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第2章 戦技祭編
第28話 対戦は漸く
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時間が過ぎていく。遂にこの時が来た。今頃スタグリアンとか、マリスタンとか、キュールはどうなっているかな?ユーリアはさっき、また試合に勝ってた所を見たけど………よし。うだうだしてられない、行こう。
「さぁぁぁぁああああああ!!!!! 皆さんお待ちかねの試合が遂にやってきましたよォォォオオオ!!!!! 戦うのはこの二人!!! クライト選手とクレジアント選手だぁぁぁああ!!!!!」
クレジアントとは向かいの入口から入場する。チームメンバーの3人が居た時よりも、少しフィールドへ出ていくのに勇気が必要だった。でも、さっきドーナツをくれたクレジアントの優しい部分を思い出して一歩踏み出す。
踏み出した瞬間、頭痛がした。それはクレジアントによるものではない。昨日と同じ、空気の魔力が揺れたような………
「まずはクライト選手!!! 昨日のチーム戦優勝チームのリーダーであり、人に向けるべきではない超高レベルの魔法を一人で発動してコンマ秒で魔人を倒し、更には見たこともない剣術で相手を圧倒!!!!! 余りの強さに1回戦目のパルナ選手からクレジアント選手までの選手は全員棄権!!! トーナメントから一気に20人程を心を打ち砕いて、戦わずしてここまで上がってきた神童です!!!!!」
なんか文字起こししたらメチャクチャ恥ずかしい文章になりそうな言葉を言うのは止めてほしい。これで僕が負けたりしたら、もうそれは他人様に顔向けできないじゃん。褒めてもらえるのは嬉しいけど………限度ってもんがある。
「対するクレジアント選手!!! クライト選手に負けず劣らず今日、数々の選手の心をズッタズタにしてきたいわばバーサーカー!!!!! 冷静沈着で綺麗な立ち回りをするのかと思いきや!!! 圧倒的魔力量から打ち出されるあまりに多い数の魔法で多勢に無勢と言われるようなことをしたり、剣を一振りして一発KOするなど今日の『魅せプレイ』は留まることを知らないィィィィイイイイイ!!!!!」
あ、良かった。クレジアントも同じような説明されてる。これで対等な立ち位置になったね。でも
「負けないから」
「いいね、全力で戦おう」
お互いにグータッチを交わす。もうクレジアントと対面するのは3度目だからか、緊張もそこまでしていない。しっかりとしたコンディションで戦いに臨めそうだ。
「そして!!! 今回の本当に驚くべきところは!!! クライト選手・クレジアント選手両方ともが1年生であるという事だぁぁぁぁああ!!!!! さぁ、ここで急遽通りがかった学園教職員の方に聞いてみましょう!!!!!」
『やめとけーーーーー!!!!!』
観客が野次を飛ばすが、スティーブンさんはマイクを持って小走りでインタビューしに行く。
「先生!!! お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか!!!」
「え、えっと。ナヴァール・センス・ストルフです。こんにちは」
「なるほどナヴァール先生!!! この試合ズバリ!!! どちらが勝つと思いますか!!!???」
ナヴァール先生懐かしい。Bクラスに一番最初に推薦したのがナヴァール先生だったな………そのおかげで、今のチームで団体戦優勝できたわけだから。結構感謝はしている。最初こそ、『昇格嫌なんですけど………』とか言っていたけれど。
「そうですね………私が担当したことがある選手がクライト君なので、クライト君かなと。理由はそうですね………彼、未だに限界値が未知数なので」
「なるほどなるほど!!! ではクレジアント選手は!?」
「彼も相当強いと思います。今までの試合をさらっと見てたんですけどポテンシャルが凄いと思います。本当にこの学園には優秀な生徒が集まってきてくれて感謝です」
