53 / 107
第3章 領改善編

第47話 改善の兆し

しおりを挟む
★★★★★

「………なんだ!?」

 臨時ゲートが開いたかと思えば、死体が一つ流れ込んできた。

 違う、正確にはゲートに入り込んでくる途中で殺されたのだ。

 ゲートが閉じる。殺した奴が誰だかは分からない。

「おい!」
「はい、簡易鑑識します!」
「ええと………鑑識結果が出ました!この死体はマル小隊長の死体の様です!」
「マルはどこの領地に向かった!?」
「少々お待ちを!………レンメル領です!」
「レンメル領?それは確かに辺境領だよな?」

 いや、それは我自身確認したはずだ。確かにレンメル領は辺境領だった。だからこそ攻め込んだのだ………何故だ?何故マルが辺境地の者共に負けているんだ?マルは少なくとも学園生10人は相手取っても難なく倒せるはずだ。だったらなんだ?たまたまS級冒険者に当たってしまったのか………
 いや確かにその線もあるが、この速さで敗走してきたと考えると騎士団か学園教師共が居たのか………なんなんだ、何故こんなにも早く辺境領で負けているんだ!!!

「おい、レンメル領に今訪れている者は分かるか?S級冒険者、騎士団、学園教師の中でだ!!!」
「ええと………確認をしてみます!」
「クソ………」

 計画が狂った。そいつらに気づかれないように辺境のゴミから攻め込んだというのに………いや、まだ作戦は終わっていない。ただマルが敗走したからなんだ、それは我達にとって騎士団の人間や学園教師共を個別で始末するチャンスじゃないのか?

「王都に潜んでいる者からの報告ですが、現在騎士団、学園のどちらにも欠員は居ないとのことです!S級冒険者は分かりませんが、依頼を受けて別の場所に赴いている可能性が高いかと!」
「はぁ?じゃあなんなんだ………!!!」

 そこら辺じゃないとなるとなんだ?もしかしてだが、クライトとクレジアントがレンメル領に滞在しているとかか?いや、まさかそんな訳はあるまい。あまりにも偶然すぎるだろうが。

「………しょ、将軍様!」
「なんだ?このような時に下手な事だったら分かっているよな?」
「も、もちろんです!………く、クライトの本名は覚えていらっしゃいますか?」
「クライトの本名だと?知らん、覚えていない………おい、まさか!!!」
「ク、クライトの本名は………クライト・フェルディナント・ッ!!!」

☆★☆★☆

【クライトside】

 昼頃、僕たちは厨房から料理を運び出して別邸の目の前に設置しているテーブルの上に並べていく。皆が持って帰れるように、手編みの小さなかごもある。これはキュールと使用人の皆が作っておいてくれたものだ。

「今の領民の人数は?」
「おおよそ、100人に満たっていません」
「うん。それなら足りるね」

 昔の勢いはどこへ行ったのやら、あまりに領地に居る人が閑散とし過ぎている。いくら辺境とはいえ、昔のレンメル領は商売も農業も色々とやっていた。だけど、税金のせいで何にも出来なくなってから今や土地の大半は荒れている。

 それと、今日から昼食の無償提供を始める。もちろん、こんなことをいつまでもやっていくわけにはいかないから、また次なる対策を考えないといけないけれど今はこれで領民達の最低限生きていける環境を整えていくしかない。

「それじゃあ、僕とキュール・クレジアント・ナイパーに別れて病気の人を治していこう。食事を貰いに来た人に家族やその人自身が病気かどうか聞いてね」
「わ、分かりました!頑張ります………!!!」
「キュールは病気の人を治すだけで大丈夫だよ!話しかけるのはボクがやるから、得意な事を別れてした方がどっちにも得だからね!」
「あ、ありがとうクレジアントちゃん」
「私めも傍で待機しておりますので、何か必要がありましたらいつでもお声おかけくださいませ」
「3人ともありがとう。それじゃあ、始めよう!」

 昨日の内に、ナイパーが張り紙を領の掲示板に貼っておいてくれたらしい。だから、何十人もとは行かなくても何人かは来るはず………あ。早速何人か来た。

「………え?」
「ど、どういう事?何であんなに税を高く設定しているレンメル家が食事の無償提供しているの?」
「ちょっと、これ罠なんじゃない?」
「そ、そういう事か!俺達を毒で殺してしまおうって訳か!」
「ふざけんな、そんなことあっていいのかよ!」

 うわぁ………そっちに行っちゃったか。確かに、領民の人からしてみたら僕と父は同じグループ分けになっているに決まっているよね。うーん、取りあえず。

「毒殺なんてしませんよ。ほら」

 近くにあったパンをちぎって口に放り込む。

「こっちも」

 スープ、野菜、果物。一品ずつ一口だけ手を付けて行く。

「毒は入ってません」
「………じゃ、じゃあ何で急にこんなこと始めたんですか!」
「………そうだぞ!こんなことするくらいなら税をもっと下げてくれ!」
「すべてに税がかかるせいで商売も何もできやしないわ!」

 やっぱり税だよね。そこは今の僕にはどうしようもできない。それを説明するか………いや、まだ駄目だ。

「税は………後々下げます。必ず」
「ふん!そんな言葉信用して溜まるか!」
「本当です。信じてください」

 僕は頭を下げる。普通、こんなことする貴族なんてきっとこの世界どこを探しても居ないだろう。でも、今はするしかない。

「なっ」
「………」
「………頭、下げてる」
「………」

 まだ、頭はあげない。僕のプライドごときで、領地その物がダメになったらそれはもう本当に貴族としての素質が無いということになる。そもそも、僕にとって別に頭を下げることはそんなに苦じゃない。日本人の頃の感覚がまだ残っているのか。

「ねぇ、もういいんじゃない?貰えるもんは貰いましょうよ」

 頭を上げる。口を発したのは、昨日助けた女性の人だった。

「………でも!」
「私、昨日この人に助けて貰ったの。まさかレンメル家とは思わなかったけれど。考えてみて、昨日の魔人の軍勢が来ても一人も死者が出ていないのは何で?」
「………それは」
「確かに、レンメル家は税率を上げて豪遊しているし私達は反撃の手段も無いから好きになれない。でも、この人だけは信用していい気がする。昨日に続いて、今日だって助けようとしてくれてる」
「………」

 女性の目の奥を見る。昨日とは少し違って、瞼が少し大きめに開かれたおかげか光が差し込んでいる。

「私は食べるから」
「………じゃあ俺も」
「………それなら」

 段々と、皆が食事をとりに来る。



 印象は何とかなったみたい。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない

仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。 トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。 しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。 先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

処理中です...