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恋心
デマ
しおりを挟む「取り敢えず、別居することになったから」
離婚を決意した両親は、届け出を出すのはもう少し先に延ばして、形からそれに近い状況へ移そうとしていた。
「お前達の高校とかもあるし、お父さんがまず一人で出ていく」
庭の紅葉が赤くなった頃。
お父さんは勤務先の病院に近いアパートへと住まいを移した。
離婚したら、家はどうするんだろう?
その疑問には琢磨が答えてくれた。
「土地は元々母さんの実家のもの。頭金も母さんのじいちゃんが出した。だけど家屋のローンは父さんが払ってる」
離婚が決まるとややこしくなりそう。
珍しく私と一緒に家を出た琢磨が、
「お前はどっちと暮らしたいの?」
と聞いてきた。
「……わからない」
選択権は私にあるけれど。
「俺は父さんと暮らすかなぁ。母さんは家の事は完璧にしてくれるけど、口うるせぇからな。医者になるにしても、別にじいちゃんの病院じゃなくても良いわけだし」
どちらからも必要とされている琢磨は、案外あっさりと決めているみたい。
……いいな。琢磨は。目標もあって。
「それより、お前の同級生の脳腫瘍の人、その後どうなの?」
医学部を目指す琢磨は、前に話した颯斗くんに興味津々だった。
「元気だよ、普通に。そこらの男の子より元気かも」
「へぇ、すげぇな。後遺症もないのか」
「そんなのあるの?」
「あるだろ。ほんの数年前までは冷凍したら細胞の破壊は避けられなかったんだから」
「……破壊」
知識もあるから怖い事を平気で言う。
「今度、その子に俺を会わせてくれない?」
そのくせ言った本人は、実験材料を見たい位の感覚だから鼻につく。
「機会があったらね」
兄ではあっても、琢磨に颯斗くんは会わせたくない。
ーーーー
「噂で聞いたんだけど、颯斗くんてやっぱり里さんと付き合ってるらしいよ!」
一緒に帰ったあの日から、そんなデマがクラス中、ううん、学年中に広まってた。
「颯斗くんが倒れた日、二人で公園のブランコに乗ってたんだってー」
「うわ~、青春」
「考えたらちょっとオタク的なところ二人合うかもね」
「ちょちょ、颯斗くんとネクラな里さん一緒にしないでよ!」
そんなデマを真に受ける人はいるもので、
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クラスの中心人物なのでその影響は大きい。女子は私を空気みたいに扱う。
慣れてるけど、やっぱり寂しい。
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