割と真面目にガッツリとインタビューしている………なんか、僕とクレジアント止めるタイミング見失ってまだグータッチしたままなんですけど~。スティーブンさーん?ちょっと、試合って………
「では最後に一つだけ質問を!」
『スティーブン、もういいって!!!!!』
「ナヴァール先生はクライト選手が昨日使っていた魔法使えますか!!!!!」
「あぁ、はい。使えますよ」
「『えぇぇえええええええええええええ!!!!!?????』」
これには僕達の状態を見てスティーブンさんに声をかけてくれた観客の皆さんも驚いている。いや、まぁ生徒に使えて先生が使えないことは無いでしょう。まぁナヴァール先生っていう魔法の超すごい先生だからこそ使えるのかもしれないけれど、そこら辺はあんまり基準が分かっていない。
「と、という事で!!! 以上、人間兵器ことナヴァール先生でしたァァアアア!!!」
「だ・れ・が、人間兵器ですか」
「うわぁああああああああ!!!??? すいません!!! 仕事柄つい思った事を口に出してしまうんです!!!!! 許してください!!!」
「はぁ、まぁそんなに怒ることでも無いですしいいですけど」
「ありがとうございます!!!!! ………オホン、では気を取り直して神童vs神童の対決が今ここに始まります!!!」
いよいよ始まるようだ。僕とクレジアントは合わせていた拳を放して距離を取る。
「参ります。それでは、試合開始ッ!!!」
刹那、目の前にはクレジアントが居た。
「っ」
「全力、出さないと勝てないよ」
クレジアントの言う通りだ。強い、今までとはレベルが違う。今までは所詮と言っては失礼かもしれないけれどまだ全員学生レベルだったのに、クレジアントはやはり勇者になりうる素質が十分にありすぎる。
荒々しい剣筋はどこか僕のものと同じ雰囲気を感じられる。だけど、そんなことをいちいち考えている余裕は今の僕に無い。とにかく、荒波の様にうねり狂うクレジアントの攻撃を見極め、合わせて、反撃のタイミングを伺わなければならない。
「防いでばっかで大丈夫~?」
「………」
「おおおぉぉぉおっとぉぉぉ!!! あのクライト選手が防戦一方だぞォォォ!!!??? クレジアント選手の強さが伺えます!!!!!」
今じゃない。
「ほらほら~」
「………」
まだだ。
「反撃でもしてみたらどうなの?」
「………」
まだ
「あ~あ、思ったよりなんにもしてこな………」
今
「っ!!!あ、あっぶない………」
「あぁ。惜しい」
「ここでクライト選手反撃ィィィィイイイ!!!!! クレジアント選手の攻勢を崩しました!!!」
流石はクレジアントと言うべきか。あの状態から上体反りで強引に避けて、剣を手として後方にバク転で緊急回避した。でもクレジアントが姿勢を崩したことで攻勢逆転だ。僕は惜しみなく10年間の賜物ともいえる独自の剣術を使っていく。
「残念、攻勢逆転だね」
「ふふ、あはは!!!イイね、やっぱり君は強い!!!」
僕の剣術は他の一般的な流派とは違って、剣術だけで完璧なものにならない。魔法に小道具、何でも使える。だからこそ、普通の人には真似できない独自の剣筋となっているのだ。
「茂塔」
「なっ」
「んんんんんん!!!??? クライト選手の魔法でしょうか!!! 数々の高い土の塔が急に地面から飛び出してきました!!!!!」
僕は剣筋と剣筋の間に魔法を放ちこのフィールドに土で創った塔を生やす。これをすることで後ろに下がっている防戦一方のクレジアントは常に追い込まれないように後ろに注意しなければならない。
「火球百連弾!!!」
「くぅ、ならばこっちも!!!水球百連弾!!!よし、これで………あ、あれ?クライトはどこだ?」
「オオォォォォオオオ!!!??? 流石神童二人の戦いと言うべきでしょうか!!! 今まで見たことも無い数の魔法が宙に浮かび、衝突していきます!!!」
僕が居るのは、空中だ。
茂塔の役割は何もクレジアントの妨害だけではない。これを出した本当の理由。それは僕の剣術において最も大事にしている死角からの攻撃、そこへの始動に繋げられるルートを増やすためにある。
そして、火球百連弾。これはただの目眩まし、ただの煙幕なんてしてもクレジアントは即座に僕の意図に気が付いて、空中で無防備な僕めがけて攻撃を放つに違いない。だから大魔法の部類に入る火球百連弾を使っただけなのだ。
「これで終わりだ………!!!」
「うわっ、危な!!!やるね、クライト」
「実況のわたくしからは何も試合が見えませんが、煙の中では何が起こっているのでしょう!!!!! あ、煙が晴れてきました!!! 二人は剣を交えています!!!!! さて、鍔迫り合いの今押し勝つのはどちらだぁぁぁあ!!!!!」
火球百連弾と水球百連弾が衝突し疑似的な雲が出来ていた中からの見えない攻撃なのに………防がれてしまった。もうきっと同じ手は通用しないだろう。強い、流石クレジアントだ。
「なんで防げた………?」
「ヤマを張ってただけだよ、こんな見えない所から攻撃してくるってことはきっとここから攻撃するんじゃないかなってね」
「化け物かよ………」
「クライトの方が化け物適正高いと思うけど?」
「ん?何か話しているようです!!! が、離れすぎていて全く耳に入って来ません!!!!! あと自分の声がうるさくて何にも分かりません!!!!!」
いや、どう考えても化け物はクレジアントの方だ。僕はただ魔法と剣術を組み合わせて死角から攻撃しただけ。でもクレジアントは初見でその攻撃から耐えきっている。僕でも、もし死角戦法を相手に取られたら普段だったら〈寛容〉1式を使うもん。
「さて、次は俺のターンかな?」
「いいや、まだだね」
僕が攻撃の主導権を握っているからにはそうやすやすとは渡さない………ずっと俺のターン!!!これ、言ってみたかったんだよね。そう言って、新たに剣を鞘から取り出す。
「へぇ~でも俺だって攻撃したいからさッ!!!」
そういってクレジアントが再び一瞬にして肉薄してくる。それを今度は敢えて受け止めない。タイミングを合わせて………薙ぐ。
「うわっ」
「もらった!!!」
「ああああああぁぁぁぁああ!!!!! クレジアント選手!!! これは………」
躱されたものの、予想外の反撃に驚いたのかクレジアントが前方に体勢を崩した。今度こそ、勝った………
「な~んてね。雷槍」
「っ!?」
「うぇぇぇええええ!!!??? 何故その体勢から反撃できるのかぁぁぁあ!!!!! それに加えて何でそれに即座に反応できるのかぁぁぁあ!!!!!」
剣を首に少し傷が付くくらいに押し当て、敗北宣言を促そうとする。しかし、クレジアントが前方に倒れた体を地面に突き刺した剣で支え、体をひねって即座に大魔法である雷槍を撃ってきた。咄嗟に発動させた魔素障壁で少しダメージを軽減するものの、結構なダメージを僕が食らってしまった。
でも。クレジアントに今の浅傷が付いたのは大きい。
すぐさま茂塔で出した塔の上に避難して、回復魔法を行使する。予想外の反撃に対応できなかったのは僕の方だったようだ、普通に悔しい。
「あはは、そんなに俺が弱いわけないでしょ?」
「まぁそうだね」
確かにクレジアントがあんな隙を晒す訳が無い。あれはただの釣りだったのだ。
「それにしてもクライト、君はやっぱりすごいね。これ使った事あるくらい骨のある相手でも全員今ので仕留めてたのに」
「いや、クレジアントの方が凄いでしょ」
「また何か話しています!!! わたくしも混ぜてほしい!!!」
普通、あの体勢から反撃されることなんてさらさら無い。というか、出来ない。僕でも反撃では無くて回避を選択するだろう。まぁ回避くらいは僕でも出来るし。さて、こう言っている間に回復出来た。ちょっとした時間稼ぎにクレジアントが乗っかってくれて助かった。
「回復は出来たかい?」
「お陰様で」
「じゃあ、始めようか」
「うん。そうしよう」
僕は塔から降りて、クレジアントに剣を向ける。クレジアントも僕の方へ剣を真っ直ぐ向ける。
「「いくよ」」
二ウェーブ目の開始だ。
「さぁぁぁぁああああああ!!!!! 皆さんお待ちかねの試合が遂にやってきましたよォォォオオオ!!!!! 戦うのはこの二人!!! クライト選手とクレジアント選手だぁぁぁああ!!!!!」
クレジアントとは向かいの入口から入場する。チームメンバーの3人が居た時よりも、少しフィールドへ出ていくのに勇気が必要だった。でも、さっきドーナツをくれたクレジアントの優しい部分を思い出して一歩踏み出す。
踏み出した瞬間、頭痛がした。それはクレジアントによるものではない。昨日と同じ、空気の魔力が揺れたような………
「まずはクライト選手!!! 昨日のチーム戦優勝チームのリーダーであり、人に向けるべきではない超高レベルの魔法を一人で発動してコンマ秒で魔人を倒し、更には見たこともない剣術で相手を圧倒!!!!! 余りの強さに1回戦目のパルナ選手からクレジアント選手までの選手は全員棄権!!! トーナメントから一気に20人程を心を打ち砕いて、戦わずしてここまで上がってきた神童です!!!!!」
なんか文字起こししたらメチャクチャ恥ずかしい文章になりそうな言葉を言うのは止めてほしい。これで僕が負けたりしたら、もうそれは他人様に顔向けできないじゃん。褒めてもらえるのは嬉しいけど………限度ってもんがある。
「対するクレジアント選手!!! クライト選手に負けず劣らず今日、数々の選手の心をズッタズタにしてきたいわばバーサーカー!!!!! 冷静沈着で綺麗な立ち回りをするのかと思いきや!!! 圧倒的魔力量から打ち出されるあまりに多い数の魔法で多勢に無勢と言われるようなことをしたり、剣を一振りして一発KOするなど今日の『魅せプレイ』は留まることを知らないィィィィイイイイイ!!!!!」
あ、良かった。クレジアントも同じような説明されてる。これで対等な立ち位置になったね。でも
「負けないから」
「いいね、全力で戦おう」
お互いにグータッチを交わす。もうクレジアントと対面するのは3度目だからか、緊張もそこまでしていない。しっかりとしたコンディションで戦いに臨めそうだ。
「そして!!! 今回の本当に驚くべきところは!!! クライト選手・クレジアント選手両方ともが1年生であるという事だぁぁぁぁああ!!!!! さぁ、ここで急遽通りがかった学園教職員の方に聞いてみましょう!!!!!」
『やめとけーーーーー!!!!!』
観客が野次を飛ばすが、スティーブンさんはマイクを持って小走りでインタビューしに行く。
「先生!!! お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか!!!」
「え、えっと。ナヴァール・センス・ストルフです。こんにちは」
「なるほどナヴァール先生!!! この試合ズバリ!!! どちらが勝つと思いますか!!!???」
ナヴァール先生懐かしい。Bクラスに一番最初に推薦したのがナヴァール先生だったな………そのおかげで、今のチームで団体戦優勝できたわけだから。結構感謝はしている。最初こそ、『昇格嫌なんですけど………』とか言っていたけれど。
「そうですね………私が担当したことがある選手がクライト君なので、クライト君かなと。理由はそうですね………彼、未だに限界値が未知数なので」
「なるほどなるほど!!! ではクレジアント選手は!?」
「彼も相当強いと思います。今までの試合をさらっと見てたんですけどポテンシャルが凄いと思います。本当にこの学園には優秀な生徒が集まってきてくれて感謝です」
割と真面目にガッツリとインタビューしている………なんか、僕とクレジアント止めるタイミング見失ってまだグータッチしたままなんですけど~。スティーブンさーん?ちょっと、試合って………
「では最後に一つだけ質問を!」
『スティーブン、もういいって!!!!!』
「ナヴァール先生はクライト選手が昨日使っていた魔法使えますか!!!!!」
「あぁ、はい。使えますよ」
「『えぇぇえええええええええええええ!!!!!?????』」
これには僕達の状態を見てスティーブンさんに声をかけてくれた観客の皆さんも驚いている。いや、まぁ生徒に使えて先生が使えないことは無いでしょう。まぁナヴァール先生っていう魔法の超すごい先生だからこそ使えるのかもしれないけれど、そこら辺はあんまり基準が分かっていない。
「と、という事で!!! 以上、人間兵器ことナヴァール先生でしたァァアアア!!!」
「だ・れ・が、人間兵器ですか」
「うわぁああああああああ!!!??? すいません!!! 仕事柄つい思った事を口に出してしまうんです!!!!! 許してください!!!」
「はぁ、まぁそんなに怒ることでも無いですしいいですけど」
「ありがとうございます!!!!! ………オホン、では気を取り直して神童vs神童の対決が今ここに始まります!!!」
いよいよ始まるようだ。僕とクレジアントは合わせていた拳を放して距離を取る。
「参ります。それでは、試合開始ッ!!!」
刹那、目の前にはクレジアントが居た。
「っ」
「全力、出さないと勝てないよ」
クレジアントの言う通りだ。強い、今までとはレベルが違う。今までは所詮と言っては失礼かもしれないけれどまだ全員学生レベルだったのに、クレジアントはやはり勇者になりうる素質が十分にありすぎる。
荒々しい剣筋はどこか僕のものと同じ雰囲気を感じられる。だけど、そんなことをいちいち考えている余裕は今の僕に無い。とにかく、荒波の様にうねり狂うクレジアントの攻撃を見極め、合わせて、反撃のタイミングを伺わなければならない。
「防いでばっかで大丈夫~?」
「………」
「おおおぉぉぉおっとぉぉぉ!!! あのクライト選手が防戦一方だぞォォォ!!!??? クレジアント選手の強さが伺えます!!!!!」
今じゃない。
「ほらほら~」
「………」
まだだ。
「反撃でもしてみたらどうなの?」
「………」
まだ
「あ~あ、思ったよりなんにもしてこな………」
今
「っ!!!あ、あっぶない………」
「あぁ。惜しい」
「ここでクライト選手反撃ィィィィイイイ!!!!! クレジアント選手の攻勢を崩しました!!!」
流石はクレジアントと言うべきか。あの状態から上体反りで強引に避けて、剣を手として後方にバク転で緊急回避した。でもクレジアントが姿勢を崩したことで攻勢逆転だ。僕は惜しみなく10年間の賜物ともいえる独自の剣術を使っていく。
「残念、攻勢逆転だね」
「ふふ、あはは!!!イイね、やっぱり君は強い!!!」
僕の剣術は他の一般的な流派とは違って、剣術だけで完璧なものにならない。魔法に小道具、何でも使える。だからこそ、普通の人には真似できない独自の剣筋となっているのだ。
「茂塔」
「なっ」
「んんんんんん!!!??? クライト選手の魔法でしょうか!!! 数々の高い土の塔が急に地面から飛び出してきました!!!!!」
僕は剣筋と剣筋の間に魔法を放ちこのフィールドに土で創った塔を生やす。これをすることで後ろに下がっている防戦一方のクレジアントは常に追い込まれないように後ろに注意しなければならない。
「火球百連弾!!!」
「くぅ、ならばこっちも!!!水球百連弾!!!よし、これで………あ、あれ?クライトはどこだ?」
「オオォォォォオオオ!!!??? 流石神童二人の戦いと言うべきでしょうか!!! 今まで見たことも無い数の魔法が宙に浮かび、衝突していきます!!!」
僕が居るのは、空中だ。
茂塔の役割は何もクレジアントの妨害だけではない。これを出した本当の理由。それは僕の剣術において最も大事にしている死角からの攻撃、そこへの始動に繋げられるルートを増やすためにある。
