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二 渦

千年前の恨み

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 厳かな気持ちで神に向き合い、祈り続ける。
 神なんて信じていないと言っていたのが嘘のように、山城リリは、真剣な表情で祓詞を聞いている。
 堀は……、何か苦行に耐えるかのようなひたすら我慢したような顔で目を閉じていた。

 次に祓いに使われるのは、塩。
 普通の食塩では無い、清めの塩が使われ盛り塩する際は、木製や陶器製の器に盛られる。
 更にこの塩を水に溶かした塩湯に榊の葉に浸した後、お祓いする対処に降りかけるように使う。

 呪いをかけられたペットボトル入りの髪の毛にそれをかけて数十秒後――

 俺は、それから黒い霧のような、人形ひとかたにも見える邪気が離れていくのを見た。
 それは、山城リリも同じようで、目を丸くし、おののいた表情で現象を見ていた。
 やはり、彼女は霊感があるようだ。
 堀は……見えないのだろう。
 山城の顔を見て、え、え、なに? と周囲を見回している。

 神主が、今度は榊を俺に向けた。
 俺も穢れを被っていることには間違いないから、希望は薄くとも、呪いが解けないかと微かに期待して祓いを受けた。
 しかし――


 俺自身には何も変化は起きなかった。
 陰陽師・滋岡川仁しげおかのかわひとにかけられた呪いは、一千年以上の時を経ても解かれることはない。

「は、橋本先輩……」

 この時、何か感じたであろう山城リリが、俺の方を見て――正確には俺の背後のいる何かを感じて――青ざめた顔をしていた。

 厳かで研ぎ澄まされた時間は、現世の邪気だけでなく、千年に渡る恨みも浮き彫りにしたのか、霊感のある俺と山城は、祓いが終わっても暫く現実には戻れなかった。

「これはこちらでお預かりして適切に葬りたいと思います」

 呪われていたブツが、ようやく俺の手から離れてホッとした。
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