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衝撃Ⅱ

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 「ヨ、ヨシ?  ……な、なんでこんなところに?」

 完全に声が震えていた。

 私を背後から支えてくれたヨシは、パッと手を離すと、


「俺の事知ってるんだ……?」


 今更ながらサングラスをかけだした。


「し、知ってます!! 大ファンです! ライヴもいってます! あ、ありがとうござ……」「ヨシノリ」

  興奮したままお礼を言う私の声を遮ったのは、


「さっきの話だが……あれ?  後藤?」

 階段を降りてきた月山さんだった。


  今――

″ヨシノリ″ って、ヨシの事呼ばなかった?


 素の姿を晒さないカリスマバンドのボーカリストが、こんな所に居るのも不思議だ。

それより、なにより、

「さっきの話ならもう済んだ。2度と俺達の前に気配を現すな。物も現金も送ってくるな」

 ヨシと、うちの部長が知り合い?

「それはお前の気持ちの問題だろ?」

 しかも、大好きなはずのヨシと険悪な雰囲気。


「気持ち悪い真似するなって言ってるんだよ!」


  私の事なんて、まるで居ないかのように繰り広げられるやり取り…。しかし、


「月山さん」

  黙っていられなかった。

 「なんだ?」

  月山さんが 明らかに邪険な目付きで私を見下ろす。

 「いくら好きだからって、メンバーに現金とか迷惑になるプレゼント送ったらダメですよ。同じファンとしても抜け駆けは許せません」


 私は、月山さんが、ストーカー的につきまとっているのだと解釈していた。


「……はぁ?」


  この時、私の呼吸は荒かった。

  
「後藤、お前何言ってるんだ?」

 そんな私を、月山さんが、ちょっと面食らった顔で見ている。

 とぼけちゃって。
 そもそも女の観客ばかりのスタンディングライヴに中年男一人で参戦するあたり普通の神経じゃないのよ。もっと早く気づくべきだった。

「あまりに度の過ぎた追っかけ行為は、ファンクラブからも退会してもらいたいです!ライヴも出入り禁止にしたっていいくらい! ヨシがこんなに嫌がってるんだから」


「何も分からずに口を挟んでくるな。お前はいいから早く店に行ってこい」


私の忠告なんて何にも響かないのか、月山さんは、″シッシッ″と、犬でも追い払うような仕草をしてきた。

「行けるわけないじゃないですか?!だって、ヨシが今、目の前にいるんですよ? それとも何ですか?月山さん、ヨシを独り占めしたいんですか?二人きりになって何をする気ですか?抜け駆けも甚だしいですよ、ズルい、許せない、私だって……」

「何するって、親子の対話をするんだよ 」

「対話?本当に?いくら親子だからって……」


 ん?

 ……え?


「親子?」

 興奮すると、言葉の意味を理解するのに少し時間がかかることを、この時、身をもって知った。


 目の前にいる美しき獣と、まぁまぁイケてる中年が、



「……冗談、です、よね?」


  親子?

  ヨシが、とても不快そうな顔をして、私を見ているのが印象的だった。





























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