そして、火球百連弾。これはただの目眩まし、ただの煙幕なんてしてもクレジアントは即座に僕の意図に気が付いて、空中で無防備な僕めがけて攻撃を放つに違いない。だから大魔法の部類に入る火球百連弾を使っただけなのだ。
「これで終わりだ………!!!」
「うわっ、危な!!!やるね、クライト」
「実況のわたくしからは何も試合が見えませんが、煙の中では何が起こっているのでしょう!!!!! あ、煙が晴れてきました!!! 二人は剣を交えています!!!!! さて、鍔迫り合いの今押し勝つのはどちらだぁぁぁあ!!!!!」
火球百連弾と水球百連弾が衝突し疑似的な雲が出来ていた中からの見えない攻撃なのに………防がれてしまった。もうきっと同じ手は通用しないだろう。強い、流石クレジアントだ。
「なんで防げた………?」
「ヤマを張ってただけだよ、こんな見えない所から攻撃してくるってことはきっとここから攻撃するんじゃないかなってね」
「化け物かよ………」
「クライトの方が化け物適正高いと思うけど?」
「ん?何か話しているようです!!! が、離れすぎていて全く耳に入って来ません!!!!! あと自分の声がうるさくて何にも分かりません!!!!!」
いや、どう考えても化け物はクレジアントの方だ。僕はただ魔法と剣術を組み合わせて死角から攻撃しただけ。でもクレジアントは初見でその攻撃から耐えきっている。僕でも、もし死角戦法を相手に取られたら普段だったら〈寛容〉1式を使うもん。
「さて、次は俺のターンかな?」
「いいや、まだだね」
僕が攻撃の主導権を握っているからにはそうやすやすとは渡さない………ずっと俺のターン!!!これ、言ってみたかったんだよね。そう言って、新たに剣を鞘から取り出す。
「へぇ~でも俺だって攻撃したいからさッ!!!」
そういってクレジアントが再び一瞬にして肉薄してくる。それを今度は敢えて受け止めない。タイミングを合わせて………薙ぐ。
「うわっ」
「もらった!!!」
「ああああああぁぁぁぁああ!!!!! クレジアント選手!!! これは………」
躱されたものの、予想外の反撃に驚いたのかクレジアントが前方に体勢を崩した。今度こそ、勝った………
「な~んてね。雷槍」
「っ!?」
「うぇぇぇええええ!!!??? 何故その体勢から反撃できるのかぁぁぁあ!!!!! それに加えて何でそれに即座に反応できるのかぁぁぁあ!!!!!」
剣を首に少し傷が付くくらいに押し当て、敗北宣言を促そうとする。しかし、クレジアントが前方に倒れた体を地面に突き刺した剣で支え、体をひねって即座に大魔法である雷槍を撃ってきた。咄嗟に発動させた魔素障壁で少しダメージを軽減するものの、結構なダメージを僕が食らってしまった。
でも。クレジアントに今の浅傷が付いたのは大きい。
すぐさま茂塔で出した塔の上に避難して、回復魔法を行使する。予想外の反撃に対応できなかったのは僕の方だったようだ、普通に悔しい。
「あはは、そんなに俺が弱いわけないでしょ?」
「まぁそうだね」
確かにクレジアントがあんな隙を晒す訳が無い。あれはただの釣りだったのだ。
「それにしてもクライト、君はやっぱりすごいね。これ使った事あるくらい骨のある相手でも全員今ので仕留めてたのに」
「いや、クレジアントの方が凄いでしょ」
「また何か話しています!!! わたくしも混ぜてほしい!!!」
普通、あの体勢から反撃されることなんてさらさら無い。というか、出来ない。僕でも反撃では無くて回避を選択するだろう。まぁ回避くらいは僕でも出来るし。さて、こう言っている間に回復出来た。ちょっとした時間稼ぎにクレジアントが乗っかってくれて助かった。
「回復は出来たかい?」
「お陰様で」
「じゃあ、始めようか」
「うん。そうしよう」
僕は塔から降りて、クレジアントに剣を向ける。クレジアントも僕の方へ剣を真っ直ぐ向ける。
「「いくよ」」
二ウェーブ目の開始だ。
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