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変化
本番
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翌日のHRでの、実行委員から皆への報告は、颯斗くんと野沢さんが率先してやってくれた。
私は、もっぱら黒板係。
「野沢ちゃんがお化け役やんの?」
「じゃあ、俺もやる!」
クラスのアイドル的女子がやるなら、と、男子の数名が立候補してお化け役はすんなり決まった。
「あとは、当日の受付の番表を作成するので、それぞれの都合のいい時間帯を話し合うこと。お化けの衣装や暗幕、大道具の創作、セッティングは全員でするようにしますので、放課後、部活のある人は昼休みに協力してください」
皆、″ めんどくせぇ″ と言いながらも、颯斗くんや野沢さんが会を進行しているからか、反対する人はいなかった。
「迷路を作る際の壁画はメインを美術部の人に頼んでるんで、そっちの手伝いもよろしく」
南くんも、普段は目立たない美術部の男子を紹介して、他の陰キャラの人がやり易いように、うまく仕事を与えていた。
こうして、誰一人として文化祭に携わらない生徒が出ないように企画したクラスの出し物。
私も、また少しずつ、他の女子とも接するようになり、事は順調に本番を迎えようとしていた。
ーーー
「あれ? 美海は 受付、午前と午後、二回も入ってんの?」
文化祭当日。
午前の受付をしてるところへ、颯斗くんが当番表を見てやってきた。
「うん、別に押し付けられたわけじゃないよ。自ら引き受けた」
帰宅部で、特に一緒に回る友達が居ない私は、自分のクラスの出し物以外は暇だったからだ。
「なんだよー、じゃ、午後から一緒に文化祭回ろうと思ったのに、できねーじゃん」
颯斗くんが、子供みたいに不満そうな顔をした。
「……え、だって」
颯斗くんは、友達沢山いるから、私とは一緒には居られないと思ってたから。
「部活やってる奴はそれぞれの模擬店あるし、彼女いる奴はそっち優先だから、俺も美海と、って思ってた」
「えー、それなら言ってくれたら良かったのに」
初めての高校の文化祭。
軽音部や演劇、吹奏楽部のステージ、出店、展覧会まわり。
そういうのをカップルで過ごすの、すごく憧れてたから。
「じゃ、俺と美海の空き時間で合うところ、予約していい?」
「う、うん」
そんな。予約なんて。
私に予定とかないのに。
颯斗くんは、コピーした当番表の自身と私の間の時間を指して、
「この時間。迎えに来るから。ここで待ってて」
「おーい、颯斗ー! 二年生の女がお前とコスプレ撮影したいってよ!」
「あー、それ勘弁!」「顔出すだけ出せって」
「わかったから引っ張るなよ」
隣のクラスの友達に、コスプレカフェへ強引に連れていかれてしまった。
二年生女子とコスプレ撮影……。
それ、肩組んだりもするのかな。
「……」
モヤモヤしたけれど、颯斗くんのカッコ良さは全学年に知られてるんだなぁと、誇らしげにも感じた。
独り占めできる時間があるんだから、我慢しよ。
「あの、このお化け屋敷、小学生でも大丈夫ですか?」
受付をしていると、小学生位の女の子を連れたお母さんが尋ねてきた。
「はい、大丈夫ですよ」
私が答えると、
「良かったー、高校の学園祭でもR12とか指定されたお化け屋敷あるんで」
そのお母さんは、安堵して子供の手を繋いでいって、御札を受け取って中に入って行った。
お手製の血のりまで付いた御札を。
もちろん、本物の血ではないけれど。
「お母さん、それ、なに?」
「中のお墓に張り付けないと出られないんだって」
「えー」
私は、お化け役の野沢さんたちにスマホで合図。
すると、大ヒットしたホラー映画のテーマソングが屋敷内に流れて、皆で作った仕掛けが次々に作動されていく。
迷路の途中にある大きな鏡。
……と思わせといて、顔無しお化けが出てきたり、御 札を奪おうと、壁から手が出てきたり。
予算内で奮発した、市販の電動フランケン人形も途中、地面を這ったりしていて最後まで飽きないはず。
中から、
「キャァァァ!」
という、お母さんの悲鳴が聞こえると、成功した達成感がジワジワやってきた。
見事、御札はりつけを成功させた親子は、「怖かったー」と、言いながら出口から出ていった。
「ありがとうございましたー」
二人の背中を見送っていると、来場者の波の中に見覚えのある人影を見つけた。
ーーえ。
お母さん?
