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夜間歩行

新 年

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  ーー ピピピピピ……!

  パチッと目を覚まし、時計のアラームを止める。

  あれから、夜は眠れるようになった。


 2027年 1月。

 高校に入って、初めての冬休み。
 私は、新年を元の家で迎えていた。


 「美海、お昼にお祖父ちゃんのところに行くから、それまでに振り袖を着なさいね」

「えー……」

  お母さんと二人きりのお正月。
  琢磨もお父さんもいない。
  私が、この生活を選んだ。

「えー、じゃないの。中学の時に新調してから一度と袖を通してないでしょ。着付けはお母さんがするから」

「……苦しいし、動きづらい。別に着物じゃなくても」

 成人式じゃないんだし。

「駄目よ。お祖父ちゃんが買ってくれた着物なんだから見せてあげなさい。それにちゃんとした家の子は、初詣も着物で行くのよ。形だけでもそうでないと」

「……」

 お母さんは、相変わらずだ。

 私と二人きりの生活になっても、意地っ張りだったり見栄っ張りだったりするのは変わらない。

 でも。

「ほら、やっぱり可愛くなった」

 私を馬鹿にしたりすることもなくなり、

「その着物姿、あの子にも見せてあげたら? 初詣のあと出掛けたらいいじゃない?」

「え」

「彼女の晴れ着姿、男は好きなはずよ」

 颯斗くんのことを、化け物呼ばわりしなくなったし、私の彼氏として認めてくれるようになった。


  ーーでも。

「颯斗くん、冬休みはアメリカに行ってるから」

  私は、二学期が終わってからは、颯斗くんとは会えていなかった。

 

  ″ ちゃんと学校始まる頃には戻ってくるから ″

 そう言って、アメリカへ検査入院のために渡ってしまった。


  颯斗くん。
 ……本当に戻ってくるよね?




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