5 / 9
第五章
意外
しおりを挟む
着いた先は環境省直轄の赤目の引き取り施設で、通称回収センターと呼ばれる所だ。広大な駐車場に、鉄筋コンクリート製の三階建ての建物、それに大きなプレハブ小屋が隣接されている。
建物の一階は赤目を引き取ってもらう窓口になり、こちらで赤目の種類や、状態などを査定してもらう。
二階は証明書などの書類を、発行する行政機関となっており、持ち込んだ赤目に関しての、駆除証明書を発行してもらい、後日それに基づいた請求を環境省に行い、政府の方から報酬を得る。
三階は職員施設で、直接的には関係はなく、隣接するプレハブ小屋は引き取った赤目を、保管しておく倉庫となっていた。
引き取った赤目は有用な資源や、貴重な研究材料として大学などの研究機関や、企業などに卸される。聞くところによると、希少な薬剤の原料や、レアメタルの代わりなどに使用されているらしい。
まあ、そんなに詳しい仕組みは分からないのだが、取り敢えずそれらのおかげで、猟人の報酬は割と高額である。
回収センターは割かし混んでいたので、順番待ちになった。
シゲさんは顔見知りの猟人達と、タバコを吹かしながら談笑し、絹江さんは自販機から購入した、缶ジュースを飲んでいた。
それにしても、今日は疲れたなぁ。大細鹿に会うまでは、楽勝だったのに、簡単にはいかないね。
ポーチから板チョコを取り出す。思いの外溶けていないことに、少し感動しながら、丁寧に銀紙を剥いて頬張った。
……チョコって、素晴らしいね。疲れている時も、そうでない時でも至福を与えてくれる。
絹江さんが話しかけてきた。
「狛彦君、ちょっといい?」
「ハイ、何でしょうか?」
「実はちょっと、お願いがあるの」
結構真剣な顔だな。ということは……。
「チョコ欲しかったですか?」
「違う!」
違うのか⁉ この世の中に、チョコを欲しがらない人がいるとは……。
「では、何でしょうか?」
「実は……ね」
絹江さんは話しづらそうに、急にモジモジとし始めた。
「えぇとね……呼び方を……変えてくれないかと……」
「………?」
絹江さんの意図することが、よく分からなかった。
「どういうことでしょうか?」
「だから……私のことは『絹江』以外で、呼んで欲しいの」
これはどういうことだろうか? 絹江さんを『絹江』以外で呼んでほしいとは?
瞬時に色々と考えたのだが、答えは出なかった。
なので、素直に聞いてみることにする。
「どうしてでしょうか?」
「何というか……『絹江』って、何か古臭い感じがしない? ちょっと変な感じで目立つし、だから、名前で呼ばれるのは、あまり好きじゃなくて、違う呼び方に変えて欲しいの」
確かに今風の名前ではないな。今時の女子高生としては、結構な悩みごとなのだろうか? そういえば初めて会った時に、微妙な表情をしたのはこの為か、それなら今まで我慢していたことだろうし、ご期待に沿えたいところだ。
しかし、何と呼べばいいのだろうか? 苗字の『蜂須賀』で呼ぶ手もあるが、その場合だと事務員の美咲さんと被ってしまい、区別をすることが難しくなる。シゲさんの様に『嬢ちゃん』と呼ぶ方法もあるが、同い年でこの呼び方は如何なものか。
瞬時に色々と考えてみたが、答えは出なかった。
もう一度、素直に聞いてみよう。
「……何とお呼びすれば、良いのでしょうか?」
「そこは色々と考えたけど、良いのが思いつかなくて、狛彦くん、何か良い名前を考えて欲しいの」
えッ⁉ それこっちが決めるの? 今まで我慢していたのだから、呼び方を変えるのは構わないけど、それをこちらに決めて欲しいと言われても……正直、面倒くさい。疲れていることも相まって、余計に面倒くさい。
何よりも、それが思い浮かばないから、素直に聞いてみたのに……。
絹江さんは期待に満ちた眼差しで、こっちを見つめている。
ちょっと視線が痛い。う~~ん、どうしよう?
「出来るだけ可愛らしい感じで、お願い」
あッ! ハードル上げやがった。
そう言われても……取り敢えず、可愛らしいというと、アイドルみたいな感じだよな?
考えに考えて、出した答えは……。
「『キューティー絹江』はどうでしょう?」
「何? その安直な感じは! それにどこかで聞いた覚えがあるし」
「名プロデューサー秋〇康さんの、過去のネタを潔くパクリました」
「パクリはダメ! それに『絹江』は入れないで!」
「でしたら『暫定、絹江さん』でお願いします!」
絹江さんにデコピンされた。
「痛い!」
「『絹江』変わってないじゃない! というか『暫定』って何よ⁉」
「世界ランキングみたいで、可愛らしいかと思って」
「そんなものが、可愛い訳ないでしょ!」
「それじゃあ『絹江・ネンダマギン・スー』で!」
絹江さんにまたデコピンされた。
「 ouch!」
「何よ、その変な名前!」
「NFL選手みたいで、可愛らしかと思って」
「あんなゴツイ奴らの、どこに可愛らしいがあるの⁉ 『絹江』は入ったままだし、さっきの方がまだマシよ!」
「なら『暫定、絹江』さんで、お願いします!」
またまた絹江さんにデコピンされた。
「Aua!」
「ま・じ・め、・に・か・ん・が・え・て!」
絹江さんは今にも噛みつきそうな勢いだ。
ただ、そうは言ったところで、思いつかないものは、思いつかない。
「ええと……じゃあ最後に……」
「なぁに?」
「ギブアップします!」
「何だと~~ッ⁉」
絹江さんが鬼のような形相で、襟首を締め上げてきた。
「ギブ……ギブです……ギブ……アップ……」
視界が暗くなっていくなか、必死に絹江さんの手にタップする。
その時、救世主が現れた。
「何やってんだ? お前たち……」
シゲさんが、不思議そうな顔をして立っていた。
「何でもないです」
先ほどとは打って変わって、絹江さんは天使のような笑顔で返した。
この人、二面性があるな。今の暴力的な部分が、本性だよね。
何だよ~~結構厄介な人なのか?
「順番が来たから行くぞ」
シゲさんは先に歩いて行った。
絹江さんは笑顔で答える。
「分かりました。直ぐ行きます」
絹江さんが、シゲさんを追いかけて歩いていく。だが、突然踵を返して、急に顔を近づけてきた。
「さっき私の悪いこと、考えていたよね?」
「いえ、そのようなことは……」
ドキッとして、絹江さんから顔を背けた。
「本当に?」
絹江さんが背けた顔を逃さないように、回り込んでくる。
「本当です! 天地神明に誓って、そのようなことは考えていません」
絹江さんは、イマイチ納得していない顔つきだ。
「ふ~~ん、まあ、いいわ。さっきの件、ちゃんと考えておいてね」
絹江さんはそう言うと、シゲさんの後を追いかけていった。
……どうしようかな? というか、どうすればいいの?
自問自答しながら、二人の後を追いかけていった。
事務所に帰ってきて、銃のメンテナンスと、報告業務を終わらせると、三階の喫煙所に向った。
無論未成年なのでタバコを吸う訳ではなく、絹江さんが先に着替えているので、時間を潰す為だ。
更衣室は一部屋しかなく、一応カーテンで区切られているのだが、若い女性と同じ部屋で着替えるのは、ちょっと気が引けてしまう。
だから、絹江さんとは時間をズラして、着替えるようにしていた。
喫煙所に着くと、いつもの様に小鳥遊所長と、シゲさんがタバコを吹かしながら談笑していた。
疲れていたこともあって、ぼんやりと外の街並みを眺める。
数分後に二階の方から、ドアの開閉する音が聞こえた。
下を眺めると、階段を下りていく女性の後ろ姿が見えた。
事務員の美咲さんは、この時間は既に上がっている筈だ。となると、件の女性は絹江さんであろう。
疲れているし、とっとと帰ろう。
小鳥遊所長と、シゲさんにお疲れの挨拶をして、下へと向かった。
更衣室のドアを開けて、中へと入る。
そこには、予想外の光景が広がっていた。
ブルーのスポーツブラと、ショーツ姿の絹江さんが立っていたのだ。
透き通るような白い肌と、美しくくびれた腰回り、小さくキュッとしたお尻に、細く長い綺麗な足が際立っていた。因みに、胸は少々小さいかな。
思わず、素っ頓狂な声を上げる。
「へッ……何で?」
「……………………」
絹江さんと無言で見つめ合い、一拍ほど置いて、絹江さんは悲鳴を上げた。
「きゃぁぁーーあqwせdrft………」
そして、右拳が飛んできた。
「和風キノコパスタを、一つ下さい」
絹江さんがメニュー表を指しながら、パスタを追加注文していた。
その前にはハンバーグステーキと、ドリアの空き皿が広がっている。
痛む左頬を擦りながら尋ねた。
「……よく食べますね」
絹江さんがスマホの画面を覗きながら、すました顔で呟いた。
「へぇ~~覗きって、軽犯罪法違反何だ……知らなかったなぁ」
「うッ………」
左頬が更に痛んできた。
ここは雑居ビルの三階に入っているファミレス。
現在の状況を説明すると。
忘れ物を取りに来た美咲さんが、絹江さんと世間話をした後で帰る。
それを見た俺が、絹江さんと勘違いする。
更衣室を開けて、下着姿の絹江さんを発見。
絹江さんによる鉄拳制裁が発動。
食事を奢ることで示談が成立。
ファミレスで食事。← 今ここ。
食事をしながらも絹江さんは、チクリチクリと攻めてくる。
「普通ノックもせずに、ドアを開けるかなぁ?」
ノックをせずに、ドアを開けた非は認めますけど、カーテンを閉めていなかった絹江さんにも、責任はあると思いますけどね。
一切口には出しませんけど、取り敢えず、思うだけは思っておきます。
ふと、メニューに載っている、デザートが目についた。
最近やたらとCMでよく流れている、イチゴのサンデーだ。
鮮やかな赤と白の断面のアイスに、フワリとした雲のようなソフトクリームがかかっていて、その上に瑞々しいイチゴの群れが咲き乱れ、煌びやかなシロップが掛かっている。
見た目もすごく美味しそうだし、なにより『サンデー』って響きが、これまた良いよなぁ。CMを見た時から気になっていたし、頼んじゃおっかな~~?
