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一 遮断と結界
山城リリは憑かれている
しおりを挟む―― 千尋の十八歳の誕生日まで、あと半年。――
「りり、“残念”だったね」
今日の高等学校夏季体育大会弓道競技会の成績が思わしくなかった私。
励ましてくれる仲間もいれば、“部のお荷物”と言わんばかりに冷たい視線を向けてくる先輩もいた。
“残念”とは言葉のまんま、4射中1本も矢が当たらないことを「残念」という。
こんなこと、二年になってから初めてだった。
「山城、ここ最近、急に調子が悪いんじゃないか?」
顧問の先生が言うように、数日前の合宿があった頃から、私は不調だ。
というか、つかれているのかもしれないと思う。
先日、合宿と他県校との練習試合も兼ねて、弓道場のある温泉旅館に泊まった時のこと。
部の皆で、早朝に近くの山岳に登ったあと、100本打ちの練習漬けで疲れていたはずなのに、その夜はなかなか寝付けなかった。
少し離れた宴会場の間から、カラオケや酔っぱらいの笑い声がいつまでも聞こえてきたせいかもしれない。
それでも、午前零時を回る頃には部屋の皆は寝入り、一人だけ目が冴えて布団の中でスマホをいじったりしていた。
目は疲労を感じる。
しかし、眠たくならない。
無意味にアドレナリンでも出てるような感じだ。
明日は6時起きなのに……困った。
不意に時間を見た時、尿意をもよおした。
その大部屋にはトイレは付いておらず、廊下に出なくてはいけなかった。
布団から這い出ると、半乾きだった髪から滴がポタッと垂れた。
廊下に出ると、宴会場からはまだ音楽と騒ぎ声が聞こえてくる。
『……今、夜中の2時前だよね? ちょっと非常識じゃない?』
近くに高校生が泊まっている部屋があるっていうのに。
宴会場の前を通って、チラリと入り口に視線をやる。
しっかり閉められた襖の前に、スリッパがきちんと並べてあった。
これだけ酔っ払いがいるのに。
きっと、出入りの度に中居さんが並べてるんだね。遅くまでお疲れ様です。
そんな軽い気持ちで、そこを通り過ぎようとした時、
「キャアァァァッ――……」
と女の人の悲鳴が宴会の間から聞こえてきた。
『な、なに?』
「誰か……、助け……――」
悲鳴に続いて、ガシャン!と何かが割れる音――
襖に誰かぶつかったのか、ベコッ!!と勢いよく凹凸ができる。
ギャアァァ、とかワァァァ! とか、男女の声が混ざり合うように漏れてきて、私は恐怖で動けなくなった。
中で、何かが暴れている気配――
その部屋から、とてもイヤなモノを感じた
『これだけの騒ぎ、近くの部屋で寝ている人は起きないの?』
震える足でゆっくり後ずさりし、誰か呼びにいかなくてはと踵を返したら、人にぶつかった。
「どうした?」
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