21 / 29
(20)三川内焼き-5
しおりを挟む
翌日、部長の予想通りに昨日のお客さまが顔を見せた。先日の涙が嘘のように、晴やかな笑顔をしている。ちょうど部長が不在のタイミングだったため、なぜか私が応対することになった。
「昨日は急に泣き出したりしてごめんなさいね」
「いいえ。あの、ご主人とは……?」
「大丈夫よ。ちゃんと話ができたから。家に戻ったらちょうど三時頃だったから、渋る主人を事務所から自宅に呼び戻したの。それで、あのお皿にシースケーキをのせて、コーヒーと一緒に出したのよ。そうしたらなんて言ったと思う?」
「……美味しい、とかでしょうか?」
「『梅月堂の2階のカフェで最初に食べたときもうまかったが、お前が入れてくれたコーヒーと一緒に食べるのが一番うまい』ですって」
お客さまが幸せそうな笑い声をあげると、同時に周囲できゃらきゃらと小さな子どもたちがはしゃぐような声が聞こえた。どうやら甘酸っぱい思い出のために、手を尽くして焼き物を探していたらしい。よかった、唐子たちも持ち主夫婦の仲が円満となってほっとしていることだろう。
「しかも主人ったら、わたしの好物がシースケーキだと思っていたそうなの。笑っちゃうわよね。シースケーキが好きなのはあのひとなのよ。そのくせ、男がケーキを頼むのは恥ずかしいとコーヒーだけを飲むものだから、初デートの日もわたしが頼んだシースケーキを分けてあげたのに」
「ではこれから、お茶の時間が楽しみになりますね」
「ええ、そうね。子どものことにこだわっていたのは、わたしのほうだったのよね。主人は、わたしが一緒ならそれで十分だと言ってくれていたのによ」
熟年夫婦の思いやりが、尊い。目がつぶれそうだ。
「それでね、あのやきもののことなのだけれど、買い取らせていただくことは……」
「ですから、あれは奥さまのものですので! お気になさらず!」
お届けものやさんで預かったお品物を、売り飛ばすような真似をしたら絶対にただでは済まない。不当な利益を得て、死にたくはない。
「そう? いいの?」
「もちろんです!」
よかった、よかった。これでお届けもののご依頼は終了だ。肩の荷が下りたと気を抜く私に、お客さまは良いことを思いついたと声をかけてきた。
「ねえ良かったら、うちの甥っ子と一度、会ってみない?」
「へ?」
「釣書を交換してとか、そういう堅苦しい感じじゃないのよ。ただ、あなたみたいな素敵なお嬢さんがお嫁に来てくれたら、わたしもとっても嬉しいなと思って」
「いえ、あのやきものは本当にお預かりしただけなので! 全然お気になさらず」
お届けもののお礼に金銭授受などありえないと回避行動を取った結果、まさかここにきてちょいちょい噂に聞く取引先の偉い方の息子や親戚を紹介される現象にぶち当たるとは! 伝説の妖怪を目の当たりにしたような気持ちで少し感動してしまったけれど、正直今後のことを考えるとちょっと面倒くさい。
いや、うまくいけばいいのだ。だが、何かあった場合のことを考えると胃が痛くなる。例えば向こうにはすでに結婚を考えるお相手がいて、呼ばれていったはずなのにその場でお断りされるとかね。それはキツい。だいたい、お取引先の偉い方に紹介されたお相手に会うならそれなりの服だって買わないといけないのだし。気軽に、OKと言えるような状況ではない。それに。
『お見合い、するんですか?』
幻聴が聞こえた。なぜかひどくしょんぼりした宅配便のお兄さんが、寂しそうにこちらを見てくる。なぜだ、なぜ女には不自由することのなさそうなお兄さんが捨て猫のような瞳で私を見つめてくるのだ。意味が分からない。え、どうしよう? とりあえず妄想のお兄さんは放っておいて、一応1回くらいは会うべきなの?
