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第2章 戦技祭編

第38話 表彰式と男爵

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「第一回学園戦技祭!!! 表彰式ィィィィィイイイイイ!!!!!!!!!!」
『うおぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!』

 遂に先の試合で今日の試合が全て終わり、残すは表彰式だけとなった。正直な話実感が湧かない。

「数多の選手が参加してくれたこの第一回学園戦技祭!!!!! 観客の皆さん、どうでしたかぁぁぁああああああ!!!!!」
『楽しかったぞぉぉぉぉおおおおお!!!!!!!!!!』
「それは良かったぁぁあああああ!!!!! まずは今日の為に切磋琢磨してきてくれた選手の皆に拍手を贈りましょう!!!!! 選手の皆!!! ありがとう!!!!!」
『ありがとう!!!!!!!!!!』
「そしてハプニングがありながらも観客の皆さんと選手の皆さんの安全を守り!!!           私の無茶振りをしっかりと受け止めて下さり!!!!! この学園戦技祭を無事に成功させてくれた学園の教師方!!!!! 本当にありがとうございます!!!!!」
『めちゃくちゃ強かったぁぁぁああああああ!!!!!!!!!!』
「そしてそして!!! 今回の第一回学園戦技祭の実況役という大役を務めさせていただいたのは!!!!! わたくしスティーブンと!!!!!」
「コールです」
「コールさんでお送りしましたぁぁああああ!!!!!」
『ありがとおおおおおおおおおおおう!!!!!』

 スティーブンさん、ああいう司会進行役の時はダジャレとか言わないんだよなぁ。仕事は真面目にしている所も何だか好感が持てる人だ。

「では、満を持して!!! そんな中で勝ち上がってきた誰がどう見てもたしかに強い者達を!!!!! 彼ら彼女らにあらん限りの称賛を贈りましょぉぉおおぉおお!!!!!」
『うおぉぉぉおおぉおおおおぉおお!!!!!!!!!!』

 観客の人達も最後の声を振り絞るように

「では早速参りましょう!!! 第3位!!! 今日、数々の屈強な選手達を確かな技術と圧倒的なパワーで切り抜けてきた王国の華であり要ともいえるこの御方!!! メア・グロガロス・フォープレイ・ヨーダン様ァァァアアアアア!!!!!」
『来たぁぁぁあああああああああ!!!!!』
『メア様ぁぁあああああ!!!!!』
『うおおおおぉぉぉぉおおおおお!!!!!』

 流石ヨーダン王国の華、メア様だ。未だに全然関わったことはないけれど、試合を見てると確かに強さが分かる人だった。

「メア・グロガロス・フォープレイ・ヨーダン様には銅メダルを授与させていただきます!!!!! こんな可憐でお美しい方が強いなんて神は何物も与えすぎです!!!!! いえ、与えられるべきお方なのです!!!!! 今後ともヨーダン王国の平和を期待しております!!!!! 第3位はメア・グロガロス・フォープレイ・ヨーダン様でしたぁぁあああ!!!!!」
『うおぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!』

 王女が第3位って、本当に凄いな。確かメア様のお兄さんである皇太子様もびっくりするくらい強かったんだよな。公爵家も強かったりするし、この王国の上の人たちは強い人しかいないんだろうか。

「それでは第2位の発表です!!!!! 第2位!!! 学生でありながらSランク冒険者の称号を持ち!!!!! 平均試合決着時間が20秒!!!!! 剣で魔法を文字通り斬ると言ったどう考えてもおかしい人物!!!!! ストライクゥゥゥゥゥゥゥウウウ!!!!!!!!!!」
『強かったぞぉぉぉぉおおおおお!!!!!』
『惜しかったぁぁあああああああ!!!!!』
『ストライク様ぁぁぁあああああ!!!!!』

 ストライク先輩、原作でもクレジアントが勝った場合2位のキャラ。しかし、ゲームでは難関ポイントと呼ばれるほどに苦戦するプレイヤーが現れたストライク先輩。やはり、現実でも本当に強かった。

「ストライク選手には銀メダルを授与させていただきます!!!!! 本当に強くて観客の皆さんの目をさらっていっていましたね!!!!! 今回は悔しい結果となってしまいましたが、その実力は確かでした!!!!! 今後の活躍にも期待です!!!!! 第2位はストライク選手でしたぁぁぁあああ!!!!!」
『うおぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!』

 ストライク先輩に関してはもう僕からは何もいう事が無い。強さは実際に戦ってみた僕が一番体感してるし、実績からもどう考えても強いって一目でわかるからね。

「それでは、第1位の発表です!!!!!!!!!!」
『来たァァァァァアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!』
「第1位!!!!!!!!!! 魔法と剣術を正に自在に操り!!! 数々の工夫を凝らした魔法、技、そして戦略を使い!!! 一年生ながら昨日に引き続き上級生を含む数多の選手を打ち負かした!!! 今大会で称えられなければどう考えてもおかしい男!!!!! クライト・フェルディナント・レンメルゥゥゥゥウウウウウウ!!!!!!!!!!」
『キタぁァァァアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!』
『最強の一年坊おおおおおおお!!!!!!!!!!』
『クライトくーーーーーん!!!!!!!!!!』
『お前に賭けてたおかげで借金全額返済出来たぁぁあああ!!!!!!!!!!』