私は、もっぱら黒板係。
「野沢ちゃんがお化け役やんの?」
「じゃあ、俺もやる!」
クラスのアイドル的女子がやるなら、と、男子の数名が立候補してお化け役はすんなり決まった。
「あとは、当日の受付の番表を作成するので、それぞれの都合のいい時間帯を話し合うこと。お化けの衣装や暗幕、大道具の創作、セッティングは全員でするようにしますので、放課後、部活のある人は昼休みに協力してください」
皆、″ めんどくせぇ″ と言いながらも、颯斗くんや野沢さんが会を進行しているからか、反対する人はいなかった。
「迷路を作る際の壁画はメインを美術部の人に頼んでるんで、そっちの手伝いもよろしく」
南くんも、普段は目立たない美術部の男子を紹介して、他の陰キャラの人がやり易いように、うまく仕事を与えていた。
こうして、誰一人として文化祭に携わらない生徒が出ないように企画したクラスの出し物。
私も、また少しずつ、他の女子とも接するようになり、事は順調に本番を迎えようとしていた。
ーーー
「あれ? 美海は 受付、午前と午後、二回も入ってんの?」
文化祭当日。
午前の受付をしてるところへ、颯斗くんが当番表を見てやってきた。
「うん、別に押し付けられたわけじゃないよ。自ら引き受けた」
帰宅部で、特に一緒に回る友達が居ない私は、自分のクラスの出し物以外は暇だったからだ。
「なんだよー、じゃ、午後から一緒に文化祭回ろうと思ったのに、できねーじゃん」
颯斗くんが、子供みたいに不満そうな顔をした。
「……え、だって」
颯斗くんは、友達沢山いるから、私とは一緒には居られないと思ってたから。
「部活やってる奴はそれぞれの模擬店あるし、彼女いる奴はそっち優先だから、俺も美海と、って思ってた」
「えー、それなら言ってくれたら良かったのに」
初めての高校の文化祭。
軽音部や演劇、吹奏楽部のステージ、出店、展覧会まわり。
そういうのをカップルで過ごすの、すごく憧れてたから。
「じゃ、俺と美海の空き時間で合うところ、予約していい?」
「う、うん」
そんな。予約なんて。
私に予定とかないのに。
颯斗くんは、コピーした当番表の自身と私の間の時間を指して、
「この時間。迎えに来るから。ここで待ってて」
「おーい、颯斗ー! 二年生の女がお前とコスプレ撮影したいってよ!」
「あー、それ勘弁!」「顔出すだけ出せって」
「わかったから引っ張るなよ」
隣のクラスの友達に、コスプレカフェへ強引に連れていかれてしまった。
二年生女子とコスプレ撮影……。
それ、肩組んだりもするのかな。
「……」
モヤモヤしたけれど、颯斗くんのカッコ良さは全学年に知られてるんだなぁと、誇らしげにも感じた。
独り占めできる時間があるんだから、我慢しよ。
「あの、このお化け屋敷、小学生でも大丈夫ですか?」
受付をしていると、小学生位の女の子を連れたお母さんが尋ねてきた。
「はい、大丈夫ですよ」
私が答えると、
「良かったー、高校の学園祭でもR12とか指定されたお化け屋敷あるんで」
そのお母さんは、安堵して子供の手を繋いでいって、御札を受け取って中に入って行った。
お手製の血のりまで付いた御札を。
もちろん、本物の血ではないけれど。
「お母さん、それ、なに?」
「中のお墓に張り付けないと出られないんだって」
「えー」
私は、お化け役の野沢さんたちにスマホで合図。
すると、大ヒットしたホラー映画のテーマソングが屋敷内に流れて、皆で作った仕掛けが次々に作動されていく。
迷路の途中にある大きな鏡。
……と思わせといて、顔無しお化けが出てきたり、御 札を奪おうと、壁から手が出てきたり。
予算内で奮発した、市販の電動フランケン人形も途中、地面を這ったりしていて最後まで飽きないはず。
中から、
「キャァァァ!」
という、お母さんの悲鳴が聞こえると、成功した達成感がジワジワやってきた。
見事、御札はりつけを成功させた親子は、「怖かったー」と、言いながら出口から出ていった。
「ありがとうございましたー」
二人の背中を見送っていると、来場者の波の中に見覚えのある人影を見つけた。
ーーえ。
お母さん?
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