なんと答えるべきか私が迷っていると、がたたんっと窓の外で大きな音がした。猫だ。この辺りももちろん地域猫が悠々と暮らしている。繁華街も近いので、祖母の家の近所に住む地域猫たちよりもいいものをもらっているのかもしれない。
「にゃあん」
窓の向こうからやってきた大きな猫が、こちらをのぞき込んでいる。つやつやとして健康的な毛並みが素晴らしい。大きな瞳がきらりと光った。長崎猫らしい「かぎしっぽ」がぱたぱたと犬のように揺れている。
かつて他県出身の友人が長崎に来たときに、「長崎の猫はみんな尻尾を切られたり、踏まれたりしているの?」と心配されたことがあったが、もちろんそんなことはない。長崎の猫は生まれつき、尻尾がお団子のように短かったり、鍵のようにくの字に曲がったりしていることが多いのだ。「かぎしっぽ」や「尾曲がり」猫は、幸運を引っ掛けてやってくると言われている。
このタイミングで猫ちゃんが出てきたということは、お客さまの甥御さんに会ってみるべきなのだろうか。まさかここで、私にも運命のお相手がついに?
「にゃお、うにゃあお、にゃご、にゃああん」
同意しているのか猫ちゃんも激しく私に何かを訴えかけえてくる。ごめん、全然わからないよ。よし、清水の舞台から飛び降りたつもりで会ってみるか? すると、不意に視界から猫ちゃんが消えた。急に静かになったことに驚いていると、来客を告げるチャイムが続けて鳴る。手の空いている同僚がいないようだ。
「すみません、私、ちょっと出てきます」
お客さまに断りを入れて、慌てて入り口に向かうと、なぜか宅配便のお兄さんがいた。走ってきたのか、少しだけ息が荒い。おお、宅配業者で働いていると、飛脚のひとでなくても走り続けることになるのか。
「どうして? ここまで担当区域でしたっけ」
「今日は担当エリアを急遽変わったんですよ」
「ああ、それぞれの体調なんかに合わせて、エリアをお互いに融通することもあるんですね」
「そうですね。今回は絶対に外せない大事な用事でしたので、ちょっと無理を言わせてもらいました」
にこっと笑ったお兄さんの距離が、いつもより妙に近い気がして戸惑った。なんだ、なんだ?
「お見合い、するんですか?」
「へ?」
「僕のデートのお誘いはスルーしちゃうのに、お見合いのお話は受けるんですか? 僕、そんなに真剣みが足りませんでしたか?」
「はい?」
お兄さんが言っている意味がわからない。今までの会話は社交辞令じゃなかった? そもそもどうして、「お見合い」の可能性をお兄さんが知っているのか。訳がわからないまま、目を白黒させていると、様子を見に来たらしいお客さまに突然謝られてしまった。
「あら、悪いことしちゃったわね。ごめんなさい。許してちょうだいな」
「え?」
「お相手の方がいらっしゃるなら、言ってくれてよかったのよ。ごめんなさいね」
「ええと、はい、こちらこそすみません?」
「やきものを譲ってもらったお礼をしようと思ったのに、逆にご迷惑をおかけしちゃったわね。ではお礼とお詫びを兼ねて、食事をごちそうさせてもらうことでいいかしら。お店を予約しておくから、そこの彼と一緒に行ってちょうだいな。日付はいつにしましょうか」
なぜか私を置いて話がとんとん拍子に進んでいく。いやあ、私に恋人はいないんですよ。え、いないはずですよね? 持ち前のコミュニケーション能力で和気あいあいとお客さまと話し始めたお兄さんの横でぼんやりしているうちに、いつの間にか食事もといデートに行くことが決定していた。
「昨日は急に泣き出したりしてごめんなさいね」
「いいえ。あの、ご主人とは……?」
「大丈夫よ。ちゃんと話ができたから。家に戻ったらちょうど三時頃だったから、渋る主人を事務所から自宅に呼び戻したの。それで、あのお皿にシースケーキをのせて、コーヒーと一緒に出したのよ。そうしたらなんて言ったと思う?」
「……美味しい、とかでしょうか?」
「『梅月堂の2階のカフェで最初に食べたときもうまかったが、お前が入れてくれたコーヒーと一緒に食べるのが一番うまい』ですって」
お客さまが幸せそうな笑い声をあげると、同時に周囲できゃらきゃらと小さな子どもたちがはしゃぐような声が聞こえた。どうやら甘酸っぱい思い出のために、手を尽くして焼き物を探していたらしい。よかった、唐子たちも持ち主夫婦の仲が円満となってほっとしていることだろう。
「しかも主人ったら、わたしの好物がシースケーキだと思っていたそうなの。笑っちゃうわよね。シースケーキが好きなのはあのひとなのよ。そのくせ、男がケーキを頼むのは恥ずかしいとコーヒーだけを飲むものだから、初デートの日もわたしが頼んだシースケーキを分けてあげたのに」
「ではこれから、お茶の時間が楽しみになりますね」
「ええ、そうね。子どものことにこだわっていたのは、わたしのほうだったのよね。主人は、わたしが一緒ならそれで十分だと言ってくれていたのによ」
熟年夫婦の思いやりが、尊い。目がつぶれそうだ。
「それでね、あのやきもののことなのだけれど、買い取らせていただくことは……」
「ですから、あれは奥さまのものですので! お気になさらず!」
お届けものやさんで預かったお品物を、売り飛ばすような真似をしたら絶対にただでは済まない。不当な利益を得て、死にたくはない。
「そう? いいの?」
「もちろんです!」
よかった、よかった。これでお届けもののご依頼は終了だ。肩の荷が下りたと気を抜く私に、お客さまは良いことを思いついたと声をかけてきた。
「ねえ良かったら、うちの甥っ子と一度、会ってみない?」
「へ?」
「釣書を交換してとか、そういう堅苦しい感じじゃないのよ。ただ、あなたみたいな素敵なお嬢さんがお嫁に来てくれたら、わたしもとっても嬉しいなと思って」
「いえ、あのやきものは本当にお預かりしただけなので! 全然お気になさらず」
お届けもののお礼に金銭授受などありえないと回避行動を取った結果、まさかここにきてちょいちょい噂に聞く取引先の偉い方の息子や親戚を紹介される現象にぶち当たるとは! 伝説の妖怪を目の当たりにしたような気持ちで少し感動してしまったけれど、正直今後のことを考えるとちょっと面倒くさい。
いや、うまくいけばいいのだ。だが、何かあった場合のことを考えると胃が痛くなる。例えば向こうにはすでに結婚を考えるお相手がいて、呼ばれていったはずなのにその場でお断りされるとかね。それはキツい。だいたい、お取引先の偉い方に紹介されたお相手に会うならそれなりの服だって買わないといけないのだし。気軽に、OKと言えるような状況ではない。それに。
『お見合い、するんですか?』
幻聴が聞こえた。なぜかひどくしょんぼりした宅配便のお兄さんが、寂しそうにこちらを見てくる。なぜだ、なぜ女には不自由することのなさそうなお兄さんが捨て猫のような瞳で私を見つめてくるのだ。意味が分からない。え、どうしよう? とりあえず妄想のお兄さんは放っておいて、一応1回くらいは会うべきなの?
なんと答えるべきか私が迷っていると、がたたんっと窓の外で大きな音がした。猫だ。この辺りももちろん地域猫が悠々と暮らしている。繁華街も近いので、祖母の家の近所に住む地域猫たちよりもいいものをもらっているのかもしれない。
「にゃあん」
窓の向こうからやってきた大きな猫が、こちらをのぞき込んでいる。つやつやとして健康的な毛並みが素晴らしい。大きな瞳がきらりと光った。長崎猫らしい「かぎしっぽ」がぱたぱたと犬のように揺れている。
かつて他県出身の友人が長崎に来たときに、「長崎の猫はみんな尻尾を切られたり、踏まれたりしているの?」と心配されたことがあったが、もちろんそんなことはない。長崎の猫は生まれつき、尻尾がお団子のように短かったり、鍵のようにくの字に曲がったりしていることが多いのだ。「かぎしっぽ」や「尾曲がり」猫は、幸運を引っ掛けてやってくると言われている。
このタイミングで猫ちゃんが出てきたということは、お客さまの甥御さんに会ってみるべきなのだろうか。まさかここで、私にも運命のお相手がついに?
「にゃお、うにゃあお、にゃご、にゃああん」
同意しているのか猫ちゃんも激しく私に何かを訴えかけえてくる。ごめん、全然わからないよ。よし、清水の舞台から飛び降りたつもりで会ってみるか? すると、不意に視界から猫ちゃんが消えた。急に静かになったことに驚いていると、来客を告げるチャイムが続けて鳴る。手の空いている同僚がいないようだ。
「すみません、私、ちょっと出てきます」
お客さまに断りを入れて、慌てて入り口に向かうと、なぜか宅配便のお兄さんがいた。走ってきたのか、少しだけ息が荒い。おお、宅配業者で働いていると、飛脚のひとでなくても走り続けることになるのか。
「どうして? ここまで担当区域でしたっけ」
「今日は担当エリアを急遽変わったんですよ」
「ああ、それぞれの体調なんかに合わせて、エリアをお互いに融通することもあるんですね」
「そうですね。今回は絶対に外せない大事な用事でしたので、ちょっと無理を言わせてもらいました」
にこっと笑ったお兄さんの距離が、いつもより妙に近い気がして戸惑った。なんだ、なんだ?
「お見合い、するんですか?」
「へ?」
「僕のデートのお誘いはスルーしちゃうのに、お見合いのお話は受けるんですか? 僕、そんなに真剣みが足りませんでしたか?」
「はい?」
お兄さんが言っている意味がわからない。今までの会話は社交辞令じゃなかった? そもそもどうして、「お見合い」の可能性をお兄さんが知っているのか。訳がわからないまま、目を白黒させていると、様子を見に来たらしいお客さまに突然謝られてしまった。
「あら、悪いことしちゃったわね。ごめんなさい。許してちょうだいな」
「え?」
「お相手の方がいらっしゃるなら、言ってくれてよかったのよ。ごめんなさいね」
「ええと、はい、こちらこそすみません?」
「やきものを譲ってもらったお礼をしようと思ったのに、逆にご迷惑をおかけしちゃったわね。ではお礼とお詫びを兼ねて、食事をごちそうさせてもらうことでいいかしら。お店を予約しておくから、そこの彼と一緒に行ってちょうだいな。日付はいつにしましょうか」
なぜか私を置いて話がとんとん拍子に進んでいく。いやあ、私に恋人はいないんですよ。え、いないはずですよね? 持ち前のコミュニケーション能力で和気あいあいとお客さまと話し始めたお兄さんの横でぼんやりしているうちに、いつの間にか食事もといデートに行くことが決定していた。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
【台本置き場】珠姫が紡(つむ)ぐ物語
珠姫
キャラ文芸
セリフ初心者の、珠姫が書いた声劇台本ばっかり載せております。
裏劇で使用する際は、報告などは要りません。
一人称・語尾改変は大丈夫です。
少しであればアドリブ改変なども大丈夫ですが、世界観が崩れるような大まかなセリフ改変は、しないで下さい。
著作権(ちょさくけん)フリーですが、自作しました!!などの扱いは厳禁(げんきん)です!!!
あくまで珠姫が書いたものを、配信や個人的にセリフ練習などで使ってほしい為です。
配信でご使用される場合は、もしよろしければ【Twitter@tamahime_1124】に、ご一報ください。
ライブ履歴など音源が残る場合なども同様です。
覗きに行かせて頂きたいと思っております。
特に規約(きやく)はあるようで無いものですが、例えば舞台など…劇の公演(有料)で使いたい場合や、配信での高額の収益(配信者にリアルマネー5000円くらいのバック)が出た場合は、少しご相談いただけますと幸いです。
無断での商用利用(しょうようりよう)は固くお断りいたします。
何卒よろしくお願い申し上げます!!
YESか農家
ノイア異音
キャラ文芸
中学1年生の東 伊奈子(あずま いなこ)は、お年玉を全て農機具に投資する変わり者だった。
彼女は多くは語らないが、農作業をするときは饒舌にそして熱く自分の思想を語る。そんな彼女に巻き込まれた僕らの物語。
今日から俺は魔法少女!?
天野ナギサ
キャラ文芸
いつか変身して町のヒーローになりたい松城京馬。
しかし、現実は甘くない。変身も怪物も現れず中学2年生になった。
そんなある日、怪物と妖精が現れ変身することに!
だが、姿は魔法少女!?
どうする京馬!!
※カクヨム、Nola、なろうにも投稿しております。
超絶! 悶絶! 料理バトル!
相田 彩太
キャラ文芸
これは廃部を賭けて大会に挑む高校生たちの物語。
挑むは★超絶! 悶絶! 料理バトル!★
そのルールは単純にて深淵。
対戦者は互いに「料理」「食材」「テーマ」の3つからひとつずつ選び、お題を決める。
そして、その2つのお題を満たす料理を作って勝負するのだ!
例えば「料理:パスタ」と「食材:トマト」。
まともな勝負だ。
例えば「料理:Tボーンステーキ」と「食材:イカ」。
骨をどうすればいいんだ……
例えば「料理:満漢全席」と「テーマ:おふくろの味」
どんな特級厨師だよ母。
知力と体力と料理力を駆使して競う、エンターテイメント料理ショー!
特売大好き貧乏学生と食品大会社令嬢、小料理屋の看板娘が今、ここに挑む!
敵はひとクセもふたクセもある奇怪な料理人(キャラクター)たち。
この対戦相手を前に彼らは勝ち抜ける事が出来るのか!?
料理バトルものです。
現代風に言えば『食〇のソーマ』のような作品です。
実態は古い『一本包丁満〇郎』かもしれません。
まだまだレベル的には足りませんが……
エロ系ではないですが、それを連想させる表現があるのでR15です。
パロディ成分多めです。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
フリー声劇台本〜モーリスハウスシリーズ〜
摩訶子
キャラ文芸
声劇アプリ「ボイコネ」で公開していた台本の中から、寄宿学校のとある学生寮『モーリスハウス』を舞台にした作品群をこちらにまとめます。
どなたでも自由にご使用OKですが、初めに「シナリオのご使用について」を必ずお読みくださいm(*_ _)m
護堂先生と神様のごはん あやかし子狐と三日月オムライス
栗槙ひので
キャラ文芸
中学校教師の護堂夏也は、独り身で亡くなった叔父の古屋敷に住む事になり、食いしん坊の神様と、ちょっと大人びた座敷童子の少年と一緒に山間の田舎町で暮らしている。
神様や妖怪達と暮らす奇妙な日常にも慣れつつあった夏也だが、ある日雑木林の藪の中から呻き声がする事に気が付く。心配して近寄ってみると、小さな子どもが倒れていた。その子には狐の耳と尻尾が生えていて……。
保護した子狐を狙って次々現れるあやかし達。霊感のある警察官やオカルト好きの生徒、はた迷惑な英語教師に近所のお稲荷さんまで、人間も神様もクセ者ばかり。夏也の毎日はやっぱり落ち着かない。
護堂先生と神様のごはんシリーズ
長編3作目
百合系サキュバス達に一目惚れされた
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
『古城物語』〜『猫たちの時間』4〜
segakiyui
キャラ文芸
『猫たちの時間』シリーズ4。厄介事吸引器、滝志郎。彼を『遊び相手』として雇っているのは朝倉財閥を率いる美少年、朝倉周一郎。今度は周一郎の婚約者に会いにドイツへ向かう二人だが、もちろん何もないわけがなく。待ち構えていたのは人の心が造り出した迷路の罠だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる