オメガバース物語 ヤクザver.

本章

64話

-紬side-

ずっとどこか不安だった。
近くにいるようで自分にとって遠い存在。
少しでも近づきたい。
そう考えていた時、蓮さんが煙草を吸っていたのを思い出した。
蓮さんと一緒だという共通するものが欲しかったんだ。
とっさに思いついて言ってみたもののはぁ？、という低い声の一言で一瞬にして言わなければよかったという後悔が押し寄せる。

「れ、蓮さんだって吸ってるじゃん！」

「俺はいいんだよ。お前はまだ未成年だろうが。」

「そうだけど！でも…！そういうことを言いたいんじゃなくて。」

確かにそう言われれば煙草は決して吸ってもいいわけでもなければそれを易々と承諾もしてくれないだろう。
言葉に詰まり何も言い返せなくなるとキラッと光るものが目に止まった。
これだ！
これなら…と思い、つい蓮さんの耳に手を伸ばす。

「ねぇ、やっぱり煙草はいいや。ピアス開けたい。」

「ん？ピアス？」

さっきまで煙草の話をしていたためいきなりピアスを開けたいと言われ一瞬驚いていた。

「うん。開けたい。」

蓮さんは んー…と曖昧な返事をして耳たぶを触ってくる。
妙に触り方がねちっこい。
逃げるように首をよじる。

「ん…蓮、さんっ…くすぐったい…」

ゾワゾワっと蓮さんから触られた所から熱を帯びていく。
変な気分になっていき、蓮さんと声をかけようと目を合わせると蓮さんはパッと手を離しお風呂場の方に行ってしまった。