115 / 172
鉢合わせ
しおりを挟む―――
「え、今さっき送ってくれたやつ、全部ヨシが作ったの?」
「あぁ。暇だったから作った」
曲を、メンバーのアキとマネージャーとアルバムのディレクターに送ると、アキから電話があった。
すると、
「これ、売れんじゃね? いや、売ろう! 」
メンバーもマネージャーも、直ぐに乗り気の返事をくれた。
しかし、活動が停止している間、楽器持ってる奴は作曲したり、他のバンドのサポートに出たりやることは沢山あるようで、直ぐには集まれない様子。
「松藤さんは、なんていってる?」
「まだ、なにも……」
俺たちVirtueのデビューからサポートしてくれた凄腕プロデューサー松藤氏からは、まだ返事はない。
彼がOKを出せば、途中で中止になった新作のレコーディングにこれも織り混ぜてもらう予定だ。
「そっか、絶対売れると思うンだよな、返事楽しみだな!」
「あァ…」
ドアキとの電話を切って、ふと、部屋のソファーに女物のピアスが落ちていることに気づく。
……晶のか…。
アイツ、地味なわりにピアスはしてたよな。
ライヴの時は派手目にしてたけど、まるで似合ってなかった。
青い石の付いたピアスを手に取り、どうしようかと思っていると。
Ririririri♪
今度は待ちに待ったディレクターからの電話が……。
「ヨシ! めっちゃ良い曲作ったな! Virtueのイメチェンにはピッタリだ!」
予想通りの反応で、活動が再開になれば、これも直ぐにレコーディングに組み込みたいと言ってくれた。
「……アルバム発売は大丈夫ですか?」
「騒ぎが収まれば大丈夫さ! 薬物に手出してもそうやって復活したバンドなんていくらでもいる!」
「……そぅっすね」
ーー″ アルバムが発売されたら ″
晶の言葉を真に受けてるわけじゃないけれど、二人の関係が進展しそうな兆しに、俺は直ぐに車を走らせた。
ピアスは口実だ。
とりあえず吉報を直接、アイツに伝えたい。
車を晶のアパートの前に止めて、電話をかけてみる。
あのままタクシーで帰ったなら、もう着いてるはずだ。
がしかし、
「くそ……」
なかなか出やがらない。
飲み会の後だったし、寝てしまったかな?
そもそも、送り狼になりたくなくて一人で帰らせたのに、アパートまで来るなんて矛盾してるか?
袋に入れたピアスを見つめて、郵便ポストに入れておこうかとも思った。
さすがにこれを見たら連絡してくるだろ。
……そーするか。焦りすぎた。
諦めて、エンジンをかけたまま車を降りたその時だった。
「押し掛けて悪かったな」
「……!」
晶の部屋から男が出てきた。
続けて、本人も。
「……本当ですよ、あんまりビックリさせないでください」
「たいしてビックリしてなかったじゃんか」
「いや、まぁ、もろもろ初めての事ばかりで……」
「そうだろうな、初めての後藤にしたら、戸惑うことばっかりだっただろ?」
親しげに話すその男は、
「はい、もうこういうの、月山さんだけでお腹一杯です」
月山 理ーーー俺の生物学上の父親ーーー。
「そうか、じゃぁ、またな」
「……はい。おやすみなさい」
アイツ。とうとう、ヤりやがったのか。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
デキナイ私たちの秘密な関係
美並ナナ
恋愛
可愛い容姿と大きな胸ゆえに
近寄ってくる男性は多いものの、
あるトラウマから恋愛をするのが億劫で
彼氏を作りたくない志穂。
一方で、恋愛への憧れはあり、
仲の良い同期カップルを見るたびに
「私もイチャイチャしたい……!」
という欲求を募らせる日々。
そんなある日、ひょんなことから
志穂はイケメン上司・速水課長の
ヒミツを知ってしまう。
それをキッカケに2人は
イチャイチャするだけの関係になってーー⁉︎
※性描写がありますので苦手な方はご注意ください。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※この作品はエブリスタ様にも掲載しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

元カノと復縁する方法
なとみ
恋愛
「別れよっか」
同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。
会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。
自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。
表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!

恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
アダルト漫画家とランジェリー娘
茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。
今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。
☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。
☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる