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お掃除をしていたら幸せになった、片付け下手なOLさんのおはなし(5)
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「ない、ない、見つからない」
困り果てたような声が聞こえています。
そこには、やっぱり腕まくりする佳苗さんの姿がありました。けれど、頭を抱えているのは佳苗さんではありません。佳苗さんによく似た女の子が、涙目で引き出しに頭を突っ込んでいます。
「きらきらシール、ちゃんと引き出しにしまっておいたのに」
「あらあら、お掃除妖精さんが持って行っちゃったみたいね。仕方がないから、お片付けしながら一緒に探しましょうか」
「うん」
佳苗さんが後輩くんと結婚したあと、お掃除妖精さんはターゲットを佳苗さんから、佳苗さんの娘さんに変えたようです。佳苗さんの娘さんはおもちゃや文房具を、しょっちゅう部屋の中でなくしてしまいます。
「もう、妖精さんったら!」
「頑張ってみつけようね。これが終わったら、パパの特製オムライスが食べられるよ」
頬をふくらませて怒っている女の子を見ながら、佳苗さんはごみ袋を手に取りました。
佳苗さんのおうちは今でもちょっぴり散らかっています。けれど、かつて佳苗さんが暮らしていた部屋とはどこか雰囲気が違うのです。誰かと一緒にするお片付けは、佳苗さんが思っていたよりもずっとずっと楽しいものでした。
雪が降る冬の日、家族の声があふれる家の中は不思議なほど暖かくて気持ちがよいのでした。
困り果てたような声が聞こえています。
そこには、やっぱり腕まくりする佳苗さんの姿がありました。けれど、頭を抱えているのは佳苗さんではありません。佳苗さんによく似た女の子が、涙目で引き出しに頭を突っ込んでいます。
「きらきらシール、ちゃんと引き出しにしまっておいたのに」
「あらあら、お掃除妖精さんが持って行っちゃったみたいね。仕方がないから、お片付けしながら一緒に探しましょうか」
「うん」
佳苗さんが後輩くんと結婚したあと、お掃除妖精さんはターゲットを佳苗さんから、佳苗さんの娘さんに変えたようです。佳苗さんの娘さんはおもちゃや文房具を、しょっちゅう部屋の中でなくしてしまいます。
「もう、妖精さんったら!」
「頑張ってみつけようね。これが終わったら、パパの特製オムライスが食べられるよ」
頬をふくらませて怒っている女の子を見ながら、佳苗さんはごみ袋を手に取りました。
佳苗さんのおうちは今でもちょっぴり散らかっています。けれど、かつて佳苗さんが暮らしていた部屋とはどこか雰囲気が違うのです。誰かと一緒にするお片付けは、佳苗さんが思っていたよりもずっとずっと楽しいものでした。
雪が降る冬の日、家族の声があふれる家の中は不思議なほど暖かくて気持ちがよいのでした。
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――――――――
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