どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架

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気づかないうちにフラグ建設?

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 何処か懐かしさを感じる机の上で私は魔石に魔法陣の【付加】を施していく。
 水の貴色である青に輝くのを確認した後、本命の風の魔法陣を付け加えて鮮やかな青と緑の線が定着していく様をじっと見つめる。

「(この瞬間は何度見てもファンタジーの世界だなぁと思うんだよねぇ)」

 最後に錬成品として完全定着させるため魔力を注ぐ。
 パチパチと青色と緑色の光が弾け魔力によって安定し、定着の証と言わんばかりに一瞬強く光り、次の瞬間に収まった。
 付加錬成が無事終了した事を確認した私は、ようやく一段落と背伸びする。
 確実に年に似合わない音がするのが何とも言えない。
 この年で既に肩こりが発症しそうで恐ろしい。

「終わったのか?」
「んー。……うん。『錬成成功だね!』って言った所かな?」
「なんじゃそりゃ。らしくねー言い方してんじゃねーよ」
「そんなに変な事言ってないんだけどね? まぁ確かに『ゲーム』で成功するといっつも出てくるテロップだからねぇ。私らしくはないかもしれないけどさ」

 振り向くと黒猫、もといクロイツが呆れた表情で座っていた。
 尻尾でたしたしと床を叩く姿は豊かで人間臭い表情を抜かせばまんま猫だとしか言いようがない。
 
「(何度見ても猫なんだよねぇ)」
「おい。テメェはいい加減猫扱いはやめろ。オレは豹だっての」
「おっと、表情に出てたかな? けど、そういう事はでっかくなったら言ってよねぇ。……早く大きくなれたらいいね?」
「オマエなぁ。なれるって言ってんのにまだ信じてねーのかよ」
「いやぁ。無理でしょう。見た事も無いし」

 クロイツ曰く大きさは変更できるらしい。
 なんでも今の時点でも私ぐらいの子供を乗せる事が出来る大きさまでなれるらしいよ?
 もう少し馴染めば大人でも乗せられるとか?
 と、熱弁を振るわれてもねぇ、一回もなった事ないから半信半疑なんだよね。

「何度も言うけどなぁ。無駄に魔力を喰うし、そこまでの必要性は感じねーからしねーぞ」
「そりゃね、無駄に魔力持ってかれるのは困るんだけどさぁ。別に一回くらいなってもいいんだよ?」
「オマエならそう言うのは分かってんけどな……その内な」

 何でか知らないけど、こうやってクロイツは大きくなる事を拒否するし渋るのだ。
 クロイツは理由も無くはしないし、そもそも断るにしても、結構きっぱり理由を述べて断るぐらいはっきりした性格だと思うんだけど、一体何が引っかかってる事やら。
 まぁその内と自分で言っているから、その内大きなクロイツを見れるはずだ。……此処まで引っ張っておいてなれないって事もないだろうしね。

「(ただ、大きくなっても猫に見えたりしてね)」
「オマエ、また妙な事考えてねーか? 聞きやしないが。……に、しても、大分この部屋綺麗になったな」
「あーまぁねぇ。いやー。そのまんまにしておくのも考えたんだけどさぁ。……流石にあの乱雑さの中、居るのは無理だったんだよね」

 此処は無色の魔女であり転移者である水無月灯さんが残した小屋型魔道具【巡り人の休憩所】の一室だ。
 しかも彼女が一時的に住んでいた部屋を現在使わせてもらっている。
 この部屋を使う事を最初は悩んだ。
 彼女の残り香が残っているままにしておく方が良いのではないかとも思った。
 けれど、彼女は手紙にこの小屋を私達に残した、と言う風に書き残した。
 中に置かれていた書物もこの魔道具の所有者が使えるようにと、彼女が残した遺産のような扱いだった。
 なら、この部屋を私が使っても良いんじゃないかと思えたのだ。
 とはいえ、少しばかり気が引けるのも事実だったから、最初は出来るだけそのまま使おうと思ったんだけど……。
 使う本人は場所も分かっていて使いやすい部屋というのは他人にとっては乱雑そのものという事でして。
 結局、使いやすいように整理してしまう事に。
 
「(その頃には、気兼ねとか色々吹っ飛んだよね。それくらい乱雑としか言いようがない部屋だったし)」

 良い歳のお嬢さんが短い間とはいえ住んでいた部屋じゃないと思ってしまうのは私が『地球』で成人していたせいなんだろうか?
 『わたし』はおばさんとか言われる年じゃなかったはずなんだけど。――多分。

「そら、そうだ。オレとしてはこの方が居やすいから良いんだがな。……家具の配置は変えなかったのか?」
「うーん。そこはね。……この配置だからこそ『懐かしい』と思ったんだろうし、ね」
「ああ、そういう。言われてみればそうかもな」

 同じ日本から来た『同類』が配置した家具の持つ雰囲気と配置は私達に『懐かしさ』を感じさせる。
 この世界に生きる事を覚悟ぐらいとうにしている。
 けど、この部屋に居る時ぐらい『気兼ね無く前を懐かしんでも』いいんじゃないかと思ったのだ。
 だから家具の配置も家具自体も変えなかった。
 私のそんな思いはクロイツにも伝わっているらしい。
 クロイツも何処か懐かしみと安らぎを感じているようだった。

「そういや、何、作ってたんだ? と言うかオマエ錬金術師として卵のくせに一人で作ってもいいのか?」
「あー。創造錬金の新しいレシピは基本的に先生方監修の下じゃないとダメかな。けど付加錬金の場合、あまり五月蠅く言われないんだよね」

 これは錬金術の性質の差、みたいなモノだと思う。
 創造錬金術は場合によっては成功の過程ですら爆発を伴う事がある。
 自分の身を護る術が拙い初心者に一人でやらせれば大惨事が起こりかねない。
 だから基本的初心者の頃、それこそ身を護る術を習得するまでは学園の先生や師の監修の下錬成を行う。
 【属性水】などは、ほぼ爆発の心配も無いし普通に一人でも作らせてくれるけど。

 付加錬金はそういった爆発はほぼ起こらない。
 失敗しても静電気が走る程度の反発が起こる程度だ。
 相当無茶して複数の錬成をすれば爆発するかもしれないけど、その場合土台が付加錬成に負けた、って扱いになるらしい。
 だから付加錬成に関しては自己修練にも最適であり、先生方もやるなとは言わない。
 気を付けるのは前になったような魔力の枯渇による気絶くらいだ。

「(アレは一度体験すれば絶対に二度とゴメンだと感じるから、問題ないしね)」

 『ゲーム』では初心者の頃良くやってたけど、よくよく考えれば良く出来たもんだ。
 現実として引き起こされると結構恐怖心に襲われる。
 今更だけどプレイ中の『ヒロイン』に謝りたいぐらいだ。

「(システム-ツクリモノ-だとは分かってるんだけどね。ゲームのテロップもテロップだよねえ。よくまぁ『あちゃー、魔力の枯渇で倒れちゃったのか。うーん、少し寝すぎじゃったかなぁ』なんて暢気なテロップで表示できたモノだよね)」

 言い訳じゃないけど、大した事ないのかも? と思った要因の一つだから、あの暢気なテロップ。
 実際、魔力の枯渇は死にも直結しかねないから、あんな暢気ではいられない。
 『ゲーム』にそこまでのリアリティを求めても仕方無いのかもしれないけどさ。

「水無月さんは錬金術の方は全く興味が無かったみたいなんだけど【魔法陣】には結構興味があったみたいなんだよね」
「ふーん。けどよ、あれって魔法が発動すると消えちまうもんなんだろう? それを記録すんのって無理じゃね?」
「私もそう思ってた。けど魔道具とかに施されたりしたモノとか見えるモノはじっくり見る事も出来るし、そーいうのを中心にノートに書き残しておいたのが見つかってさ。……後、発動中や発動後にも魔法陣の残滓を読み取るスキル持ちが身近にいたみたい」
「んなスキルまで存在すんのかよ、この世界は。それはそれで珍しいスキルなんだろうけどな」
「だと思う。ゼルネンスキルの類かもね。私もスキルを全部知っている訳じゃないから分からないけど」