タイミング良く食器を下げに、女性の店員さんがやって来た。
「あ、すみません。この『極上イチゴのフロマージュサンデー』を一つお願いします」
絹江さんが便乗してきた。
「私にもそれ一つ」
「ええッ⁉ まだ入るの?」
絹江さんがニッコリ笑った。
「成長期なので」
成長期って自分で言うなら、そうなんだろうけど、少々存在感の薄い胸も、これから成長していくのだろうか?
ていうか、人の奢りだと思って~~!
「……それ本当に、全部食べられますよね? 嫌がらせに、無理やりに無茶苦茶な、注文していないですよね?」
絹江さんが、半ギレ気味に答えた。
「そんなことない! これぐらい余裕よ! 嫌がらせだなんて、失礼しちゃうわね!」
「……本当に?」
絹江さんに疑惑の眼差しを向けると、何故か、女性の店員さんが代わりに答えた。
「こちらのお客様、一見華奢な体つきでございますが、内臓がすこぶる健康で丈夫ときており、成長期なのも相まって、無尽蔵の胃袋となっております。お客様の懸念もご理解出来ますが、特に問題なく完食されるでしょう」
「急に何を言っているんですか⁉ というか何でそんなこと分かるんですか? それにイマイチ褒めているのか、けなしているのか分かんないですけど?」
これまた何故か、絹江さんが誇らしげに答えた。
「ホラね!」
「『ホラ』の意味が分かんないですよ! 『ホラ』の意味が!」
「因みに、こちら『極上イチゴのフロマージュサンデー』につきまして、メニュー表では小ぶりに見えますが、お客様からよく逆掲載詐欺と言われておりまして、実際には二人前程度の量があると、ご理解下さいませ」
「それは萌えますね! 全然大丈夫なので、お願いします!」
「何で萌えるの⁉」
「それでしたら『マシマシ』で注文していただけましたら、更に1.5倍増しに、萌えることも可能でございます」
「えッ⁉ ラーメン屋さんなの? っていうか、更に1.5倍に萌えるって、何ですか?」
「その挑戦受けるわ! 1.5倍萌えで、お願いします」
「挑戦って何? そもそも萌えるって、一般的なの?」
「かしこまりました。狛彦の方は、いかがいたしますか?」
急に振られたおかげで、ドギマギした。
「ええ⁉ えぇっと……つ……通常サイズで、お願いします」
「かしこまりました」
女性の店員さんは、キビキビとした動きで注文を受け付け、空いたお皿を片付けていった。
妙な感じで、思わず流されてしまったけど……何だろう? 何かもの凄い敗北感があるんですけど……。
んん……何だ?
何やら外の方が騒がしく、サイレンの音とかが鳴っている気がする。
何かあったのかな? ちょっと気になる。
だが、その疑問は、直ぐに吹き飛んでしまった。
絹江さんが、和風キノコパスタを食べ終わると同時に、お目当てのデザート運ばれてきたからだ。
イチゴのソフトサンデーは、噂に違わぬ味であった。
イチゴはその名が示す通り極上に甘く、その中に程よい酸味があるからさっぱりともしていて、フロマージュは滑らかで、舌触りの良いチーズクリームになっており、かかっているシロップがアクセントになっていて、良い仕事をしている。土台部分のアイスクリームは非常に濃厚で、これが更に美味しさを、引き出している気がする。
これ……マジで滅茶苦茶、美味しいのですけど!
絹江さんには殴られたが、ちょっと幸せな気分であった。
「……何かしら?」
「……?」
絹江さんに促されて見ると、窓際に人が集まっていた。
「……何でしょうね」
少し気になったが、それ以上に気になることがあった。
絹江さんの目の前にある『マシマシの極上イチゴのフロマージュサンデー』が、既に三分の二はなくなっていた。
あの細い体のどこに、こんなに入るのだろうか? 本当に成長期だからなのか? というか成長期って、そんな万能な言葉だったか?
そんなことを考えていると、聞きなれた言葉が、耳に入ってきた。
「……赤目?」
絹江さんも頷く。
「私もそう聞こえた」
流石にそれは気になったので、席を立ち、声のした窓際に向かった。絹江さんも、後ろからついて来る。
何事かと思って窓から外を眺めると、数台のパトカーと、野次馬と思しき人たちがいた。
警察官たちが、野次馬を押さえる先の方には、見慣れた奴がいた。
赤目だ。しかも、この前出くわした強敵、黒狼が居る。
それを取り囲むように、専用の防護服と、ヘルメットに身を包み、腰から象徴的な手斧をぶら下げ、自動小銃と、ライオットシールドを構えた、三人の武装警察が対峙していた。
武装警察の隊員たちは、遠目でも分かるほどの屈強なガタイで、特に真ん中にいる隊員が、やけに体格が大きくて、ちょっと目立っていた。
マジか……全然気づかなかった。これも極上イチゴのフロマージュサンデーによる、魔性のなせる業なのか……。
黒狼は周りを、激しく威嚇していた。
遠目ながらも、張り詰めた空気を感じる。
黒狼と、武装警察は睨み合ったまま動かない。
その後方では一般の警察官が、懸命に野次馬を抑えようとして、頑張っていた。だが、普段滅多に見ることのない、赤目に興奮しているのか、これがなかなか、下がっていかない。
武装警察は、一向に発砲しなかった。
本来であれば三人で取り囲んでいる現状、自動小銃による十字砲火で、有利にことを進めることが出来る。だが、周りに野次馬がいるおかげで、跳弾や流れ弾を恐れて、発砲出来ないのであろう。
そんな中、黒狼が気をそらして、野次馬の方を向いた。
野次馬の方から、何か物が投げられたみたいだ。
次の瞬間、真ん中の大柄な男が、手斧で切り込んでいった。
黒狼は俊敏にそれを避けると、逆に襲い掛かった。
大柄な男がライオットシールドで、何とかそれを防ぐ。
すると、その隙に他の二人も、続けて切り込んでいった。
激しく抵抗する黒狼に、少々持て余しながらも、武装警察が必死に、肉参戦で応戦する。
流石の黒狼も多勢に無勢で、段々と弱まり、最後には力尽きた。
その光景を目にして、思わず絹江さんと目を見合わせた。
仕事柄、赤目の怖さは知っているし、黒狼の強さも、身をもって知っている。この前黒狼に抑え込まれた時なんか、簡単に動けなくなるくらい、もの凄く強い力であった。
それを肉弾戦で倒すなんて、到底考えきれない。
武装警察が持つ手斧が、街中での戦闘の際に、市民への被害を考慮して、実戦で使用するとは聞いていたが、眉唾物だと思っていた。
そんな自分たちをしり目に、武装警察は悠々と引き上げて行く。
それにしても、最近多い気がするな。絹江さんに鉄拳を貰ったことも含めて、何か嫌な感じがした。
建物の一階は赤目を引き取ってもらう窓口になり、こちらで赤目の種類や、状態などを査定してもらう。
二階は証明書などの書類を、発行する行政機関となっており、持ち込んだ赤目に関しての、駆除証明書を発行してもらい、後日それに基づいた請求を環境省に行い、政府の方から報酬を得る。
三階は職員施設で、直接的には関係はなく、隣接するプレハブ小屋は引き取った赤目を、保管しておく倉庫となっていた。
引き取った赤目は有用な資源や、貴重な研究材料として大学などの研究機関や、企業などに卸される。聞くところによると、希少な薬剤の原料や、レアメタルの代わりなどに使用されているらしい。
まあ、そんなに詳しい仕組みは分からないのだが、取り敢えずそれらのおかげで、猟人の報酬は割と高額である。
回収センターは割かし混んでいたので、順番待ちになった。
シゲさんは顔見知りの猟人達と、タバコを吹かしながら談笑し、絹江さんは自販機から購入した、缶ジュースを飲んでいた。
それにしても、今日は疲れたなぁ。大細鹿に会うまでは、楽勝だったのに、簡単にはいかないね。
ポーチから板チョコを取り出す。思いの外溶けていないことに、少し感動しながら、丁寧に銀紙を剥いて頬張った。
……チョコって、素晴らしいね。疲れている時も、そうでない時でも至福を与えてくれる。
絹江さんが話しかけてきた。
「狛彦君、ちょっといい?」
「ハイ、何でしょうか?」
「実はちょっと、お願いがあるの」
結構真剣な顔だな。ということは……。
「チョコ欲しかったですか?」
「違う!」
違うのか⁉ この世の中に、チョコを欲しがらない人がいるとは……。
「では、何でしょうか?」
「実は……ね」
絹江さんは話しづらそうに、急にモジモジとし始めた。
「えぇとね……呼び方を……変えてくれないかと……」
「………?」
絹江さんの意図することが、よく分からなかった。
「どういうことでしょうか?」
「だから……私のことは『絹江』以外で、呼んで欲しいの」
これはどういうことだろうか? 絹江さんを『絹江』以外で呼んでほしいとは?