 おいおい。歯痒い言葉たちの中に誰か分からないけれどやばい事言わない。

 僕は表彰台の真ん中に上る。普通に高くて結構頑張らないと登れなかった。こんな所で魔法を使うわけにもいかないから自力でよじ登る。

「クライト選手には金メダルとトロフィーを授与させていただきます!!!!!」

 内心凄くドキドキしながら金メダルを首に掛けてもらう。戦っている時の倍以上は心臓が鳴っている。あんまりこういうの慣れてないんだよ………

「そしてその上で………優勝者であるクライト選手にはヨーダン国王様からのお言葉をいただいております!!!」

 えっ

「お手紙を頂戴しておりますので、わたくしスティーブンが責任を持って読ませていただきます!!! 『第一回学園戦技祭の優勝者に向け、この度の戦績において、余からも賞賛を贈ろうと思う。その上で、優勝者が一番近い将来で持つことになる爵位の一つ上の階級を授けたい。今後もヨーダン王国の平和と発展に貢献して貰いたい。』とのことです!!! 今回の優勝者はクライト選手なので、クライト選手には現時点で男爵に陞爵しょうしゃくされる形となります!!!」

 ………???
 急すぎてわかんないんだけど、何で僕は急に爵位貰ってるの?

「いやぁ!!!!! 今大会は波乱万丈がありながらも選手の皆さんは良くがんばって下さいました!!!!! 観客の皆さんも起こしいただいてありがとうございます!!!!! さて、そろそろ時間も時間となっておりますので終わりにしたいと思います!!!!! 本日はどうも有難うございましたぁぁぁあああああ!!!!!」
『ありがとおぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!』
「今一度!!! 全選手の皆さんに拍手をお贈り致しましょう!!!!!」
『うぉぉおおおおおおおお!!!!!』

 僕が困惑している間に学園戦技祭はスティーブンさんによって締めくくられた。徐々に観客の人達が席から立っていく。僕達はもう戻ってもいいのかな?

「あなた」
「え、あ、はい。なんでしょう。メア・グロガロス・フォープレイ・ヨーダン様!」

 僕と同じく未だに表彰台から降りるタイミングを見失っている王女様に突然声を掛けられた。前世の僕はメア様を呼び捨てにしていたけれど、今はそういう分けにもいかない。貴族ではない、王族なのだ。学園で身分制度が殆ど関係ないと言っても王族は違う。いや、正確には王族にも適応されるけれど、皆が敬意を払っている。

「そう畏まらなくても良いです。私の事はメアと気軽に呼んで下さっても大丈夫ですのよ?」
「いえ、わたくしがメア・グロガロス・フォープレイ・ヨーダン様とお話をすること自体が大変恐縮ですので!」
「そうですか?では呼びやすい名前で呼んで下さいまし」

 なんていうかナイパーが言っていたことが分かるな。身分の高い人に敬語以外を使うなんて本人が許可していたとしてリスクが高すぎる。こんな気持ちだったのか………なんかナイパーには申し訳ない!

「で、ではヨーダン様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「えぇ。好きに呼んでくれて構いません」
「はい。そ、それでヨーダン様。ご用件は如何でしょうか?」
「いいえ、特にないですよ。ただそこまで強いあなたに興味があるだけです。そういう意味でストライクさんにも興味がありますけれど………」

 ふと、メア様とは逆に位置する僕の隣を見るとストライク先輩の影は無くなっていた。いや、もうフィールドから出ていこうとしていた。そして一瞬振り返って、僕に『バイバーイ』という風に手を振ったあと見えなくなった。ストライク先輩は、面倒だと思ったのか即離脱してしまったし………僕はどうしたらいいんだ………!!!

 また心臓がどきどきしてきた。それは恋による胸の高鳴りなんかでは無い。『ミスったら死ぬ』という、言ってしまえばクレジアントやストライク先輩と対峙した時に似た感情が僕の心には浮かびあがって来る。

「まあそれは良いんです。一つお聞きしたいことがあって」
「あ、はい。わたくしで良ければなんでもお聞きになさってください」
「ありがとう。えっと、あなたは魔法を沢山使っていたでしょう?あれって………どうやるの?」
「え、ええとですね………どれを教えたらいいでしょうか?」
「うう、色々教えて貰いたいのですけれど………駄目でしょうか?」

 いや、ダメじゃない。ダメじゃないけれど………そう言うことじゃなくて、僕としては王女様に教えて危険な事になったら責任を負いきれないからどうしようかを悩んでるだけなんだ………
 でもこんなことを馬鹿正直に言ったら高確率で首ちょんぱなので華麗に嘘を吐いていこう。世の中上手く生きるためには時には正直に生きない事だって大事だ。

「いえ、決してそんなことはございません。ただわたくしから、教えることが出来ることなんて限られていますし、ヨーダン様は私の扱うどの魔法を習得されたいのかが私程度の物には理解できなかったのです。申し訳ありません」
「あ、いえ、そんな自分を卑下しないでください。私も気まずいでしょう?」

 『ふふっ』とメア様は笑う。とっても可憐なのだが、僕にはそんなことを気にしている余裕は全くと言っていいほど無かった。

「じゃあこうしませんか?私がクライト君の爵位をもう一段階上げることをお父様に頼んでみますので、長期休暇が終わったら私に学校で魔法を教えてくれますか?」
「え。あ、その………爵位とかは全然しなくて大丈夫です!あーそうですね、では長期休暇終わったら私にできることでしたらお教えいたしますので!」
「本当ですか!やった、ありがとうございます!それでは、また数十日後お会いしましょうね!」

 そう言い残してコツ、コツとやや厚めな靴底を鳴らして行ってしまった。奇しくも僕の心臓のバク、バクという音と合っている。メア様が聞こえない位まで離れてから僕はため息を吐く。なんか、練習することになっちゃったし………

 メア様がフィールドを出る時にボディーガードみたいな人が隣に一瞬で付いた。それをぼうっと眺めていると、奥の方に僕のチームメイトとパートナーが居た。

 欲を言うと見てないで助けてほしかったな。
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