上 下
34 / 67
変化

文化祭

しおりを挟む
「文化祭の出し物の話し合いが中断になったんだけども、うちのクラスは【お化け屋敷】ということでいいか?」

 朝のHR。
  担任の先生が、野沢さんと私、私の首を絞めた南くん、そして、その子を殴った颯斗くんを見て言った。

「もうどーでもいいよ、文化祭なんて」

「ゾンビとお化け役は決まったんだからさ」


  クラスの皆の反応は悪い。

  人気者だった颯斗くんと皆との間に僅かな溝が出来たせいか、何となく雰囲気が暗いからだ。

  教壇の方を見ないで、後ろを向いて話してる子もいる。

  年に一度の文化祭なのに、盛り下がっている。

「まぁ、そのお化役はおいおい。……とりあえず実行委員として熊川、野沢、里、南が務めろ」


  面倒臭がりの先生は、大事な委員を勝手に任命して、この話を済ませてしまった。


「あ??何で俺が実行委員なんだよ!」

「そうです、私は嫌です。里さん達とするのなんて」

  南くんと野沢さんが反論するも、

「昨日、問題起こした罰だ。特に南と熊川は謹慎処分に相当する行為だった。それを黙認してやるんだからこれくらいやれよ!」

  先生はうて合わない。

  颯斗くん、どう思ってるだろ? 係を押し付けられたこと。

  チラッと振り返り、真ん中の席の颯斗くんを見ると、眠たそうにアクビをしていた。
  ……もう、拍子抜け。





  休み時間。

「別に俺は構わないよ。美海もたまにはこういう役目もいいんじゃない?」

  先生に抗議しなかった颯斗くんに聞くと、全く苦じゃないようだ。
  そりぁ……、彼は元々、皆の中心にいるような人だけども。

「だって、問題起こしたって言われたけど、颯斗くんは私を助けてくれただけなのに」


  昨日のもめ事で、一番悪いのが誰なのか分かってないのは先生だけだ。


「結果だけ言うとね、俺は、自然に美海と一緒の時間が増えるから嬉しいんだよ」


「え」

  颯斗くんは、私の肩をポンと叩いたあと、


「南くん、野沢さーん、放課後に実行委員の話し合いするから帰るなよー」

  ワダカマリを感じさせない笑顔で二人を誘っていた。

  廊下にいた南くんは、軽く舌打ちしてるようだったし、野沢さんは、一瞬だけこちらを見て知らん顔してた。

 「あいつらが来るか来ないかは、任せるしかない」

 颯斗くんは、席に戻ると、いつものようにクラスメートと雑談を始めていた。

 どんなに酷い事を言う人がいようと、 彼は屈することなく輪に入っていく。

  そんな颯人くんに見とれる私。
  両思いなんて夢みたい。


  それに、……なんか、私だけがドキドキしてない?


 ″ 一緒の時間 ″ 。

どうせなら、二人きりが良かったけどな。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……

矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。 『もう君はいりません、アリスミ・カロック』 恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。 恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。 『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』 『えっ……』 任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。 私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。 それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。 ――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。 ※このお話の設定は架空のものです。 ※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

奴隷市場

北きつね
ライト文芸
 国が少子高齢化対策の目玉として打ち出した政策が奴隷制度の導入だ。  狂った制度である事は間違いないのだが、高齢者が自分を介護させる為に、奴隷を購入する。奴隷も、介護が終われば開放される事になる。そして、住む場所やうまくすれば財産も手に入る。  男は、奴隷市場で1人の少女と出会った。  家族を無くし、親戚からは疎まれて、学校ではいじめに有っていた少女。  男は、少女に惹かれる。入札するなと言われていた、少女に男は入札した。  徐々に明らかになっていく、二人の因果。そして、その先に待ち受けていた事とは・・・。  二人が得た物は、そして失った物は?

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

処理中です...