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ある日、目が覚めると同時に私は前世の記憶を取り戻していた。
「ぐあああ、頭が痛い! 寝起きからクライマックスってどういうことよ。ええと、昨日は夜遅くまで残業で目を酷使したっけ? いや、低気圧による片頭痛かも? まさかの二日酔いか? あああああ、もう無理いいいいい。ぎぼぢわるいいいいい」
「……あの、お嬢さま。お加減は大丈夫でしょうか?」
「は?」
「やはり、あのアホ王子とのやりとりがお嬢さまに負担をかけているのではありませんか?」
目の前には、なんともクラシカルな侍女さんがいる。うーん、一体誰だ?……と考えたのもつかの間、私はスムーズに彼女のことを思い出すことができた。彼女は私付きの侍女のクリスだ。前世の記憶がよみがえっても、あくまで私は私のままだったらしい。よかった。
「ああ、うーん、大丈夫、大丈夫。ちょっと疲れがたまっていただけ」
「こんなに可愛らしいお嬢さまに負担をかけて、本当に許せません!」
「でもまあ、罵ってくるとかじゃないからね。視界に入れないようにして、ただひたすら私の存在を無視しているだけだし」
「その行為がそもそも許しがたいんですよ」
「まあ、王太子殿下も事情がおありかもしれないじゃん」
「どんな事情があろうとも、女性を泣かせる男は万死に値します!」
「でも顔がいいしさあ」
「顔の良さだけで物事を判断してはいけないと、いつも口を酸っぱくして言っているでしょう!」
クリスが、私の分まで怒ってくれている。そのせいだろうか、婚約者にまったく大事にされていない私だが、意外と楽しく暮らすことができていた。
ただ、ちょっと気になるのは今の立ち位置のこと。頼む、モブであれとは思ったものの、王太子殿下の婚約者である公爵家令嬢というのはどう考えてもモブとは思えない。それに個人的な考えで言わせてもらうなら、私はたぶん終盤でざまぁされる悪役令嬢なのだと思う。理由? 私に二つ名があるからだよ。黒豚令嬢っていう、とんでもなく失礼なあだ名だけどね!
「ぐあああ、頭が痛い! 寝起きからクライマックスってどういうことよ。ええと、昨日は夜遅くまで残業で目を酷使したっけ? いや、低気圧による片頭痛かも? まさかの二日酔いか? あああああ、もう無理いいいいい。ぎぼぢわるいいいいい」
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「は?」
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ただ、ちょっと気になるのは今の立ち位置のこと。頼む、モブであれとは思ったものの、王太子殿下の婚約者である公爵家令嬢というのはどう考えてもモブとは思えない。それに個人的な考えで言わせてもらうなら、私はたぶん終盤でざまぁされる悪役令嬢なのだと思う。理由? 私に二つ名があるからだよ。黒豚令嬢っていう、とんでもなく失礼なあだ名だけどね!
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