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最後の時まで地の底ではなく天へと行く事ができると思ってくれた優しき呪術師殿に幸あれ(2)
しおりを挟むついていった先は裏通りに面した店だった。
慣れた様子で中に入り、部屋の空きを聞く呪術師に戸惑いは無く、こういったことが良くあるのだろうか? という疑問が浮かんだ。
疑問を持ちながらも、私はそのこと自体が奇妙だったとも思っている。
生前、死後のことを考えたことはある。
騎士として陛下の盾となり死ぬのだと漠然と思っていた。
ありふれた予測だった。
だが、あの時、私は未練など一切無く、死ぬのだと、こうやって亡霊となるなど想定もしていなかった。
今の自分は生前の私にとってはどこまでも外れた存在となってしまっているのだなと思えば自嘲の笑みが出てくるのも仕方あるまい。
更に言えば、亡霊となり驚いたのだが、亡霊とはこうも生前と変わらず思考し行動出来るということだった。
特定の存在以外には認知されないこと。
胸に空いた穴から流れ出る血のこと。
その血がどこを汚すこともなく、消えていくこと。
そういった事柄が私が死んだのだと認知出来る全てだった。
生前レイスやアンデットと言った魔物を狩ったことがあったが、ああいった輩は高い知能を有しているようには見えなかった。
ならば私は……いや亡霊とは一体どんな存在なのだろうか?
考えすぎると頭が痛くなってきそうだ。……いや、この体は痛みなど感じないのだろうが。
推論を立て考察し結論を出すのは学者の仕事であり、騎士であった私には荷が重いのだが。
自身の曖昧さと不安定さを不安に思いながらも、ついていくと個室に案内された。
呪術師に引かれた椅子に座らされると言う生前では有り得ない行動に驚きながらも座ると「あんたはものに触れられないだろう?」と笑われてしまった。
相当驚いた顔をしていたらしい。
言われてみれば今の私には視覚と聴覚以外の五感が働いていない。
流れる血の匂いが分からず物に触れることが出来ず、何かを食すことも出来ない。
今椅子に“座っている”のは生前に椅子とは座るものなのだと知っているからなのだろう。
先入観さえ捨てれば壁を抜けることも出来るはずだ。
その前に地面に立っていることも出来なくなるだろうか?
奇妙に思いながらも一応納得したのが通じたのだろう。
呪術師は向かいの椅子に座り口を開いた。
「さて、納得した所で話をしようかね。……あんたをここに連れてきたのはここなら邪魔が入ることなく話ができるからさね。どうしてかと言うと、あんたのように形がはっきり残る程の心残りがある亡霊は、負の感情に飲み込まれると面倒になるからさね」
「面倒?」
あまりな物言いに眉を顰めると呪術師に笑い飛ばされる。
「この地に対する執着が強すぎる亡霊は天へと昇ることが出来ない。それにあんたほぼ生前と変わらない知能があるんじゃないかい?」
「ある、と自分では思っているな」
「だろうねぇ。そこまではっきりと生前を忘れず、意識と輪郭が残る程の心残りがあるんだろ? それでいて【視た】所強い力を持っているときた。これで負の感情に飲み込まれて魔物になった日には大惨事さね」
「亡霊は魔物になるものなのか?」
「全部ではないけどねぇ。死んだ時、何に囚われていたかもにもよるさね。他者を最期まで心配した亡霊の場合、守護に回る事もある。あんたも最初はそうかと思ったんだけどねぇ。墓地に居る奴は大抵、そこに来る誰かを心配し、その護りつく事が多いもんさ。だってのに、あんたは突然負の感情に支配されそうになった。御蔭で慌てて接触する羽目になったんだけどねぇ」
アズィンケインを心配し探した結果が墓地だっただけなのだが。
これは謝罪しなければいけないのだろうか?
悪いことはしてないはずなのだが、手間を取らせたことに少しばかり罪悪感が沸く。
「殆どは残滓だからほっといても問題ないさね。けど、そうはいかない奴等は話し合い、又は力尽くで上へ上げてやるのがあたし達【視える】存在の仕事なのさ」
「それで話をするためにここに連れて来たということか」
「そうさね。それで? あんたは話すことかお望みかい? それとも力尽くで上に行くかい?」
ほおづえをつき不敵に笑う呪術師に私は苦笑してしまった。
ここまで自信ありげに言い切られてしまえば「力尽くなどできるのか?」などと聞くことも出来ない。
はったりだとしても、出来るかもしれないと考えてしまった私の負けのようだ。
「話す程度で浄化されるとは思わないが」
「そりゃそうさ。あたしは話を聞いてあんたの心残りを解消する手伝いをする。ただし犯罪はごめんだけどねぇ」
「……そうだな」
これが呪術師という存在なのだろうか?
それともこの女性がそういう存在なのだろうか?
