6 / 7
(6)
しおりを挟む
「期末試験のテストが全部返ってきた日。空き教室で坂口くんたちが罰ゲームについて話しているのを聞いたのよ。でも嘘告白じゃないってどういうこと?」
私の質問に、バツが悪そうな顔をする坂口くん。うん、そういう表情も素敵だね! いかんいかん、今は坂口くんの格好良さを愛でるのではなく、どう言うことなのかを確かめるのが優先だったわ。
「確かに『罰ゲーム』扱いにしたのは悪かったけど、告白はもちろん本気。ただ、フラグを立てたくなかったんだ」
「フラグ?」
「俺、この戦争が終わったら、幼馴染と結婚するんだってやつ」
「それ、戦死して結婚できない定番のヤツだ」
指摘すれば、その通りだといたって真面目な顔をして坂口くんがうなずいた。
「そうだよ。今度の期末試験、学年1位を取ったら好きな女の子に告白するなんて言い方をしたら、フラれちゃうのが決定するみたいじゃないか」
「だから、『罰ゲーム』という言い方をしていただけで、本当は『学年1位が取れたら、その勢いで好きな女の子に告白する』という目標だったってこと?」
「うん」
「それって……」
それって、まるで、坂口くんが私のことを本気で好きみたいじゃない? 気がついた瞬間に顔が熱くなった。よく見れば、坂口くんも、耳が真っ赤になっている。
「えっと、坂口くんはもしかして……」
「本当に、山本さんのことが好きだよ」
「でも、私、地味だし、特に目立つこともしてないし……」
「誰も気がつかないこと、率先してやってくれてるのを知ってるから。学校の裏庭や花壇が綺麗になったのって、山本さんが美化委員会に入ってからだよね」
美化委員会なんて全然目立たないのに、気がついてくれていたんだ。
「図書室でも、別に図書委員でもないのに普通に手伝いをやってるし、先生の雑用もこなしてる」
「あれは、私が本が好きだし、先生の雑用は別に他に用事もないからで……」
「でも、同じように本が好きなはずの子たちは手伝わないで読書をしてるよね。先生の用事だって文句を言って手伝わないヤツのほうが多いよ」
「まあ、ひとによるとは思うし……」
「山本さんは誰かの手伝いをしているとき、いつも楽しそうに笑ってる。手伝っても、別に山本さんの得になるようなことではないはずなのに。山本さんの笑顔を見ていたら、いつの間にか好きになってた」
誰かに褒められたくてやっていたわけではないけれど、目立たない私をちゃんと見てもらっていたことが嬉しい。そんな私に、坂口くんが不思議そうに尋ねてきた。
「というか、むしろ『罰ゲーム』だと思ったのなら、どうして告白にOKを出してくれたの?」
「坂口くんこそ、誰にだって優しくて親切じゃない。相手によって態度を変えたりしないもの」
「でも、『罰ゲーム』する人間だって思ったでしょ?」
ちょっと不満そうな、意地悪そうにも見える表情にまたきゅんとくる。
「うん、実は裏ではそういうことしちゃうタイプなんだってびっくりしたけど、嘘告白でも付き合えたら嬉しかったから、騙されてみることにしたんだ」
「山本さんの気持ち、嬉しいけど嬉しくない。悪いひとに騙されそうで怖いよ」
「むしろ、坂口くんになら積極的に騙されたいです!」
「やめて!」
「クズでも大歓迎だよ! 私の方こそ、貢ぎたい!」
「ダメだから! 貢ぐのは俺だから!」
訂正するのはそこなの?
私の質問に、バツが悪そうな顔をする坂口くん。うん、そういう表情も素敵だね! いかんいかん、今は坂口くんの格好良さを愛でるのではなく、どう言うことなのかを確かめるのが優先だったわ。
「確かに『罰ゲーム』扱いにしたのは悪かったけど、告白はもちろん本気。ただ、フラグを立てたくなかったんだ」
「フラグ?」
「俺、この戦争が終わったら、幼馴染と結婚するんだってやつ」
「それ、戦死して結婚できない定番のヤツだ」
指摘すれば、その通りだといたって真面目な顔をして坂口くんがうなずいた。
「そうだよ。今度の期末試験、学年1位を取ったら好きな女の子に告白するなんて言い方をしたら、フラれちゃうのが決定するみたいじゃないか」
「だから、『罰ゲーム』という言い方をしていただけで、本当は『学年1位が取れたら、その勢いで好きな女の子に告白する』という目標だったってこと?」
「うん」
「それって……」
それって、まるで、坂口くんが私のことを本気で好きみたいじゃない? 気がついた瞬間に顔が熱くなった。よく見れば、坂口くんも、耳が真っ赤になっている。
「えっと、坂口くんはもしかして……」
「本当に、山本さんのことが好きだよ」
「でも、私、地味だし、特に目立つこともしてないし……」
「誰も気がつかないこと、率先してやってくれてるのを知ってるから。学校の裏庭や花壇が綺麗になったのって、山本さんが美化委員会に入ってからだよね」
美化委員会なんて全然目立たないのに、気がついてくれていたんだ。
「図書室でも、別に図書委員でもないのに普通に手伝いをやってるし、先生の雑用もこなしてる」
「あれは、私が本が好きだし、先生の雑用は別に他に用事もないからで……」
「でも、同じように本が好きなはずの子たちは手伝わないで読書をしてるよね。先生の用事だって文句を言って手伝わないヤツのほうが多いよ」
「まあ、ひとによるとは思うし……」
「山本さんは誰かの手伝いをしているとき、いつも楽しそうに笑ってる。手伝っても、別に山本さんの得になるようなことではないはずなのに。山本さんの笑顔を見ていたら、いつの間にか好きになってた」
誰かに褒められたくてやっていたわけではないけれど、目立たない私をちゃんと見てもらっていたことが嬉しい。そんな私に、坂口くんが不思議そうに尋ねてきた。
「というか、むしろ『罰ゲーム』だと思ったのなら、どうして告白にOKを出してくれたの?」
「坂口くんこそ、誰にだって優しくて親切じゃない。相手によって態度を変えたりしないもの」
「でも、『罰ゲーム』する人間だって思ったでしょ?」
ちょっと不満そうな、意地悪そうにも見える表情にまたきゅんとくる。
「うん、実は裏ではそういうことしちゃうタイプなんだってびっくりしたけど、嘘告白でも付き合えたら嬉しかったから、騙されてみることにしたんだ」
「山本さんの気持ち、嬉しいけど嬉しくない。悪いひとに騙されそうで怖いよ」
「むしろ、坂口くんになら積極的に騙されたいです!」
「やめて!」
「クズでも大歓迎だよ! 私の方こそ、貢ぎたい!」
「ダメだから! 貢ぐのは俺だから!」
訂正するのはそこなの?
15
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
レンタル悪女を始めましたが、悪女どころか本物の婚約者のように連れ回されています。一生独占契約、それってもしかして「結婚」っていいませんか?
石河 翠
恋愛
浮気相手の女性とその子どもを溺愛する父親に家を追い出され、家庭教師として生計を立てる主人公クララ。雇い主から悪質なセクハラを受け続けついにキレたクララは、「レンタル悪女」を商売として立ち上げることを決意する。
そこへ、公爵家の跡取り息子ギルバートが訪ねてくる。なんと彼は、年の離れた妹の家庭教師としてクララを雇う予定だったらしい。そうとは知らず「レンタル悪女」の宣伝をしてしまうクララ。ところが意外なことに、ギルバートは「レンタル悪女」の契約を承諾する。
雇用契約にもとづいた関係でありながら、日に日にお互いの距離を縮めていくふたり。ギルバートの妹も交えて、まるで本当の婚約者のように仲良くなっていき……。
家族に恵まれなかったために、辛いときこそ空元気と勢いでのりきってきたヒロインと、女性にモテすぎるがゆえに人間不信気味だったヒーローとの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
カモフラージュの恋
湖月もか
恋愛
容姿端麗、文武両道、しかも性格までよし。まるで少女漫画の王子様のような幼馴染な彼。
当たり前だが、彼は今年も囲まれている。
そんな集団を早く終わらないかなと、影から見ている私の話。
※あさぎかな様に素敵な表紙を作成していただきました!
愛しているなら、愛してよ!
はるきりょう
恋愛
※部活一筋の彼氏と、その彼女の話。
そう言って紗希は笑った。そして思う。笑顔を作るのが上手くなったなと。
けれどきっとはじめはそんなこと気づいてくれない。こっちを見てはくれないのだから。
はじめの視線に入るには、入るように自分が動かなくてはならない。彼からこちらを見てくれることはないのだ。
それが当たり前だった。けれど、それで「恋人」と呼べるのだろうか。
私の好きなひとは、私の親友と付き合うそうです。失恋ついでにネイルサロンに行ってみたら、生まれ変わったみたいに幸せになりました。
石河 翠
恋愛
長年好きだった片思い相手を、あっさり親友にとられた主人公。
失恋して落ち込んでいた彼女は、偶然の出会いにより、ネイルサロンに足を踏み入れる。
ネイルの力により、前向きになる主人公。さらにイケメン店長とやりとりを重ねるうち、少しずつ自分の気持ちを周囲に伝えていけるようになる。やがて、親友との決別を経て、店長への気持ちを自覚する。
店長との約束を守るためにも、自分の気持ちに正直でありたい。フラれる覚悟で店長に告白をすると、思いがけず甘いキスが返ってきて……。
自分に自信が持てない不器用で真面目なヒロインと、ヒロインに一目惚れしていた、実は執着心の高いヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、エブリスタ及び小説家になろうにも投稿しております。
扉絵はphoto ACさまよりお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる