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三話 エネミー!?&チョーノーリョク!?

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「マジ・・・?」

気が付くとそこは、車が虫のように空を飛ぶ不思議な世界だった。



いや、いくら何でも異常すぎる。

昨日見た夢と全く同じだ。

なんで?

いや、そんな事考えてもどうせ分からない。



夢見。そうだ私がこうなった以上、夢見もこの夢に来るんじゃ?

ここは私たちが昨日死んだ場所。

なら夢見もここで『リスポーン』するはずだ。



私はしばらく待った。



全く知らない場所、ましてやこんな変な世界で、来るかも分からない人を一時間も待っていると気が狂いそうになるけど、他に行く先もない。



目の前の大きな建物にある大きな時計によると、私がこの夢にリスポーンしてから一時間半ほど経った。

二時間たったら、あの公園に行ってみよう。



そう思っていたころ、私は私は驚くべき瞬間を目にした。

私たちが昨日死んだ場所、そして私がリスポーンした場所に、突然、本当に突然、夢見が現れた。



「えぇ・・・?」



口からあまりにも間抜けな声が出た。

目の前の夢見はしばらく周りを見渡した後、私と目が合った。



「ザヤちゃん?」

「お、おう。」



私はこういう時、なんて言うのが良いのか全く分からない。

でも『おう』だけは違うなと、そう思った。



「コレどういう事?」



彼はそう言いながら私の方へ歩いてきた。



「いや、私が聞きたいんだけど。」



私たちはとりあえず、昨日と同じ、公園に行くことにした。

街並みは昨日とほとんど変わらない。

店の看板も同じだし、公園に行くまでの道も同じだ、

ただ道行く人々は多分同じじゃない。

公園に着くと、昨日と同じベンチに座った。



「はぁ。コレどーなってんのー?」

「終幕のアルベルトの頭脳をもってしても理解できない!」

「ねぇ、夢見。今日、何時くらいに寝たか覚えてる?」

「うーん。あんまり覚えてないなぁ。」

「えーつかえねー」

「許してちょ!」



彼はウインクしながらそういった。



「そういうザヤちゃんは何時くらいに寝たの?」

「10時くらいかな。」

「そーなんだ。俺もそうだけど結構寝るの早いね。」

「うん。うち、親居ないからお金ないんだよね。

「だから早めに寝て空腹を誤魔化してるんだよね。」



同級生に親が居ない、とかお金がない、とか言ったのは初めてだった。

言いすぎた、と思った。



「まじ?俺も親居ないんだよね。母親は行方不明で父さんは死んだ。っていうか殺されたらしい。」

「そう・・・」

「い、いや、なんかごめん。」

「ウチの方こそごめん。」

「でも俺がちっちゃい頃に二人とも居なくなったから、正直気にしてないけどね。」

「今は誰かと住んでんの?」

「婆ちゃんと住んでる。」

「そうなんだ。」



なんだか気まずい空気になった。

夢見も少し黙り込んでる。

私はなんとか次の話題を探そうと、辺りを見渡す。



ブランコ。

滑り台。

鉄棒。

木。

建物。

銃を持った人達。



・・・ん?

銃?

そう思った瞬間、



「撃ち方始めぇぇ!」

とういう叫喚と共に銃声が鳴った。



「ほわぁっちょぉぉ!!」

「なんだなんだなんだなんだぁぁ!」

「わかんねぇえ!逃げろぉぉ!」



私たちは本能的に体が動くまま、射線の通らない物陰まで全力で走った。



「はぁはぁ。なんだあいつらぁ!急に銃撃ってくるとか頭イカれてんじゃねぇの!?」

「姫~!大丈夫ですが?お怪我は??」

「ふざけてる場合じゃないって!」



そんな会話をしていると、



「警察だ!無駄な抵抗はよせ!『夢彷徨者』ども!貴様らは完全に包囲されている!!」

「何言ってるかわかんねぇんだよ!まず鉄砲下ろせやポリ公どもォ!」

「なんかよくわかんねえけどカッケェ!」



この時、死んでも大丈夫、なんて考えは無かった。

そんなことを考えている余裕は無かった。



「ねぇどうする!?このままじゃ絶対やばくない!?」

「ふっ!仕方ない!姫を守るため!この『終幕のアルベルト』奴らを一掃して来ましょう!」

「だからそんなこと言ってる場合じゃないって!!!」

「でもこのままここに居てもどうしようもないじゃないですか!」

「だからってここから出たら死ぬでしょーが!!」

「ザヤちゃんは出なくていい!」

「はぁ!?」

「俺がザヤちゃんを守る!」

「ちょっと何する気!?」



夢見はバッと立ち上がり、そして物陰から出た。



「バカ!!!なんで!?」

「両手を上げて跪けぇ!」



夢見は動じなかった。

いや、恐怖で動けなかった、と言った方が良い気がする。



「戻ってきてって!なんでそんなバカなことすんの!?」

「ざ、ザヤちゃんは初めて出来た友達なんだぁ!」

「なんだって?聞こえないぞ小僧!」

「しかも女の子なんだよぉ!こう言う時にかっこよく助ける夢なんか何億回もしてきたんだよ!でも全部夢で!妄想で!敵なんかいないし、守る友達もいなかった!ていうかそもそも友達なんていなかった!」

