ー密 会ー溺れる前に抱き止めて 【最後にSS】

光月海愛(こうつきみあ)

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secret 秘密

嫌いじゃない=好き?

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  金曜日。
 ファミレスにて。

「やっぱり、奥田さんよりも、室岡さんのほうが親近感あるし、付き合いやすい人だと思うんだよねぇ」

   と、自分のものさしで男性を評価しているのは、荒城さんだ。

 「……そうなのかなぁ」


   この荒城さんと二人でランチをするなんて、入社してからは初めてだ。
   今日は、二人で出張所へのお手伝いに出掛けたその帰りだった。

 「室岡さんも来年は34歳だし、そろそろ結婚したい頃のはず!」

  「男の34ってそうでもないんじゃない?」

  「そんないうけど、鷲塚さんの彼氏は26でしょ?その若さでプロポーズしてきたんでしょ?」

 「……付き合いが長いからだよ」

 「じゃ惰性で結婚するわけね」

 「……」

   物怖じしない、奔放な美人。憧れる部分もあるけど、やっぱり苦手。


  「私、室岡さんに告ってみようかな」

  「……告るって、なんて?」

  「え? そりゃ、″ 好きです ″ って」
  
  「……ぐっ」

    添え物のジャガイモが、喉に詰まりそうになった。
   この前まで奥田さんに狙いを定めてたのに。


  「荒城さんは本当にそれでいいの?」

   いくら奥田さんに彼女いたからって。


 「それでいいって? 意味わかんない。嫌いじゃないんだから、好きなのと変わらないじゃない?」

   ハンバーグを刺すようにつつきながら、荒城さんは、再び軽ーく、「決めた!」室岡さんに告白すると宣言。

 「だから、鷲塚さん、もう室岡さんに色目つかわないでよ?」

 「はい?」

   ついでに聞き捨てならない言葉で、私も刺した。

   色目?

   それ、どうやるの?

   ……逆に教えてほしい。


  ーーー


 「おー、お疲れ! どうだった? 浦和出張所は」

    事務所へ戻った荒城さんと私に、室岡さんが声をかける。

 「小さい所だけど、忙しそうな感じでした!あ、これ、お土産です!」

   二人で買ったチーズケーキを、荒城さんが室岡さんに手渡す。
   その際、さりげなく指先タッチをしてアプローチしていた。
   さすがだ。

 「仕事だから良かったのに。でもありがとー。あ、皆揃ってるうちに頂くか」

   ″ 本命 ″ と定めた人にお礼を言われて、とても嬉しそうな荒城さん。
   こういう可愛いところもあるんだよね。

  「荒城さん!」

   そこへ、面白くなさそうな顔をした立道さんが割り入ってきた。

  「福岡からの発注書の件なんだけど!」

  「え? なんか間違いあった?」

  「いや、期限が迫ってるけど、ちゃんと稟議にあげてるのかな?と思って」

  「は? それは小村さんに言ってよ!」

   荒城さんの眼中にない、少し気の毒な男性。

   「ケーキ切ってきますね」

   出張から戻っても、たいして急ぎの仕事がない私は、それを持って給湯室へ。

    あ、お茶もいるよね?
    これ、ベイクドケーキだから、水分取られ 
るもの。
    ヤカンでお湯を沸かしてると、

   「おかえり」

    珈琲を片手に、奥田さんが入ってきた。


 



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