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1、夢にまで見たあの娘

二日目 前半

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 俺は森の中に立っていた。
 鬱蒼とした森は、明らかに日本の森ではなかった。
 針葉樹が生い茂り、見たことのない色とりどりの植物や花たちが咲き乱れていた。
 俺はそんな中をひたすら歩いた。行く宛はなかった。しかしながら、他にすることはないのだから仕方はない。
 俺は歩きながら自分の格好を確認する。半袖に短パン、それからお気に入りのスニーカーといたって普通の格好をしていた。
 森の中の気温は高くはなく、寒くもない。快適で過ごしやすいところだった。
 周囲を見渡しても、森ばかりしかなく、人影はなかった。しかし、動物たちなのかは分からないが、森の奥深く、俺からは視認できない深淵から覗かれているような、視線のようなものを感じていた。その視線に悪意はなく、ただ観察している、というより吟味、品定めといった感じのものだった。
 なぜそんな風に感じたのかは分からないが、そう思ったのだ。
 風が肌をなぞるが、寒さは感じなかった。
 鳥のさえずりなのか、はたまた虫の鳴き声なのかは分からないが、何かの鳴き声が聞こえる。古寄町では、いや日本では聞いたことないものだった。
 木漏れ日が差し込む森の中を、俺はずかずかと進んだ。
 宛もなく歩き回った俺は、数十分から数時間、いや数十秒かもしれないが、そんなあやふやな時間を経て、大きく森が開けた場所へとたどり着いた。
 そこは不思議な場所だった。
 大きさは直径40メートル程で、綺麗な円形をしていた。自然と切り開かれた訳でもないのに、まるで木が意思をもって避けるようにして、この空間を作ったかのようだった。
 そんな自然の神秘が産み出したような広場は、3分の1が池に覆われるような形になっていた。
 深さは分からないが、コバルトブルーとでも言うのだろうか、いや紺碧といった方がいいのだろうか。とにかく、美しく透明度の高い青く輝く池がそこにはあった。
 太陽を遮るものがなくなったその広場で、その池は大きな鏡のように光を跳ね返していた。
 俺はそんな池のほとりに、1人の少女を見つけた。彼女は足湯につけるように、その滑らかな曲線を滑らせる足を池のなかに浸し、腰を掛けていた。
 俺は恐る恐る近づいた。別に彼女が怖いわけではない。しかし、そうせざるを得なかったのだ。それは恐怖から来るものではない。どちらかと言えば、愛しさから来るものであろう。傷つけたくない。失いたくない。故に、さわること、触れることを躊躇する。そんな感じだ。
 俺は息も足音も心臓の鼓動さえも殺す勢いで気配を消し、ゆっくりと彼女に近づいた。
 あと数十歩。彼女の腰まで伸びたエメラルドグリーンの髪が目に入った。それは太陽の光を反射するというよりかは、吸収して自ら光っているかのようだった。
 それから、髪の隙間からわずかに覗くうなじからは、なんともいいがたい美を感じた。
 あと数歩。彼女の香りが鼻孔を刺激した。その香りはまるでフルーツのようだった。しかし、それを形容するにたるフルーツを俺は知らない。甘すぎず、酸っぱすぎず、全てにおいてバランスがとれたその香りに、俺の脳は混乱しそうになる。
 俺は歩を進めた。
 さらに慎重に、そしていたわるように。
 零歩。俺は彼女の真後ろにたった。
 俺は何もしなかった。出来なかったのだ。
 眼下に座る彼女もまた、微動だにしなかった。ただ遠くにあるなにか一点を見つめているようだった。
 俺もそれにならい一点を見つめていた。
 とにかく立ち尽くした。彼女の後ろで、立ち尽くしたのだ。
 彼女と同じ時間を過ごしてから何分がたっただろう。いや、何時間だろうか、それとも数十秒なのだろうか。
 俺は彼女と不思議なときの流れを感じていた。 
 すると突然私の眼下で、池に腰を掛ける少女が振り返った。
 彼女の顔が初めて見えた。
 柳眉という言葉以外では形容できない眉に、意思の強さと優しさを感じ取れるかのような慈愛に満ちた目。鼻はスッキリとして高く、唇は瑞々しく色気を孕んでいた。潤った果実のような唇の隙間から覗く歯と舌に、俺は少し興奮した。とにかく整ったその容姿を急に叩きつけられた俺は、動揺してしまう。咄嗟に目をそらしてしまった。
 「見つけてくれる?」
 彼女はそんな俺に確かにそういった。
 どういう意味かは分からない。俺は顔を背けていたので、彼女の表情はわからなかった。しかし、その声は悲しそうな声だった。それと同時に美しく、ずっと聞いていたと思わせる声だった。
 俺はその声に答えることはできなかった。答えたくない訳じゃない。声がでなかった。 