「うるさいうるさい!何言ってんの!早く戻って来てって!」

「いやだ!」

「だからなんで!?」

「夢見た景色が目の前に広がってるのに!怖いから何もしないなんてクソダサいやろがいッ!!」



そう言いながら夢見は警官目がけけて、思い切り走り出した。

警察官は発砲しなかった。

明らかに無防備な格好で敵軍に突っ込むバカを銃殺するほど無常では無いらしい。



「オラァァ!えー・・えーと、えーと! サンドエクスプローション!!」



そう言いながら公園の砂を拾い、警察官に投げつけた。

その瞬間、ドカーンという爆発音と共に一気に砂埃が上がった。



「えーーーー・・・」

「まぁぁじかぁ!!」



彼はそう叫びながら私の方に走って戻ってきた。



「ちょっとあんたあれ何!?どう言うこと!?」

「ほら!ほら見た事か!僕は『終幕のアルベルト』なんだ!今までバカにして来た奴らに見せてやりたいよ!」

「いや、ど、どういうことだよ・・・」

「そんなこと言ってないでとりあえず逃げようザヤちゃん!」



私たちはそこからかなり離れた場所で空飛ぶ車を盗み、そしてそこからできるだけ離れた。



「ここまで来たら大丈夫だろ。っていうか追ってくる気配は無かったし。」

「そうだね。」

「『そうだね』じゃないんだよ!なにあの爆発!なんだよ『サンドエクスプローション』って!」

「いや、正直な所俺もマジでわかんない。でもよくよく考えたらここ、『夢』だからなんでもできるんじゃない?」

「そ、そういうもんなの?っていうかもう一回やってみてよ。」



私たちは車から降り、人通りの少ない路地に入った。

そして夢見はそこらへんに落ちている空き缶を手に取り、投げながらこう言った。



「えーと、空き缶ダイナマイト!」



すると、その空き缶はボンッという音と共に小さく破裂した。



「いやまじ・・・」



「俺、やっぱり『こっち側の人間』だったのか~。いや、割とそうかな?って思ってたんだけど、やっぱりか~」

「ねーうざいんだけどー」

「え!?い、いやほら、ザヤちゃんも何かしらの能力あるんじゃない?」

「そんな事よりあいつら何なの!?この世界の警察はこんなかわいい美少女に鉄砲向けてくんのか!?終わってんな!」

「ほんとですよ!」



えへへ。



「じゃなーーい!はぁ。それにしても、なんで私が狙われたんだろう。」

「そういえばあの警察『夢彷徨者』って言ってませんでした?」

夢彷徨者。その言い方じゃまるで私たちがこの世界のお尋ね者みたいだ。

「いや、よく考えてみるとあの警察が私たちを狙う理由なんてない。この世界は私たちが勝手に見てる夢なんだから。全部脳内の出来事に過ぎない。」

「そうだろうけどそれにしては不思議な事が多すぎない?」

「じゃあこれが夢じゃないならなんだって言うの?前回の事を思い返してみなよ!夢から覚めると、ベッドの上だったでしょ!?」

「俺布団派だし。」

「私はベッドなの!」



私たちは盗んだ車に戻り二人とも無言で低い天井を眺めていた。



「ねぇ、明日もこの夢みるのかな?」



口からポロッとそんな言葉がこぼれ落ちた。



「だとしたら?」

「なんか、最高と最悪が混ざった感じの気持ちになる。」

「それってつまり普通って事でしょ?」



夢見は笑いながらそう言った。



「普通って感じじゃないんだよなぁ。でも今の言い方だとそうなるかぁ。」

「じゃあさ、現実世界はどうなの?普通って感じなの?」

「まぁね。私はこの世で一番不幸だーって思ってるけど、みんなそんなもんでしょ?それってつまり普通ってことじゃん?」

「つまり最高と最悪が混ざった感じってこと?」

「ううん。ずっと最悪。」

「なんだそれ。」



ふと思った。

私、人とこんなに脳みそ空っぽにして話したことがあっただろうか。

いや、無かった。

なんだろうこの感覚。

適当に話しているだけだ。

思ってる事とか、本心とか、そう言うものを言葉に出来ている訳じゃない。

でもなんか、『イイカンジ』だ。

例えるならキスみたいな感じだ。

別に自分の全てを相手に晒してる訳でもないし、相手の全部を理解している訳でもないけど何故か繋がれた感じになるし、一つになれた感じになる。

一つになんてなれる訳ないのに。

しかも、キスなんて唇と唇が接触しただけで、それ以上でもそれ以下でもない。



まぁキスしたことないんだけど。

っていうか自分でも何言ってるかワカンネ。



「そろそろ起きる?」

「そーだね。って言うか現実世界では何時くらいなんだろ。」

「この世界だと・・・」



私は車のナビに付いてある時計をみた。
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