今まであった事もない類の女人だが、嫌悪を抱くどころか、胸がすくような爽快感がある。
彼女にならば話してもよい……そう感じた。
「さぁて、覚悟を決めたなら話しな。ああ、名前は要らないよ。これ以上楔を増やすわけにはいかないからねぇ」
「了解した。……とは言っても何から話せばよいものか。私が墓地に居たのは、確かにあの子が心配だったからだが」
「ふーん。あんたの子供にしてはちょっとでかい気がしたんだけどねぇ」
「実の子ではないからな。部下だったのだが、私を第二の父だと言って慕ってくれていたのだ」
田舎から出て来たアズィンケインから才能を感じ目をかけ、自部隊に引き上げたのは私だ。
だからかアズィンケインは私によく懐いていた。
私もどんな話だろうと目を輝かせ聞くアズィンケインに息子とはこうものなのかと思ったものだ。
「実子じゃなくて部下ねぇ。まぁ自分の隊を身内のように感じる人間は多いし、おかしな話じゃないのかねぇ」
「私の場合妻子がいないからな。余計そう感じるのかもしれないな」
「ん? あんた貴族じゃないのかい? それとも三男坊とかかい?」
「いいや。だが、私は特別なんだ。これでも伯爵家の当主だったが一代限りと決められていた」
呪術師殿が眉を顰める様子に苦笑する。
彼女が貴族なのか、そうではないのかは分からないが、私の生前の立場がかなり特殊であることは分かるのだろう。
事実、貴族の中でも私の家の事情を深く知る者は少ない。
きっとあの家は私が騎士を剥奪され王都追放になった時点で取り潰しになったのだろう。
狂気が晴れた今とて、そのことに関しては大した感慨も沸くことはない。
私は私の身に流れる血が嫌いなのだから。
「そうだな。もはや生前の契約も存在しない。話しても問題はないだろう」
前陛下との契約。
私が現陛下以外を疎ましく思っている原因でもある一連の惨劇。
私は元々王家に反逆し、一族郎党処刑された家の生き残りだった。
私があの時まで生きていたのは単なる偶然であり、現陛下に救われたからこそ。
それが陛下以外の王家に信を置けず国よりも陛下に忠誠を捧げている根本とも言えるものだった。
「我が一族は元々辺境と言える土地に封じられていた。伝統だけは立派だが、内情は悲惨なものだ。代々貴族であることだけが自分達の矜持を保つことが出来る唯一であり、領民を護り富ませることよりも自分達の虚栄心を満たすことを望むような……そんなつまらない一族だった」
今でも忘れることは出来ない。
特に貧乏ではないが、裕福とも言えない領民達のどこか暗い顔。
王都に出向く時のために無駄に煌びやかな装飾品を見て満足している一族の歪み切った顔。
自らの一族にうんざりするには充分な姿だった。
「私は幸いと言うべきか剣の才能を持っていたが故に王都に出ることが出来た。王都での生活が嫌だったわけではない。だが自らの一族の愚かさが一層明らかに、失望する日々ではあったな」
子供は私一人では無かった。
むしろ本来誰にも見向きもされない末子であったはずが、剣の腕を買われ騎士になる道が開けた途端、一族の私に対する対応が変わった。
今まで見向きもしなかったのに、妙にもてはやすようになり、挙句私に当主になるように命じて来たのだ。
騎士として独立するつもりだった私には突然の話だった。
当主の道を閉ざされたことに絶望しながらも、解放されることに安堵した兄たちの顔に私の方が落胆した。
皆、一族の醜悪さに気づきながらも目を逸らし続けていた。
それが親から子へ繋がれる、最悪の継承の光景だった。
結局、長年の怠惰によりあの一族は堕落しきっていたのだ。
「私は突然時期当主に指名された上、騎士であり続けろと命じられた。無茶な事を言っていると思った。当主であることと騎士である事を両立することは難しい。土地持ちならば余計に、だ。だが私が騎士となり、手柄を立てれば田舎貴族から脱却できると思い込んでいた一族の者達はその無茶を通そうした。……そんなこと到底無理だったというのに」
信頼できる代官もおらず、移動の魔法陣使用を許される程の役職に就くには若すぎる。
私がそこまで登りつめられるかも不透明だと言うのに、中々そのことを理解しなかった。
理解すればしたで問題は起こったわけだが。
「そして最悪の事態が起こった。あいつらは自分達の願いが到底叶うことはないと理解した途端、その恨みを王家へと向けたのだ。愚かだ。どこまでも愚かで腐った一族だった」
「よっぽど自分の血族が嫌いだったんだね、あんた」
「ああ。あの家に生まれたことは私にとって汚点でしかない。……口だけならば問題は無い、とも言える。田舎貴族が何を喚いても何も変わりはしない。だが、我が一族は越えてはならない一線を越えた。……王家に剣を向けようとしたのだ」
前から息をのむ音が聞こえた。
当然だろう。
明確に反逆の意志を示したのだ。
そして、何故その状態で私だけがこの年まで生きていたのかも不思議に思って当然だ。
私自身、生き残ったのは奇跡だと思っているのだから。
「反逆は内部告発によって計画前に潰すことが出来た。――密告したのは私だ」
元々、当時まだ一騎士であった私が当主の仕事など出来るはずもないと、おかしな夢を見るな、と言いに行くために領地に行ったはずだった。
もしかしたらあの時はまだほのかに期待していたのかもしれない。
幾らあんな怠惰な一族とて無理が通らないと分かれば少しは変わるかもしれない、と。
愚かしい程の浅はかな願いだった。
前触れも無く密かに帰った私を待っていたのは領主一族に対して怨嗟の声を上げる領民達とそんな領民達を締めあげ戦力にしようとしている醜悪な一族の姿だった。
吐き気がした。
涙も出たかもしれない。
我が身に流れる血が疎ましく、あの一族に生まれた自身を呪った。
そのまま激情に身を任せ一族を蹂躙しようとさえ考えた。
そんな私が騎士としての矜持を思い出したのは領の子供達の涙だった。
このまま放置していれば自身も罪人として裁かれるだろう。
これ以上醜悪な姿を見ることも、自らを疎むこともない。
だが、その時領民達はどうなる?