 フェルシュルグが使っていた、今はクロイツが使う事が出来るゼルネンスキル。
 あれは特殊スキルであり習得条件や威力、効果など全てが謎に包まれている。
 一説では神からの授かりモノとすら言われている代物なのだ。
 クロイツに言わせると「神様が其処までていねーに何かしてくれるわけねーだろ」と言った感じらしいが。

「(どーも、クロイツって神様っていう存在があまり好きじゃないみたいなんだよねぇ。過去に何かあったんだろうけど。……まぁ『日本』で生まれ育った身としては神様の存在が結構身近なこの世界の感覚に慣れないから多少気持ちは分かる気もするけど)」

 『わたし達』は無宗教と言う名の何でも神格化させていた節操無しの国に産まれたからか、神様がいる事自体は否定していなくても、神様を信仰しているという感覚はイマイチな所があるのだ。
 『前』の時、信仰しているモノがある=カルトに嵌っている、なんていう恐ろしい勘違いをする人間もいたくらいなのだから。
 
「(この世界じゃあり得ない感覚だよねぇ。ここら辺は世界が異なる事で感じるギャップって奴なのかもしれないけど)」

 正直、神様が身近であるという感覚に慣れるには私でさえまだ時間が必要だと思う。
 クロイツなんか相当の事が無い限り無理かもしれない。
 それでも問題はないと思うし、強制する気も無いんだけどね。

「(宗教家と真正面から喧嘩する事も早々無いでしょう)」

 あっても困るって言うのが本音だけどね。
 この世界の宗教観を考えれば、そうそうにないと少しだけ安心もしている。
 クロイツも全方位に喧嘩売る程馬鹿じゃないから、大丈夫だと思ってる。
 こうして私の前でだけ文句を言っているだけで済んでいる間は問題ないだろう。

「付加錬金って魔法が結晶化したモノを魔力使う事で付加するか、こういった効果を表した魔法陣を施すってのが主流なんだよね。で、まぁこうやって魔法陣が沢山残っているわけだしやってみようかなぁと」
「おーい。それって、思いつきでやり始めたっていわね? オマエも大概好奇心で動く方だよな」
「うーん。錬金術師って大概知的好奇心に素直な人ばっかりだと思うよ? ほら、シュッティン先生とか見れば分かるじゃん?」

 自分の興味のある事以外はそう簡単には動かない私の先生。
 先生が動くのは自分の好奇心のためじゃなければお父様やトーネ先生と言った友人のためだけだ。
 人嫌いの先生が認めた、懐に入れた数少ない友人達。
 先生はそういった人達のためなら、興味の無い事でも動く事を厭わない。
 
「(そういう意味では先生も案外単純なのかもね)」

 本人に言ったら、本気で実験体にされそうだから言わない、違う、言えないけど。
 クロイツにとってもシュティン先生のそういった所は理解しているのか否定はしなかったけど、どうやらまだ納得しきれてはいないらしく首をかしげている。

「鉄仮面錬金術師はそーかもしんねーけど。オマエのおとーさまも錬金術師なんじゃねーの? アイツはそんな風にはみえねーけど?」
「お父様? あー、成程。それが引っかかるのね? 確かにお父様は錬金術師だけど、その前に公爵家の当主であり宰相だからなぁ。知的好奇心は旺盛だと思うけど、優先順位がはっきりしているんだと思う」
「ふーん? 錬金術師にも色んな奴がいるんだな。……そりゃそうか。錬金術師だろうと人間だしな」
「そりゃそうだよ。結局の所、錬金術師だってただの職業の一つだからね」

 錬金術師を含めた『前』の時には存在しなかった職業の数々は私達には新鮮であり、何処となく別物と感じる事がある。
 多分こっちの世界の人に『声優』とか『SE』とか言ったら「どんな職業だよ、それは」って突っ込まれるんじゃないかな?
 世界を違えるって事はそういう事だと思う。
 常識も、下手すれば倫理観すら違う世界。
 そんな世界の記憶を持つ『転生者』や肉体ごと異世界間を移動した『転移者』
 神々によって様々な手法でこの世界にやってきた私達は一体どんな役割を期待されてるんだろうか?

