でもカフェラテなら入れようかな?」
葉築さんが入れてくれた珈琲にシュガーを入れる。
ついでに備え付けのシナモンパウダーも入れてみた。
「甘そうな匂いだな」
「葉築さんはだいたいブラックですよね?」
「うん。飲み物に甘味は要らないと思ってる」
「……おとなー」
「さっき子供扱いしたくせに」
「両刀遣い」
「使い方ちがわねー?」
コンビニを出て、会社までの一キロほどの距離を、珈琲をすすりながら、何気ない会話で埋めていく。
歩きながら、ふと、久しぶりに遭遇した橋元先生が口にしていた缶珈琲を思い出した。
あれ。かなり甘いやつなんだよね。 昔から、そういうのばかり飲む人だった。
″ 糖尿になりますよ ″
良くそんなこと言ってたっけ。
懐かしいこと思い出してたら、いつのまにか会社ビルに着いてしまっていた。
「ね、女子社員っていつもこの距離歩いて銀行に行ってるの?」
葉築さんがエレベーターを待ちながら、私の足元を見ていた。
あ。
爪先、ちょっと痛んでる。
「……そうなんです。電車に乗っても、駅から近くじゃないので結局は歩かなきゃいけなくて。だからパンプス、直ぐにダメになって」
靴がキレイじゃないのって、すごく恥ずかしい。
「大変だよなぁ、俺はたまたま今日歩きだったけど、普段は車か電車で移動だし」
「いい運動にはなるけど」
「荒城さんとかは、あんまり歩いて銀行行かないんじゃない?」
「え、あー……そーですね、確かに営業の車に便乗させて貰ってる事が多いかな」
「だろうな、あの人の靴。ヒールが細くて高くて、歩き用じゃねーもん。本当に見た目だけ」
「営業事務なんで時にはお客様の所へ集金にも行くし、見た目は大事かも」
「誰もモデル歩きする集金人は望んでねーって」
前から感じてたけど……。
葉築さんは、本命の彼女は美人だけど、他の美人には興味がないみたい。
ちょっと、変わってる?
私の不可解な視線にも気が付かないまま、
「はい、どうぞ」
葉築さんが、降りてきたエレベーターに先に乗せてくれた。
「良かった、誰も乗ってない」
「……そー、ですね」
とっくに気がついていたものの、やっぱり、自然と敬語になってしまう。
″ 二人の時はタブー ″
そう言われてたけど、あの時酔ってたし、気にしないでいいのかな。
エレベーターの上がっていく時の、脳ミソが置いてきぼりになる感じが苦手。
特に会話もないまま、ーーチン。
あっという間に会社に到着。
だけど、
「この前、聞きそびれた、というか流されたけど」
「……? はい?」
「先生とは、どこでセックスしてたの?」
葉築さんは降りることを許さずに、そのままエレベーターの扉を閉めてしまった。
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