瞬時に色々と考えたのだが、答えは出なかった。
なので、素直に聞いてみることにする。
「どうしてでしょうか?」
「何というか……『絹江』って、何か古臭い感じがしない? ちょっと変な感じで目立つし、だから、名前で呼ばれるのは、あまり好きじゃなくて、違う呼び方に変えて欲しいの」
確かに今風の名前ではないな。今時の女子高生としては、結構な悩みごとなのだろうか? そういえば初めて会った時に、微妙な表情をしたのはこの為か、それなら今まで我慢していたことだろうし、ご期待に沿えたいところだ。
しかし、何と呼べばいいのだろうか? 苗字の『蜂須賀』で呼ぶ手もあるが、その場合だと事務員の美咲さんと被ってしまい、区別をすることが難しくなる。シゲさんの様に『嬢ちゃん』と呼ぶ方法もあるが、同い年でこの呼び方は如何なものか。
瞬時に色々と考えてみたが、答えは出なかった。
もう一度、素直に聞いてみよう。
「……何とお呼びすれば、良いのでしょうか?」
「そこは色々と考えたけど、良いのが思いつかなくて、狛彦くん、何か良い名前を考えて欲しいの」
えッ⁉ それこっちが決めるの? 今まで我慢していたのだから、呼び方を変えるのは構わないけど、それをこちらに決めて欲しいと言われても……正直、面倒くさい。疲れていることも相まって、余計に面倒くさい。
何よりも、それが思い浮かばないから、素直に聞いてみたのに……。
絹江さんは期待に満ちた眼差しで、こっちを見つめている。
ちょっと視線が痛い。う~~ん、どうしよう?
「出来るだけ可愛らしい感じで、お願い」
あッ! ハードル上げやがった。
そう言われても……取り敢えず、可愛らしいというと、アイドルみたいな感じだよな?
考えに考えて、出した答えは……。
「『キューティー絹江』はどうでしょう?」
「何? その安直な感じは! それにどこかで聞いた覚えがあるし」
「名プロデューサー秋〇康さんの、過去のネタを潔くパクリました」
「パクリはダメ! それに『絹江』は入れないで!」
「でしたら『暫定、絹江さん』でお願いします!」
絹江さんにデコピンされた。
「痛い!」
「『絹江』変わってないじゃない! というか『暫定』って何よ⁉」
「世界ランキングみたいで、可愛らしいかと思って」
「そんなものが、可愛い訳ないでしょ!」
「それじゃあ『絹江・ネンダマギン・スー』で!」
絹江さんにまたデコピンされた。
「 ouch!」
「何よ、その変な名前!」
「NFL選手みたいで、可愛らしかと思って」
「あんなゴツイ奴らの、どこに可愛らしいがあるの⁉ 『絹江』は入ったままだし、さっきの方がまだマシよ!」
「なら『暫定、絹江』さんで、お願いします!」
またまた絹江さんにデコピンされた。
「Aua!」
「ま・じ・め、・に・か・ん・が・え・て!」
絹江さんは今にも噛みつきそうな勢いだ。
ただ、そうは言ったところで、思いつかないものは、思いつかない。
「ええと……じゃあ最後に……」
「なぁに?」
「ギブアップします!」
「何だと~~ッ⁉」
絹江さんが鬼のような形相で、襟首を締め上げてきた。
「ギブ……ギブです……ギブ……アップ……」
視界が暗くなっていくなか、必死に絹江さんの手にタップする。
その時、救世主が現れた。
「何やってんだ? お前たち……」
シゲさんが、不思議そうな顔をして立っていた。
「何でもないです」
先ほどとは打って変わって、絹江さんは天使のような笑顔で返した。
この人、二面性があるな。今の暴力的な部分が、本性だよね。
何だよ~~結構厄介な人なのか?
「順番が来たから行くぞ」
シゲさんは先に歩いて行った。
絹江さんは笑顔で答える。
「分かりました。直ぐ行きます」
絹江さんが、シゲさんを追いかけて歩いていく。だが、突然踵を返して、急に顔を近づけてきた。
「さっき私の悪いこと、考えていたよね?」
「いえ、そのようなことは……」
ドキッとして、絹江さんから顔を背けた。
「本当に?」
絹江さんが背けた顔を逃さないように、回り込んでくる。
「本当です! 天地神明に誓って、そのようなことは考えていません」
絹江さんは、イマイチ納得していない顔つきだ。
「ふ~~ん、まあ、いいわ。さっきの件、ちゃんと考えておいてね」
絹江さんはそう言うと、シゲさんの後を追いかけていった。
……どうしようかな? というか、どうすればいいの?