「い………………」
何かが聞こえた。
「ーい……きろ……」
 俺は暗闇から意識を引き戻す。
 彼女の顔が薄れていく。
 「おーい! 起きろってば!」
 そこにはベットを揺らす波奈がいた。
 「おい、もう8時だよ? 練習9時からじゃないの?」
 俺はスマートフォンに手を伸ばし、時間を確認する。確かに波奈が言うとおり、8時を回っていた。
 どこを見渡しても森は広がっておらず、あの少女もいなかった。いつも通りの俺の部屋と波奈がいるだけだった。 
 どうやらまた夢を見ていたようだった。 
 俺は少しだけ夢の内容を振り返る。
 鬱蒼とした日本ではない森。光輝く泉。美しいいつもの少女。その娘の顔……顔は……やっぱりだめだ。思い出せない。
 いつも起きると夢の内容は覚えているものの、少女の顔は忘れてしまうのだ。
 そこもまた不思議なところなのだ。
 俺はベットから体を半分起こす。
 「起こしたくれたのはありがたいけどさ、本当に急に入ってくんなよなぁ……」
「てへぺろ」
「くそ、ちょっとばかし顔がいいからって調子乗りやがって」
「なに言ってるのさ、私に感謝しなさいよね」
 俺はベットから体を起こし、洗面所へと向かう。そのときにちらりと食卓を見たが、どうやら波奈が朝御飯を用意してくれてるらしい。
 水道から流れ出る水流を手で受け止め、顔に叩きつける。
 目が見開いていくのを感じた。
 俺はふらふらとリビング兼寝室に戻る。
 そんな俺に波奈が問いかける。
「なんかうなされてたけどどしたん?」
「え? 俺が?」
「うん。なんか謝ってたよ」
 謝ってた? 俺が? 確かにあの少女の夢は見たが、謝るような要素はなかったはずだ。
「いや、いつもの夢だよ」
 俺は波奈にそういった。
「え? 前に話してた女の子の夢、まだ見てるの? 嘘でしょ?」
「おめぇオカルト好きの癖に、これは信じねぇって何事だよ」
「いや、だってねぇ」
 相変わらず信じていない用だった。
 以前、相談したときとそうだったが、あまり反応は示さなかった。むしろあいつにしては珍しく否定的だった。なんだかムカつく。
「まぁ、まぁ、とりあえず朝食食べちゃってよ」
「お? おう……」
 俺は席についた。
 食卓の上に並ぶのは、食パンと味噌汁(レトルト)、スクランブルエッグにベーコンといったって普通の朝御飯だった。
「波奈スペシャルを召し上がれ!」
 なんか言ってるが普通の朝飯だ。自分で作るてまが省けるから助かるが、不法侵入して作っていることを忘れてはならない。
 まぁ、旨いのだが。
 窓の外は、いつにも増して快晴だった。

