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「さあ、ダナ、殿下。授業の空き時間を無為に過ごしていてはもったいないです。せっかくですから、筋トレメニューをこなしましょう」
「はい、喜んで!」
「なぜ、俺までやらなきゃいけないんだ! 休み時間くらい脳を休めさせてくれ」
「殿下の脳みそは、ただでさえスリープモードですのに、これ以上休ませる必要がどこにあるのでしょう」
「お前、いつか不敬罪になるからな」
不満を垂れ流す王太子の横で、アントニアとダナは汗を流していた。
「呪いに打ち勝つには、一に筋トレ、二に筋トレ、三四がなくて、五に筋トレと申し上げたはずです」
「そんな脳筋理論は知らん!」
「脳みそが筋肉で守られておらず無防備ですから、すぐにひとに騙されるのでは?」
「脳筋が一般的だと思うなよ! だいたいお前の理論は間違っている。騎士団の男にも呪いにひっかかった奴がいただろう」
呪いの効果を確かめるために筋肉自慢の男たちを集めてみたのだが、ダナにメロメロになり、執拗にラッキースケベを発動させた変態野郎どもがいたのだ。イグネイシャスは、だから筋トレは無意味だと結論づけたいらしい。
「アレは追い込みが足りないのです。特別コースを受講させたら、しっかりと騎士道に目覚めた上に、筋肉の素晴らしさを語るようになりましたよ」
「もうやだ、洗脳じゃん」
「殿下。諦めて僕たちと一緒に筋トレいたしましょう。僕の母も筋トレを始めてから、呪いから解放されたようで毎日笑顔で走り込みをしております」
「そもそもダナの母親が呪いなんかを振りまくから!」
「母が大変ご迷惑をおかけしておりますこと、申し訳なく……」
深々とダナが頭を下げると、アントニアがふたりの間に割って入った。
「殿下、その件については今後一切の口出しは無用とお伝えしたはずです。ひとまず殿下は余裕がありそうなので、プランクの時間を延ばしますね」
「鬼か」
「無駄口を叩く元気がおありですから、ワイドスクワットとプッシュアップも追加で」
「いっそ殺せ」
「大丈夫です。死ぬ死ぬ言っているうちは、死にません」
「ううう、嫌だあ」
「殿下、語尾がのびております。恐れながら、母の呪いの影響かと。僕でよろしければ、一緒にクランチをいたしましょうか?」
「い、今の俺に、は、話しかけるなっ」
ぷるぷると震えながら、必死でメニューをこなす王太子を横目に、アントニアとダナはにこりと微笑みあった。
「はい、喜んで!」
「なぜ、俺までやらなきゃいけないんだ! 休み時間くらい脳を休めさせてくれ」
「殿下の脳みそは、ただでさえスリープモードですのに、これ以上休ませる必要がどこにあるのでしょう」
「お前、いつか不敬罪になるからな」
不満を垂れ流す王太子の横で、アントニアとダナは汗を流していた。
「呪いに打ち勝つには、一に筋トレ、二に筋トレ、三四がなくて、五に筋トレと申し上げたはずです」
「そんな脳筋理論は知らん!」
「脳みそが筋肉で守られておらず無防備ですから、すぐにひとに騙されるのでは?」
「脳筋が一般的だと思うなよ! だいたいお前の理論は間違っている。騎士団の男にも呪いにひっかかった奴がいただろう」
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「アレは追い込みが足りないのです。特別コースを受講させたら、しっかりと騎士道に目覚めた上に、筋肉の素晴らしさを語るようになりましたよ」
「もうやだ、洗脳じゃん」
「殿下。諦めて僕たちと一緒に筋トレいたしましょう。僕の母も筋トレを始めてから、呪いから解放されたようで毎日笑顔で走り込みをしております」
「そもそもダナの母親が呪いなんかを振りまくから!」
「母が大変ご迷惑をおかけしておりますこと、申し訳なく……」
深々とダナが頭を下げると、アントニアがふたりの間に割って入った。
「殿下、その件については今後一切の口出しは無用とお伝えしたはずです。ひとまず殿下は余裕がありそうなので、プランクの時間を延ばしますね」
「鬼か」
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「いっそ殺せ」
「大丈夫です。死ぬ死ぬ言っているうちは、死にません」
「ううう、嫌だあ」
「殿下、語尾がのびております。恐れながら、母の呪いの影響かと。僕でよろしければ、一緒にクランチをいたしましょうか?」
「い、今の俺に、は、話しかけるなっ」
ぷるぷると震えながら、必死でメニューをこなす王太子を横目に、アントニアとダナはにこりと微笑みあった。
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