自問自答しながら、二人の後を追いかけていった。
事務所に帰ってきて、銃のメンテナンスと、報告業務を終わらせると、三階の喫煙所に向った。
無論未成年なのでタバコを吸う訳ではなく、絹江さんが先に着替えているので、時間を潰す為だ。
更衣室は一部屋しかなく、一応カーテンで区切られているのだが、若い女性と同じ部屋で着替えるのは、ちょっと気が引けてしまう。
だから、絹江さんとは時間をズラして、着替えるようにしていた。
喫煙所に着くと、いつもの様に小鳥遊所長と、シゲさんがタバコを吹かしながら談笑していた。
疲れていたこともあって、ぼんやりと外の街並みを眺める。
数分後に二階の方から、ドアの開閉する音が聞こえた。
下を眺めると、階段を下りていく女性の後ろ姿が見えた。
事務員の美咲さんは、この時間は既に上がっている筈だ。となると、件の女性は絹江さんであろう。
疲れているし、とっとと帰ろう。
小鳥遊所長と、シゲさんにお疲れの挨拶をして、下へと向かった。
更衣室のドアを開けて、中へと入る。
そこには、予想外の光景が広がっていた。
ブルーのスポーツブラと、ショーツ姿の絹江さんが立っていたのだ。
透き通るような白い肌と、美しくくびれた腰回り、小さくキュッとしたお尻に、細く長い綺麗な足が際立っていた。因みに、胸は少々小さいかな。
思わず、素っ頓狂な声を上げる。
「へッ……何で?」
「……………………」
絹江さんと無言で見つめ合い、一拍ほど置いて、絹江さんは悲鳴を上げた。
「きゃぁぁーーあqwせdrft………」
そして、右拳が飛んできた。
「和風キノコパスタを、一つ下さい」
絹江さんがメニュー表を指しながら、パスタを追加注文していた。
その前にはハンバーグステーキと、ドリアの空き皿が広がっている。
痛む左頬を擦りながら尋ねた。
「……よく食べますね」
絹江さんがスマホの画面を覗きながら、すました顔で呟いた。
「へぇ~~覗きって、軽犯罪法違反何だ……知らなかったなぁ」
「うッ………」
左頬が更に痛んできた。
ここは雑居ビルの三階に入っているファミレス。
現在の状況を説明すると。
忘れ物を取りに来た美咲さんが、絹江さんと世間話をした後で帰る。
それを見た俺が、絹江さんと勘違いする。
更衣室を開けて、下着姿の絹江さんを発見。
絹江さんによる鉄拳制裁が発動。
食事を奢ることで示談が成立。
ファミレスで食事。← 今ここ。
食事をしながらも絹江さんは、チクリチクリと攻めてくる。
「普通ノックもせずに、ドアを開けるかなぁ?」
ノックをせずに、ドアを開けた非は認めますけど、カーテンを閉めていなかった絹江さんにも、責任はあると思いますけどね。
一切口には出しませんけど、取り敢えず、思うだけは思っておきます。
ふと、メニューに載っている、デザートが目についた。
最近やたらとCMでよく流れている、イチゴのサンデーだ。
鮮やかな赤と白の断面のアイスに、フワリとした雲のようなソフトクリームがかかっていて、その上に瑞々しいイチゴの群れが咲き乱れ、煌びやかなシロップが掛かっている。
見た目もすごく美味しそうだし、なにより『サンデー』って響きが、これまた良いよなぁ。CMを見た時から気になっていたし、頼んじゃおっかな~~?
タイミング良く食器を下げに、女性の店員さんがやって来た。
「あ、すみません。この『極上イチゴのフロマージュサンデー』を一つお願いします」
絹江さんが便乗してきた。
「私にもそれ一つ」
「ええッ⁉ まだ入るの?」
絹江さんがニッコリ笑った。
「成長期なので」
成長期って自分で言うなら、そうなんだろうけど、少々存在感の薄い胸も、これから成長していくのだろうか?
ていうか、人の奢りだと思って~~!
「……それ本当に、全部食べられますよね? 嫌がらせに、無理やりに無茶苦茶な、注文していないですよね?」
絹江さんが、半ギレ気味に答えた。
「そんなことない! これぐらい余裕よ! 嫌がらせだなんて、失礼しちゃうわね!」
「……本当に?」
絹江さんに疑惑の眼差しを向けると、何故か、女性の店員さんが代わりに答えた。
「こちらのお客様、一見華奢な体つきでございますが、内臓がすこぶる健康で丈夫ときており、成長期なのも相まって、無尽蔵の胃袋となっております。お客様の懸念もご理解出来ますが、特に問題なく完食されるでしょう」
「急に何を言っているんですか⁉ というか何でそんなこと分かるんですか? それにイマイチ褒めているのか、けなしているのか分かんないですけど?」
これまた何故か、絹江さんが誇らしげに答えた。
「ホラね!」
「『ホラ』の意味が分かんないですよ! 『ホラ』の意味が!」
「因みに、こちら『極上イチゴのフロマージュサンデー』につきまして、メニュー表では小ぶりに見えますが、お客様からよく逆掲載詐欺と言われておりまして、実際には二人前程度の量があると、ご理解下さいませ」
「それは萌えますね! 全然大丈夫なので、お願いします!」
「何で萌えるの⁉」
「それでしたら『マシマシ』で注文していただけましたら、更に1.5倍増しに、萌えることも可能でございます」
「えッ⁉ ラーメン屋さんなの? っていうか、更に1.5倍に萌えるって、何ですか?」
「その挑戦受けるわ! 1.5倍萌えで、お願いします」
「挑戦って何? そもそも萌えるって、一般的なの?」
「かしこまりました。狛彦の方は、いかがいたしますか?」
急に振られたおかげで、ドギマギした。
「ええ⁉ えぇっと……つ……通常サイズで、お願いします」
「かしこまりました」
女性の店員さんは、キビキビとした動きで注文を受け付け、空いたお皿を片付けていった。
妙な感じで、思わず流されてしまったけど……何だろう? 何かもの凄い敗北感があるんですけど……。
んん……何だ?
何やら外の方が騒がしく、サイレンの音とかが鳴っている気がする。
何かあったのかな? ちょっと気になる。
だが、その疑問は、直ぐに吹き飛んでしまった。
絹江さんが、和風キノコパスタを食べ終わると同時に、お目当てのデザート運ばれてきたからだ。
イチゴのソフトサンデーは、噂に違わぬ味であった。
イチゴはその名が示す通り極上に甘く、その中に程よい酸味があるからさっぱりともしていて、フロマージュは滑らかで、舌触りの良いチーズクリームになっており、かかっているシロップがアクセントになっていて、良い仕事をしている。土台部分のアイスクリームは非常に濃厚で、これが更に美味しさを、引き出している気がする。
これ……マジで滅茶苦茶、美味しいのですけど!
絹江さんには殴られたが、ちょっと幸せな気分であった。
「……何かしら?」
「……?」
絹江さんに促されて見ると、窓際に人が集まっていた。
「……何でしょうね」
少し気になったが、それ以上に気になることがあった。
絹江さんの目の前にある『マシマシの極上イチゴのフロマージュサンデー』が、既に三分の二はなくなっていた。
あの細い体のどこに、こんなに入るのだろうか? 本当に成長期だからなのか? というか成長期って、そんな万能な言葉だったか?
そんなことを考えていると、聞きなれた言葉が、耳に入ってきた。
「……赤目?」
絹江さんも頷く。
「私もそう聞こえた」
流石にそれは気になったので、席を立ち、声のした窓際に向かった。絹江さんも、後ろからついて来る。
何事かと思って窓から外を眺めると、数台のパトカーと、野次馬と思しき人たちがいた。
警察官たちが、野次馬を押さえる先の方には、見慣れた奴がいた。
赤目だ。しかも、この前出くわした強敵、黒狼が居る。
それを取り囲むように、専用の防護服と、ヘルメットに身を包み、腰から象徴的な手斧をぶら下げ、自動小銃と、ライオットシールドを構えた、三人の武装警察が対峙していた。
武装警察の隊員たちは、遠目でも分かるほどの屈強なガタイで、特に真ん中にいる隊員が、やけに体格が大きくて、ちょっと目立っていた。
マジか……全然気づかなかった。これも極上イチゴのフロマージュサンデーによる、魔性のなせる業なのか……。
黒狼は周りを、激しく威嚇していた。
遠目ながらも、張り詰めた空気を感じる。
黒狼と、武装警察は睨み合ったまま動かない。
その後方では一般の警察官が、懸命に野次馬を抑えようとして、頑張っていた。だが、普段滅多に見ることのない、赤目に興奮しているのか、これがなかなか、下がっていかない。
武装警察は、一向に発砲しなかった。
本来であれば三人で取り囲んでいる現状、自動小銃による十字砲火で、有利にことを進めることが出来る。だが、周りに野次馬がいるおかげで、跳弾や流れ弾を恐れて、発砲出来ないのであろう。
そんな中、黒狼が気をそらして、野次馬の方を向いた。
野次馬の方から、何か物が投げられたみたいだ。
次の瞬間、真ん中の大柄な男が、手斧で切り込んでいった。
黒狼は俊敏にそれを避けると、逆に襲い掛かった。
大柄な男がライオットシールドで、何とかそれを防ぐ。
すると、その隙に他の二人も、続けて切り込んでいった。
激しく抵抗する黒狼に、少々持て余しながらも、武装警察が必死に、肉参戦で応戦する。
流石の黒狼も多勢に無勢で、段々と弱まり、最後には力尽きた。
その光景を目にして、思わず絹江さんと目を見合わせた。
仕事柄、赤目の怖さは知っているし、黒狼の強さも、身をもって知っている。この前黒狼に抑え込まれた時なんか、簡単に動けなくなるくらい、もの凄く強い力であった。
それを肉弾戦で倒すなんて、到底考えきれない。
武装警察が持つ手斧が、街中での戦闘の際に、市民への被害を考慮して、実戦で使用するとは聞いていたが、眉唾物だと思っていた。
そんな自分たちをしり目に、武装警察は悠々と引き上げて行く。
それにしても、最近多い気がするな。絹江さんに鉄拳を貰ったことも含めて、何か嫌な感じがした。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
最期の晩餐
ジャック
SF
死刑囚が望んだのはハンバーガーと珈琲。
死刑囚が、最期に望むメニューを看守に語る話。
この国は、凄まじいディストピアで、ゴミのポイ捨てなどという軽微な犯罪でも処刑されてしまう。