「いってきます」
「いってらっしゃい」
「いや、まて、なんで俺がお前にこんなことを言ってる?」
「気にすんな‼」
 こんないつも通りの他愛のないやり取りをして俺は外に出た。
 部活のジャージに身を包み、竹刀袋をにサブバックを引っかけ歩き出す。
 「あ! 約束忘れないでね!」
 そう波奈が後ろから叫んでるのが聞こえたが、振り返らずに左手をあげるだけで返事をする。
 しばらく俺は歩き続けた。
 学校へと向かってひたすらに、真っ直ぐに。
 近所の方々に挨拶を交わしつつ、俺はある交差点に差し掛かった。その交差点の角の家の前には、寛貴が立っていた。
「おう! おせぇぞ!」
「わりぃわりぃ」
「反省の色がない!!」
 平謝りの真似をしながら寛貴に近づく。
 朝はいつも寛貴と登校している。
 寛貴が俺は近づくと左手を俺の前につきだして、制止するように告げた。
「止まれぃ!」
 立ち止まった俺を寛貴は顔を近づけて臭いを嗅いできた。
「また始まったよ……」
寛貴のオンナノコチェックと呼ばれる奇行だ。
 臭いを嗅いでいた寛貴は、ゆっくりと顔を離し、俺の眼前にそれを持ってきた。
「貴様、朝から波奈ちゃんとイチャついてたな?」
 はぁ、めんどくせぇ……。
「俺の言い分は聞いてくれない?」
俺のその問いかけに、寛貴は心底恨めしそうな声で言った。
 「聞かねぇよ」
 波奈は一応俺らと同じ古寄高校の生徒だ。そして、寛貴のクラスメイトでもある。まぁ、アイツは顔が可愛いからクラスで人気なのだ。俺にはあの不法侵入者のどこがいいのかわからんが。
 俺はため息つきながら、寛貴をおいて学校へと歩き始めた。
「おい! 待て!」
「あのなぁ、いいもんじゃねぇぜ? 朝から隣の部屋の女に起こされるなんて」
 寛貴は血走った目玉をこちらに向け、力説する。
「お前はありがたみがわかってねぇんだよ! あのなぁ? 幼なじみの女の子に起こしてもらうなんて最高なんだぞ?! それを貴様は!」
 俺は訂正をいれる。
「従姉妹な」
「じゃかぁしぃ!!」 
 そんなくだらない会話を続け、俺たちは学校へと向かった。
 日差しが痛いくらい暑かった。


 寛貴がくたくたになって俺の横を歩いている。
 いつもの光景だ。
 稽古を終えた俺たちは、いつもの通学路を歩いていた。
 朝9時から昼の12時までの3時間。それだけの時間の練習だが、清水先生の稽古はかなりこたえる。
 「たすけてくれぇーー」
 寛貴が嘆く。朝の元気はどこに行ったのか。
「おら、きびきび歩け」
 俺は寛貴の尻を叩く。
「いってぇ! やめろよぉ! 筋肉痛なんだよ!」
「だから叩いたんだろうが」
「おめぇ覚えとけよ……」
 尻を押さえながら、寛貴が俺をにらむ。
 俺はそんなことお構い無しに、先に進む。へこへこと変な歩き方でついてくる寛貴に、歩幅を合わせるつもりはない。
 驚くほどなにもない道路を俺たちは歩いた。
 「おい、腹へらね?」
 寛貴が突然そう言う。
「まぁ、それなりには」
「食いかね?」
「何処に?」
「長芋」
 長芋とはそのままの意味ではない。俺たちが行きつけのラーメン屋の名前だ。まぁ、どちらかと言えばつけ麺が美味しいのだが、ラーメンも旨い。
 まぁ、悪くない提案だった。いつもの俺なら行っていたが……。
「俺用事あるんだわ」
 波奈との約束があるのだ。
 「はぁ、そうやってさ」
 寛貴はわざと呆れたような態度をとる。
「ごめんって」
  俺も謝るふりをする。これが様式美だ。
 「いや、まてよ……まさかお前」
 寛貴が真実に気づいた探偵のように言葉をためる。
「波奈ちゃんといくとかじゃないよな?」
「そうだけど」
「ぶちのめーーす!!」
 突然追いかけてきた寛貴から、俺は逃げる。
「おい、やめろって!」
「やかましい! うらやましいやつめ!」
 俺たちは笑いながら通学路を走った。
 寛貴が意外と元気なのは置いておこう。


