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二 渦
負のオーラ
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* * *
私は歴史が好きで、小説や漫画、映画もよく時代モノを観る。
その中でも、【陰陽師系】は好物で、あの映画を観てから主役をした能楽師でもある俳優さんのファンになったほどだ。
だから、橋本先輩が白い和紙を飛ばした時、思わず口に出して言ってしまった。
『形代……擬人式神』
人形に模した紙に呪文を唱えてそっと息を吹きかけるという秘儀により魂が宿り、鬼神などを召喚する事で陰陽師の思い通りに動く。
まさに映画で見たあれを、橋本先輩が試みようとしたことに驚いた。
……ううん。
違う。
驚いたけど、あまり、違和感を持たなかった。
だって、先輩はやはり普通の男の子とは違う気がしてたから。
それに――
うちのお父さんにお祓いをして貰った時、私、ぼんやりと見てしまったもの。
橋本先輩の背後に、平安時代の人がいた。
あれが何だったのか、誰なのかもわからないけれど――
翌日。
「まぁ、リリちゃん、わざわざ来てくれたの?」
テストが終わってから悠里の家へ見舞いに行った。
「はい。テストも休んでるし、気になって……」
「体は特に悪いところないみたいなのよー、頭痛い、とか吐き気がするとか、怠いとか、まるで仮病みたいなこと言うだけでねぇ」
悠里のお母さんは、私と一緒に訪れた橋本先輩や堀先輩に少しぎこちない笑顔を見せながらも、部屋に上げてくれた。
「悠里―、弓道部のお友達がお見舞いに来てくれたわよー」
お母さんに案内され、悠里の部屋に近づくにつれ、橋本先輩の表情が堅くなっているのがわかった。
生霊を飛ばす人のまわりは、負のオーラがすごいらしい。
「悠里、元気?」
部屋に入ると、悠里はベッドに上でぼぉっとした顔でスマホを弄っていた。こちらを見たのに、ほぼ無反応。
「もう、この子ってば一日中スマホばっかりしてるんですよ! だから頭も痛くなるの!」
悠里のお母さんが怒って、悠里の手からスマホを奪い取ると、ようやく入口の私と先輩たちが視野に入ったようで、
「ちょ、!? なんで先輩たちまで来てんの!?」
急にいつもの悠里になって、とても恥ずかしがっていた。
布団を被って、小さな子供みたいに拒絶する。
「もう、やだ! 皆 帰って!」
「そりゃないだろ、俺ら心配して部の代表で来たんだぜ」
堀先輩が声をかけるも、布団から出てこない。
「大事な話があって来たの」「寄ってたかってする大事な話ってなんなのよ!」
これだけ嫌がられても、このまま引き返せないと思ったのはなんでだろう?
「少しの間、二人だけで話をさせてください」
橋本先輩は、いつから持ってたのか、方位磁石を手にして一人頷きながら部屋を出て行った。
私は歴史が好きで、小説や漫画、映画もよく時代モノを観る。
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……ううん。
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驚いたけど、あまり、違和感を持たなかった。
だって、先輩はやはり普通の男の子とは違う気がしてたから。
それに――
うちのお父さんにお祓いをして貰った時、私、ぼんやりと見てしまったもの。
橋本先輩の背後に、平安時代の人がいた。
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「まぁ、リリちゃん、わざわざ来てくれたの?」
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「はい。テストも休んでるし、気になって……」
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「悠里―、弓道部のお友達がお見舞いに来てくれたわよー」
お母さんに案内され、悠里の部屋に近づくにつれ、橋本先輩の表情が堅くなっているのがわかった。
生霊を飛ばす人のまわりは、負のオーラがすごいらしい。
「悠里、元気?」
部屋に入ると、悠里はベッドに上でぼぉっとした顔でスマホを弄っていた。こちらを見たのに、ほぼ無反応。
「もう、この子ってば一日中スマホばっかりしてるんですよ! だから頭も痛くなるの!」
悠里のお母さんが怒って、悠里の手からスマホを奪い取ると、ようやく入口の私と先輩たちが視野に入ったようで、
「ちょ、!? なんで先輩たちまで来てんの!?」
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「大事な話があって来たの」「寄ってたかってする大事な話ってなんなのよ!」
これだけ嫌がられても、このまま引き返せないと思ったのはなんでだろう?
「少しの間、二人だけで話をさせてください」
橋本先輩は、いつから持ってたのか、方位磁石を手にして一人頷きながら部屋を出て行った。
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