看守は、死刑囚を哀れに思いつつも、助ける方法を持たなかった。
死刑囚は、看守に向かって一方的に生い立ち、何故あえて罪を犯したのかをベラベラと語る。
彼女が最期に望んだのはありふれたハンバーガーと珈琲だった。
機械化童話
藤堂Máquina
SF
今の時代、きっと魔法を使えるのは作家だけだ。
彼らの作り出す世界は現実離れしたものだがそこには夢と希望があった。
残念ながら私が使える魔法というのはそう優れたものではない。
だから過去の遺物を少し先の未来の預言書として表すことにしよう。
残酷な機械による改変として。
SEVEN TRIGGER
匿名BB
SF
20xx年、科学のほかに魔術も発展した現代世界、伝説の特殊部隊「SEVEN TRIGGER」通称「S.T」は、かつて何度も世界を救ったとされる世界最強の特殊部隊だ。
隊員はそれぞれ1つの銃器「ハンドガン」「マシンガン」「ショットガン」「アサルトライフル」「スナイパーライフル」「ランチャー」「リボルバー」を極めたスペシャリストによって構成された部隊である。
その中で「ハンドガン」を極め、この部隊の隊長を務めていた「フォルテ・S・エルフィー」は、ある事件をきっかけに日本のとある港町に住んでいた。
長年の戦場での生活から離れ、珈琲カフェを営みながら静かに暮らしていたフォルテだったが、「セイナ・A・アシュライズ」との出会いをきっかけに、再び戦いの世界に身を投じていくことになる。
マイペースなフォルテ、生真面目すぎるセイナ、性格の合わない2人はケンカしながらも、互いに背中を預けて悪に立ち向かう。現代SFアクション&ラブコメディー
ゴースト
ニタマゴ
SF
ある人は言った「人類に共通の敵ができた時、人類今までにない奇跡を作り上げるでしょう」
そして、それは事実となった。
2027ユーラシア大陸、シベリア北部、後にゴーストと呼ばれるようになった化け物が襲ってきた。
そこから人類が下した決断、人類史上最大で最悪の戦争『ゴーストWar』幕を開けた。
ヒューマン動物園
夏野かろ
SF
近未来のこと。人類は戦争を繰り返した末に滅亡寸前となった。その時、宇宙からきたフェーレという名の種族が人類を見つけ、絶滅をさけるために保護することを決めた。
それからしばらく後。人類は専用施設であるヒューマン動物園の中で大々的に飼育され、いろいろありつつも平和な日々を送っていた。
この物語は、そこを訪れた宇宙人であるモサーベ氏が見聞きしたことをまとめたものである。
追伸:感想よろしくです。
Cassandra
ライト@あご割れガンマン
SF
宇宙歴に入り、
人類の化学、生存圏は大幅に伸びた。
人々は初めに大元の調査チームを作成。
宇宙へと派遣する。
それから数年、
調査隊として初期に派遣された者が、
広い宇宙に散らばり調査を開始する。
ーーーそれから約数100年の時が経ち。
起きていたのは、
それぞれの調査チームの勢力争いだった。
はじめは、穏健派と過激派の口論だけだったのだが。
それに誘発されたかのように、
各チームの不満が爆発し組織を離反。
そこから数ヶ月後の
過激派・穏健派の分離もあり
ここで、
調査チームは事実上解散となる。
その後、
それぞれの惑星やコロニーにて
独自の組織の立ち上げ。
国家を作成する所もあったそうだ。
同盟を組み、
調査に勤しんだり。
研究データの取引、強奪などを行い。
各勢力は、成長していった...。
ーーさらに時は経ち。
ナチュラル・フォレスト・プラネット
(N・F・P)-通称NF-
俺達は、広大な森と
水に囲まれたこの惑星で
調査行い、本部に帰り飯を食う、
そんな、平和な日常を過ごしていた。
そんな平和な日常は、
突如として終りを迎える。
『それら』は、
陽の光を浴び葡萄色の光沢を放ちながら
俺達の前に現れた。
俺達の世界は、
何の前触れも無く変化した。
「この世で変わらないのは、変わるということだけだ。」
と、はるか昔にどっかの作家が言ってたらしい。
確かに変わらないものは無いのかも知れない。
それでもって、変化は常に訪れる。
「生き残ろう。」
俺達は、今日もソラを駆ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる