16 / 50
二 渦
生霊と呪い3
しおりを挟む
学校を出た所で、山城がおずおずと尋ねてきた。
「……ああ、見えてるよ。強い霊も、小さな動物霊も」
だから悪い気のある場所では、ついて来られないように結界を張っている。
明日もテストだというのに、俺は、井川悠里がかけた呪いを解くために、ブツを探さなければならなかった。
俺はまだ現世で式神(眷属あるいは動物霊)を遣ったことはない。
通常、霊能者は日頃から自分の気や念も補給し,眷属の世話をするらしい。しかし、今まで遣うつもりもなかったから、それらに何かをしたことはない。
陰陽道自体、明治期に壊滅的打撃を受けて表舞台から姿を消している。
戦後復活した土御門家は形骸化しているという。
しかし、陰陽道の本流であるいざなぎ流ならば式うちもできるはず。
俺は、普段から塩や護符と一緒に持ち歩いている紙を引き結び、記憶に残る呪文をかけた。
「六根清浄急急如律令」
父なら、……安倍晴明なら、この和紙が鳥となって、呪いのブツの在処へと導いてくれるに違いないが――今の俺には、多分、そんな力はない。
校舎を出てすぐに、風にその和紙を乗せ任せた。
「千尋、こんな時に何遊んでるんだよ」
俺の前世など知らない堀が、呆れてその様子を見守っていたが、山城リリは、風に舞う白い紙を眩しそうに見上げて言った。
「形代……擬人式神」
俺は、ハッとして彼女の方を見た。
夕陽を含んで薄茶になった瞳が、舞っていく紙を追いかける。
――この目……。
――この人は――
「……ああ、見えてるよ。強い霊も、小さな動物霊も」
だから悪い気のある場所では、ついて来られないように結界を張っている。
明日もテストだというのに、俺は、井川悠里がかけた呪いを解くために、ブツを探さなければならなかった。
俺はまだ現世で式神(眷属あるいは動物霊)を遣ったことはない。
通常、霊能者は日頃から自分の気や念も補給し,眷属の世話をするらしい。しかし、今まで遣うつもりもなかったから、それらに何かをしたことはない。
陰陽道自体、明治期に壊滅的打撃を受けて表舞台から姿を消している。
戦後復活した土御門家は形骸化しているという。
しかし、陰陽道の本流であるいざなぎ流ならば式うちもできるはず。
俺は、普段から塩や護符と一緒に持ち歩いている紙を引き結び、記憶に残る呪文をかけた。
「六根清浄急急如律令」
父なら、……安倍晴明なら、この和紙が鳥となって、呪いのブツの在処へと導いてくれるに違いないが――今の俺には、多分、そんな力はない。
校舎を出てすぐに、風にその和紙を乗せ任せた。
「千尋、こんな時に何遊んでるんだよ」
俺の前世など知らない堀が、呆れてその様子を見守っていたが、山城リリは、風に舞う白い紙を眩しそうに見上げて言った。
「形代……擬人式神」
俺は、ハッとして彼女の方を見た。
夕陽を含んで薄茶になった瞳が、舞っていく紙を追いかける。
――この目……。
――この人は――
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる