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「もちろん、これも魔石だ。男避け、ヘビやフクロウ、キツネなんかの天敵避け、それから万が一にも恋敵になられたらたまらないからリス避けだってかけている。何が起きても怪我をしないように術を構築していたはずが、しっぽが切れるなんて」
「すみません、あれは『切られた』のではなく、自分が逃げるために『切った』ので、術でも防ぎようがなかったんだと思います」
「いや、次からはそれも防げるように努力する。そもそも俺がもっとちゃんと守っていれば……。もうあんな思いをするのはこりごりだ」

 今まで結構無茶なことをやっても平気だったのは、リスならではの身体能力とかじゃなくって、めちゃくちゃ坊っちゃんに守られていたんじゃ……。え、坊っちゃん、怪我をしないために屋敷の外に出るなとかはいやだからね?

 あとさ、それほどの魔術を構築、保存し、展開できる魔石ってなんだよ。

「……もしかして、これ高いんですか?」
「……それを聞くか? 好きな女に求婚するんだ、それなりに見栄をはらせてくれ」
「……」
「おい、目をあけたまま死んだふりをするんじゃない」

 はい、すみません。むしろ聞くのが怖くなってきたよ。

「でも、私なんかで本当にいいのでしょうか」
「なんだ、俺との結婚は不満か」
「そんな!」
「俺はお前の気持ちが聞きたい」

 不満なわけないじゃないか。

「坊っちゃんがどなたかと結婚しても、その幸せを見守りたいと思うくらいには、ずっと好きでしたよ」

 珍しくはにかむ坊っちゃんは、今まで私が見たなかで一番幸せそうな顔をしていた。

「結婚するんだ、いい加減に坊っちゃんはやめてくれ」
「これは、慣れといいますか」
「まずは、名前呼びの練習だ」
「グ……」
「ほらどうした、グラントだ、言ってみろ」
「グ……ぐええええええ、むりいいいいいい!!!」
「お前は本当に失礼な奴だな!」

 それから、玉の輿にのった娘の噂を聞いた実の両親が騒ぎ立てたり、第二王子が入れ込んでいたお嬢さんが明後日の方向に暴走を始めたり、私たちの恋物語をもとにした歌劇を見た教皇さまが屋敷を訪ねてきたりするんだけれど、これはまた別のお話。
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