「(……神様たちのお遊び、とかでもおかしくはないんだよね。それが正解だったとしても私達に出来る事なんて無いし)」

 幾らこの世界が神々との距離が近いとはいえコンタクトを取れる訳じゃない。
 幾ら怒りを募らせても直接文句を言えるはずもなく、一発殴るなんて事も出来ない。

「(案外、神様の研究していた転生者や転移者の目的はそこらへんだったりしてね)」

 実は過去に神様研究をしていた転生者や転移者がいたという伝承が残っているんだけど、クロイツを見ていると、そういう目的の人もいそうだなぁと思わなくもない。
 神様への考え方が違う『わたしたち』のような人間がわざわざ神様を研究題材にした理由……それが神様に対しての恨み辛みを一言ぶつけるためだった、だとしても私は驚かないし、クロイツなんか拍手して共感しそうだ。

「(この采配に『わたし』だって思う所がないわけじゃないしなぁ)」

 生涯消える事は、埋める事は出来ない心の虚。
 それをどうにかする事は誰にも出来ないのだから。……たとえそれが自分自身だとしても。

「んで? 何を作ったんだ? 成功したんだろ?」
「んー。成功はしたけど、直ぐに使う事は無いと思うんだよねぇ」

 クロイツの質問に思考を切り替えて錬成に成功した魔道具の効果を説明すると「オマエ、本気で好奇心で作ったんだな」と呆れた顔で言われた。

「だから言ったでしょう? 私が比較的扱いやすい属性の魔法陣っぽいから作っただけだし」
「魔石の無駄じゃねーの?」
「いいの! これ、自分で取った奴だし」
「あー。……って事は魔物の魔核って事か?」
「そーいう事」

 あの平穏とは言えない冒険者カードの取得から、私は初心者冒険者「キース」として採取などのクエストを熟している。
 その度に好奇心旺盛な冒険者さんとその相棒さんが何処からともなくでてきて絡んでくるのを気にしなければ、然程問題はないと思っている。
 自分の眼で色々なモノを見る事で材料の良しあしを見極める目を養う事が今回の先生方からの課題である。
 こればっかりは様々なモノを見る事しか方法が思い当たらないからルビーン達を護衛に近場に出向いているのだ。

「本当にあの人達が絡んでこなければ、何処にでもいる冒険者として埋もれるはずだったのにさぁ」
「どーかな? アイツ等のせいで余計目立ってるのは事実だと思うが、犬っコロ達と常に行動してる限り目立つのも時間の問題だった思うんだがなー」
「うっ。否定できない」

 ルビーン達の実力はある意味この身で実感したけど、まさかB級の二人が其処まで目立つとは思ってもみなかったのだ。
 B級は決して低いランクではない。
 けど全く居ないランクでもない。
 新人を教育するために行動を共にしていても然程目立つランクではないはずだったのだ。
 
「ランク云々よりも、アイツ等、お互い以外は興味が無かったみてーだからな。それを隠してもなかったんじゃねーの? だってのにオマエにはベッタリだ。そりゃ目立つわな」
「うぅ。返す言葉も浮かばない。けどルビーン達抜きじゃ外に出る事は出来ないしねぇ。先生方の課題のためにも外にでる事は必須だし……目立っても我慢するしかないんだよねぇ」

 これでも一応公爵令嬢である。
 いくらキースが初心者冒険者だったとしても、それは変える事は出来ない事実なのだ。
 結果齎されるモノばかりはどうしようもない。

「(この産まれじゃなければ良かったなんて欠片も思わない時点で、諦めなきゃならないんだよねぇ)」

 流石に色々産まれに思う所のあるクロイツには言えない事を心の中で呟いた。
 
「うん。余計に目立ったのはあの人等のせいだから、あの人達のせいって事にしておこう」
「えぇ。そりゃ言いがかり……でもねーな。確かに、アイツ等がいたせいで更に目立ってるのは事実だからな。オマエ、完全に弟子扱いだもんな」
「有難迷惑ですよー」