「あんたなんでそんなに息切れしてるの?」
 波奈に聞かれたが答えられなかった。息が苦しい。
 先についていた波奈の前に、息を切らしながら到着をした俺だった。
 寛貴からの逃走に成功した俺は、そのまま波奈との待ち合わせの場所に向かった。
 待ち合わせといっても、裏山の入り口なので、寛貴のせいで遠回りをするはめになったのは言うまでもない。
 やっと落ち着いてきた俺は、波奈に答える。
「ひろ、寛貴に、ハァハァ……、追いかけられて」
「寛貴って、田島くん?」
 俺はうなずく。
「仲いいよね」
 俺は首を降る。
「まぁ、いいわ。行こうよ」
  興味無さそうに話を切ると、波奈は山の中に入っていった。俺もその後に続く。
 ある程度息が整ってきた俺は、波奈に訪ねる。
「どこに落ちたんだ?」
 波奈は振り返ることなく、答える。
「うーーん。たぶん山頂くらいかな?」
「うわぁ、まじかよ」
 裏山といっても、雑木林に囲まれたそれなりの高さの山だ。頂上まで上るのはなかなかに大変なものだ。部活をやって、おまけに盛大に鬼ごっこをしたおれにとってはかなりしんどかった。
 そんな俺の反応に関心も寄せず、波奈はどんどん歩いてく。
 基本的に、誰もこんなところを通らないので、道として舗装などされておらず、草木が生い茂り、獣道とも呼べない。それよりきっと歩きにくいだろう。
  山頂には神社があったはずだが、今では祭事すら行われておらず、誰も管理していない。
 今あるいているここも、参道の一部だったはずだが、その面影はなにも残っていない。
 俺たちはその神社跡を目指して歩く。
 しばらく無言であるいていたが、俺はその無言に耐えられなくなり、波奈に話をふった。
「まだつかない?」
「うーん。もうすぐじゃないかな?」
波奈は動きやすい、というよりちゃんとした登山用の服装なのにも関わらず、俺は部活のジャージにサブバックを背負っているという、登山家に見せたら殴り飛ばされそうな装備だった。
 そのせいか、波奈にはあまり疲れは見えておらず、一方の俺はバテバテだった。まぁ、部活やらなんやらがあったのを除いてだが。
 息を切らしながら、必死になってついてく。
 そんなとき、波奈が急に俺に話しかけてきた。
「懐かしいね。なんだか」
 急にそう言われた俺だったが、なんのことだかよくわからず聞き返す。
「何がだよ」
 会話と同時に足も動き続ける。俺たちは尚も頂上を目指し、歩く。
 「だから、こうやって彰人が私のわがままに付き合ってることがよ」
 あぁ、そう言うことか。
「確かに、小学校以来だな」
「でしょでしょ?」
 波奈は楽しそうに笑っていた。後ろからの姿しか見えないが、確かに笑っていた。
「もう、こんなことできないと思ってたよ……」
 なんだか寂しそうにいう波奈。
「何でだよ、別に誘えば行くよ。嫌だけど」
 俺はそう答えた。
「そっか」
「うん」
 その後からまた、波奈は黙り込んでしまった。
 俺たちは黙々と歩いた。
 森の音しか耳に入ってこなかった。
 歩き初めてから約30分程度。俺たちの視界は突如開けた。
 そこには開けた空間が広がっていた。木々が自然と避けるように生えていた。
 その中心には神社があるのだが、波奈の話しによると、その裏手辺りに落ちたらしい。
「ついたぁーー」
 波奈は伸びをする。
「マジ疲れた……」
 俺は近くにあった石に座り込む。
「ほら、座ってないで行くよ!」
 波奈に手を取られ、無理矢理歩かされる。
「あうあうあう……」
「ほら、変な声出すな!」
 説教をくらいながら隕石が落ちたと思われる場所に歩かされる。
 確かに疲れはあった。しかし、何かしらの期待があった。
 そして、俺たちは神社の裏手を覗き込んだ。
 そこには……何もなかった。
「やっぱり嘘か」
 波奈は呆然とたちつくしていた。
「嘘よ! 絶対あるから!」
「はいはい。暗くなる前に帰ろうぜ」
 波奈は落胆していた。しかし、それは俺にも言えることだった。完全に信じていた訳ではないが、何かが手がかりがあるのではと。そう期待していた自分がいた。
 しかし、結果はそううまくはいかなかった。
 気力なく立ち尽くす波奈の手をとる。
「ほれ、帰るぞ」
「……うん」
 聞き取れないほどの小さな声で肯定した波奈を、エスコートしながら帰ろうとしたそのとき。草むらが揺れる。
「なに?!」
「なんだ?!」
 揺れた草むらを見る。
 一体なんだ?
「確認してくる」
「やめた方がいいよぉ」
 波奈の制止を降りきり、俺はその草むらの場所に向かった。
 近場に落ちていた手頃な木の枝を拾い上げ、構えながら進む。
 動物であればいいのだ。しかし、それ意外であったらこれですぐに叩きつける。その意気込みで草むらを覗き込んだ。
 だが、そこにいたのは俺の想像を遥かに越えるものだった。

 そこにいたのは、1人の少女がだった。



 
 

 
 

 
 
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