無理矢理戦力され、進軍してしまったら?
あの涙は永久に止まらないものとなってしまう。
領民と自身の死を天秤にかけ、あの時の私は領民を取ることが出来たのだ。
「王都に舞い戻り、上官を通して告発した。あの時の私は自分の死も覚悟していた。反逆罪は一族郎党処刑だからだ。だが……何故か先王陛下はその告発を握りつぶしたのだ」
訳が分からなかった。
田舎の一貴族が兵を上げようとも問題ないと思ったのか、それとも私の報告が陛下に届く前に握りつぶされたのか。
分かったのは無かったことにされたと悔しそうに言った上官の気づかいだけだった。
「領民を護ることが出来ない絶望に自棄になった私は自らの手で一族を討ち取り、自死するつもりだった。既に自身の命などどうでも良かったのだ。――そんな私を掬い上げて下さったのが当時殿下であらせられたコートアストーネ様だった」
陛下は領民を護りたいという私の意志をくみ取って下さった。
そして、どうやったかは分からないが、一族討伐の勅命と領民の命を助けるという直筆サインの書類を片手に私の前に現れた。
勅命書を持った陛下は私に「家族を討つ覚悟はあるか?」と問いかけてきた。
その言葉に頷かない理由など存在しなかった。
領民の命を救ってくださるのなら余計に。
「陛下は迷い無く頷いた私に悲し気な表情をなさったが「死ぬなよ」という一言のみに留めて下さいました」
その後はあっという間だった。
剣の腕も貴族としての手腕も何もかもが劣っている一族の人間が陛下に敵うはずもない。
一族の制圧はあっさりと終わった。
その後陛下直々に領民に説明をして下さったことにより安心に泣く領民もいたほどだ。
悲しみの涙ではなく、喜びの涙を見ることが出来た。
心から安心した。
これでも心置きなく死ぬことが出来る、と思っていた。
心残りも無く、私も一族の者として処刑されるだろうと思っていたのだ。
「だが、先王陛下は私を勇気ある内部告発者として扱い、一族の爵位をそのまま引き継がせた。しかも……――」
皮肉なことだ。
本当に当主と騎士を両立することになったのだからな。
「――……土地を取り上げた代わりに王都に住まうことをお許しになり、私を昇格させたのだ」
まるで口止めのように。
いや、実際口止めだったのだろう。
その後直ぐに全てを黙する【契約】を結ばされたのだから。
「対外的には一族は皆流行病にかかり死去。王都に居た事で免れた私が領地返上を願い出たのを王家が了承し、私は法衣貴族となった。昇格に関しては実力的に問題ないためと拍付けだと説明された」
吐き気がする程の欺瞞だった。
「今となっては先王陛下まで私の上奏がいったのかを知る術はない。が、あの時感じた王家への失望と不信感は忘れることが出来なかった。そして今代陛下に対する強い敬愛もだ」
当時殿下であった陛下が色々手をまわして下さった結果、一族の中でも幼子達は助かった。
傍系もだ。
領地に攻め入ることなく、当主達の捕縛だけで終わらせることが出来たのも陛下が御身自ら乗り込んで下さった御蔭だ。
私は命どころか誇りすらも陛下に掬い上げられたのだ。
「あんた、もしかして……」
呪術師殿の表情が驚きに変わる。
私の表情から色々読み取ったのだろう。
敏いものだ、と思った。
私は笑みを浮かべる。
「ああ。私はコートアストーネ陛下を敬愛しているが、王家に対して深い不信感を持っている。国を護ることに異存はない。だが、陛下をお守りすることに比べればどうして優先順位が劣る」
もしも……そう、もしもだが。
陛下がこの国を疎み、滅ぼそうとした時、私はきっと陛下に剣を向けることは出来ない。
国の民に謝罪しながらも陛下の死の旅にお供しただろう。
「有り得ないことだがな」
陛下はこの国を愛していらっしゃる。
国の滅びなど決して望まない。
だから私もあの時まで騎士としていられたのだ。
そう、だから、私は自身に対してこう思うのだ。
「私は騎士でありながら最も騎士として不適格な存在だった。……これが生前の私が決して話すことの出来なかった秘密だ」
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