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「セーラ、どうしてここをデート場所に選んだ!」
「王国最大のテーマパークだからでございます」

 数日後、バージル殿下と一緒に訪れたのは、我が国が誇る国営テーマパーク通称花園です。なんでも、異世界から召喚された先々代の聖女さまの故郷にある娯楽施設を模したものなのだとか。

 そこは、あちらの世界の高貴な方々も利用されたことがあるほど長い歴史と伝統を持っているそうです。その話にいたく興味を持たれた先々代の国王陛下のご指示で、花園は作られました。

 異世界との技術力の差は、各種魔法でカバーしたようです。魔法って素晴らしい。術式の魔力確保のために、花園の地下で囚人たちが謎の棒を回しながら服役しているという噂もありましたっけ。

「だがしかし、噂によれば」
「『カップルで来ると別れる』という例のアレですか。こちらは王国内でも屈指のレジャースポット。訪れる人数が多ければ、結婚に至らない婚約者や恋人たちもまた増えましょう。そもそも私たちは婚約を解消するのですから、噂がたとえ事実であっても別に構わないのでは?」

 何をおっしゃるのやらという気持ちを隠さずにお話しすれば、慌てて目をそらされてしまいました。

「それはそうだが……。とはいえ、このような警備のしにくい場所は好ましくなかろう」
「殿下の大好きな、平民ごっこでぶらり下町散歩よりもよほど安全かと。本日園内にいらっしゃる皆さまは、どなたも身元がはっきりされている方々ですので」
「セーラが集めたのか?」
「正確に言えば、父が園遊会という形でお招きしました」

 聖女さまの故郷の娯楽施設も、もとは庭園であったところを遊興施設に改築したそうです。そのため、ここも庭園として楽しめるような美しい作りになっています。

 それに、さすがにここを一人占め……ならぬふたり占めするのはあまり外聞がよろしくないでしょうしね。

「ですから、本日は貸し切りにしておりますの。ご安心くださいまし」
「貸し切りとは、さすが辺境伯殿と言ったところか」
「あら、費用につきましては私と殿下は折半でございますよ。何と言っても園遊会はあくまで建前。本題は私たちのデートでございますから。私の方は、今まで積み立てたままになっておりました王子妃教育の費用から精算予定です。殿下の分は殿下の予算から。足が出た分についていはご自身で働いて支払うようにと陛下から伝言を預かっております」
「陛下から?」
「さようでございます。その場合は、園内での清掃作業員としての時給換算で返却する形になるそうです。返済はトイチだそうですので、お気をつけくださいませ」
「どこの闇金だ」

 バージル殿下が、少し苦しそうにみぞおちの辺りを押さえていらっしゃいます。

「まあ、殿下。もしかして『ドキドキ』してくださいましたか?」
「これは、『胸がドキドキ』と言うか『胃がキリキリ』が正しい気がする」

 なおも苦しそうに俯かれる殿下の手を優しく引き寄せてみました。デートですもの、普段より密着度が高くても構いませんよね?

「アトラクションが始まりましたら、きっと気持ちも切り替わります。さあ、参りましょう!」
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