 好意に対する言いざまじゃないのは承知だけど、望みと正反対を邁進させられている身としては文句の一つでも言いたい、今日この頃です。

「そういや。オマエ錬金術ギルドの方はあれから一度もいってねーけど、いかねーの?」
「んん? あー、あっちは当分行く気はないから。現時点で「キース」には錬金術師の師匠は要らないしね」

 錬金術ギルドに登録した以上、私は錬金術師になる才能を有すると判断された。
 だから次錬金術ギルドに行けば、師匠を紹介されたりと、便宜を図るという形で色々勧められる。
 
「(それが「普通」だから)」

 有力な後ろ盾を持たないなら余計。
 それは救済処置の一つですらある。
 だけど「キース」にそれを持ち込まれても困るのだ。
 私には既に師が存在するのだから。

「(それこそ有難迷惑となってしまう)」

 善意が全て良き方向に繋がる訳じゃない。
 私のややこしい身の上が好意を好意として受け取る事を許さないのだ。

「今なら例の受付嬢の件で近づかない事にも説明が付くからね」
「……怖がるタマじゃねーのだろ、オマエも「キース」も」
「そりゃね。でも良いんだよ。言い訳として使うには充分ってだけの話だから。私が彼女を歯牙にもかけていないなんて私達しか知らないしね」

 あの場にいた人間だけが「私」の異質さに触れた。
 だから今はまだ錬金術ギルドに行かない理由として充分通用するのだ。

「あのうるせーコンビが黙ってりゃ誰も気にしないって訳か」
「そういう……いや、騒がしいのは片方だけなんだけどね」
「いや、もう一人も大概お喋りじゃね? ……そーいや、あの女と山賊モドキがどーなったかはオマエしらねーの?」
「んー?」

 ビルーケリッシュさんはそこまでお喋りでもないし騒がしい印象は無いけど……じゃなくて受付嬢達のその後?

「知らないし、どーでも良くない?」

 山賊モドキの方はやっちゃいけない事をしたし、受付嬢だった彼女に関してもある程度は脅されたとか誤魔化せてもギルドでやった事の罰は受けないといけない。
 諸々ひっくるめて、少なくとも今後私達の前に現れる事は絶対にない。

「どうせもう二度と会う事も無いんだし、ね?」
「……相変わらず、だな」
「ん?」
「なんでもねーよ。ブレねぇヤツだと思っただけだ」
「そう?」

 別にクロイツ、笑ってるし良いんだけどね?
 私は僅かに感じた疑問を一瞬で消すと再び机に向き直り、出来上がった魔道具に最後の細工を施す。
 この世界では自作のモノには無いかしら彫りこむのが主流である。
 何をしても良いんだけど、一応私が作成しましたって意味での紋章みたいなモノを彫ったりするのがお手軽だし、結構そうしている人が多いらしい。
 私も私だと分かるように簡略した幾何学模様と花を合わせたようなデザインを彫っている。
 魔力を使わず手作業でする事で付加した錬金の邪魔をしないようにするため、こればっかりは面倒だけど自分でやるしかない。
 
「(いやまぁ、人にデザイン画だけ渡してやってもらう事も可能だけどさ)」

 見習いにそんな横着は許されないのである。
 私自身、面倒だと思う事あれど、まぁこれもこれで楽しいからいっか、と言った感じだ。
 細かい作業は嫌いじゃないし。

「それは結局、何になるんだ?」
「意外と縮小化出来たしピアスかブレスレットかなぁ」
「ピアスって、穴開けなきゃならねーけど、オマエの年でピアスっていいのか?」
「『日本』ならともかく、この世界じゃ別に何も言われないと思うけど……無難にブレスレットにしとくかなぁ?」

 と、なると他の属性に染めた魔石を複数用意してブレスレットにしようか。
 机の上に乗って覗いて来たクロイツに苦笑しつつ、作業の手は止めない。
 魔法陣を崩さないように彫刻しつつ、頭の中でブレスレットの完成系を想像しながら、残りの材料の算段をつける。

 窓から入る光が机を柔らかく照らしている。
 そんな場所でクロイツと話しながら錬金術に没頭する。
 最近では珍しいくらい穏やかな日を噛みしめながら小さく笑うのだった。


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