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それから夜会までの間、わたしはおふたりと一緒に様々な場所に出入りすることになりました。
「先生、今日はアクセサリーを買いに行きましょう」
「まあ、でも……」
「ううう、先生は一緒にお出かけしてくださらないの?」
そんな、涙目で上目遣いは卑怯です!
思わずギルバートさまを見つめて助けを乞えば、最後通牒が出されました。
「必要経費として新しく購入するのが嫌なのだということであれば、母が嫁入り道具として持ってきた揃いのアクセサリーをあなたに貸し出すことになる。まあ、あなたがつけてくれるなら母は大喜びするだろうな」
「すみません、どうぞお店で購入してください。よろしくお願いいたします」
お母さまの嫁入り道具をお借りするのは、悪女ではなく婚約者さんの役割ではありませんか? 無理です。ギルバートさまのお母さまがお優しい方だからこそ無理です。もう少し、お手柔らかにお願いします。
お店についても、息のあったふたりの攻撃は緩むことがありません。
「先生、どうぞ好きなものを選んでください!」
「ちょっと恐れ多くて選べないですね」
「じゃあこれなんかどうですか? お兄さまの瞳と同じ色で、先日仕立てたドレスにもよく似合います!」
「ひえっ」
それは、契約違反に繋がるのでは? 潰れたかえるのような声をあげれば、後ろからギルバートさまが近づいてきました。内緒話をするためだけに、腰に手を回すのはやめてくださいっ。
「悪女らしく、『ここからここまで全部欲しいの』という有名なアレをやるつもりか」
「そんな台詞が言えるなら、生まれたての子鹿みたいに手足が震えたりしません!」
「悪女を目指すのだろう? 好きでもない男に宝石をねだることなど、造作もないはずだ」
そ、それは、買えと言うことですか?
妹君がおすすめしてくれたものを指差せば、店内がどよめきました。え、なに、わたし、失敗したの? しかもギルバートさま、どうしてそんなに悪そうに笑うんですか!
「レンタル悪女」という仕事は辛いものだと覚悟していましたが、湯水のようにお金を使われて胃が痛いです。お金持ちの暮らしは体に悪いとわかりました。
「用事が済んだなら、食事にしよう」
「お兄さま、ありがとう」
「ええと、それではわたしはこの辺で」
「もちろん先生も一緒に行きましょうね」
ですよねー。天然の天使、強い。
「先生、今日はアクセサリーを買いに行きましょう」
「まあ、でも……」
「ううう、先生は一緒にお出かけしてくださらないの?」
そんな、涙目で上目遣いは卑怯です!
思わずギルバートさまを見つめて助けを乞えば、最後通牒が出されました。
「必要経費として新しく購入するのが嫌なのだということであれば、母が嫁入り道具として持ってきた揃いのアクセサリーをあなたに貸し出すことになる。まあ、あなたがつけてくれるなら母は大喜びするだろうな」
「すみません、どうぞお店で購入してください。よろしくお願いいたします」
お母さまの嫁入り道具をお借りするのは、悪女ではなく婚約者さんの役割ではありませんか? 無理です。ギルバートさまのお母さまがお優しい方だからこそ無理です。もう少し、お手柔らかにお願いします。
お店についても、息のあったふたりの攻撃は緩むことがありません。
「先生、どうぞ好きなものを選んでください!」
「ちょっと恐れ多くて選べないですね」
「じゃあこれなんかどうですか? お兄さまの瞳と同じ色で、先日仕立てたドレスにもよく似合います!」
「ひえっ」
それは、契約違反に繋がるのでは? 潰れたかえるのような声をあげれば、後ろからギルバートさまが近づいてきました。内緒話をするためだけに、腰に手を回すのはやめてくださいっ。
「悪女らしく、『ここからここまで全部欲しいの』という有名なアレをやるつもりか」
「そんな台詞が言えるなら、生まれたての子鹿みたいに手足が震えたりしません!」
「悪女を目指すのだろう? 好きでもない男に宝石をねだることなど、造作もないはずだ」
そ、それは、買えと言うことですか?
妹君がおすすめしてくれたものを指差せば、店内がどよめきました。え、なに、わたし、失敗したの? しかもギルバートさま、どうしてそんなに悪そうに笑うんですか!
「レンタル悪女」という仕事は辛いものだと覚悟していましたが、湯水のようにお金を使われて胃が痛いです。お金持ちの暮らしは体に悪いとわかりました。
「用事が済んだなら、食事にしよう」
「お兄さま、ありがとう」
「ええと、それではわたしはこの辺で」
「もちろん先生も一緒に行きましょうね」
ですよねー。天然の天使、強い。
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