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どうやら私の婚約者は、私のことが嫌いらしい。
何せ、幼い頃に婚約してから彼は私の元へは一切通ってこないのだ。遠い昔、婚約する前の記憶によれば結構仲良くしていたみたいなのだが。それにもかかわらず、彼は婚約後私に対して非情に冷たくなった。婚約前と婚約後で変わったことと言えば、ただひとつ。私がぷんぷくりんに太ってしまったことだろう。つまり彼は、おデブになった私は許せなかったということだ。まあしゃあない。デブ専でも、それはそれで困ったし。
「はあ。せめて黒豚ではなく、白豚ならねえ。地黒とはいえ、切ないわ」
「ですが、お嬢さま。公爵家の特産である黒豚は、非常に美味なことで有名です。恥じることはありません!」
「いや、特産品を褒め称えているっていう体で、面と向かって悪口を言っているだけだからね」
「いえいえ。豚は賢く、手先が器用、あの見た目は誤解されがちですが、実際には太っているというわけではなく、大変足が速いのです。まさにお嬢さまにお似合いの生き物ですよ」
「やだあ。全然嬉しくないいいいい。私も白薔薇の君とか呼ばれたかったああああ」
「まあ、見た目があれだけ美しくても、ツンツンとげとげしていて口を開けば悪口ばかりなのですから、あんな男クソですよ。白薔薇どころか、薄馬鹿です」
「もう、クリス。不敬よ。誰かに聞かれたらどうするの」
「何かあったら薄馬鹿はわたしが始末して、必ずお嬢さまを自由にしてあげますので」
「クリス。お願いだから、絶対に暴走しないでね。それに、あれでも私の大切な婚約者さまなのだし」
「お嬢さま、趣味が悪すぎます」
「だって、私相手に見せるあの冷たい表情も冷淡な口ぶりも、それはそれで私限定だと思えば、わりと幸せというか!」
「お嬢さま……」
推しの私専用限定ボイスだと思えば、わりかし美味しいよね?
何せ、幼い頃に婚約してから彼は私の元へは一切通ってこないのだ。遠い昔、婚約する前の記憶によれば結構仲良くしていたみたいなのだが。それにもかかわらず、彼は婚約後私に対して非情に冷たくなった。婚約前と婚約後で変わったことと言えば、ただひとつ。私がぷんぷくりんに太ってしまったことだろう。つまり彼は、おデブになった私は許せなかったということだ。まあしゃあない。デブ専でも、それはそれで困ったし。
「はあ。せめて黒豚ではなく、白豚ならねえ。地黒とはいえ、切ないわ」
「ですが、お嬢さま。公爵家の特産である黒豚は、非常に美味なことで有名です。恥じることはありません!」
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「いえいえ。豚は賢く、手先が器用、あの見た目は誤解されがちですが、実際には太っているというわけではなく、大変足が速いのです。まさにお嬢さまにお似合いの生き物ですよ」
「やだあ。全然嬉しくないいいいい。私も白薔薇の君とか呼ばれたかったああああ」
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「お嬢さま、趣味が悪すぎます」
「だって、私相手に見せるあの冷たい表情も冷淡な口ぶりも、それはそれで私限定だと思えば、わりと幸せというか!」
「お嬢さま……」
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