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086 神様とおもちゃ

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 結論から言おう。大人のおもちゃは、不評だった。

 ミレイユは、最初から大人のおもちゃを使うことに乗り気ではなかったが、実際に使ってみたところ、感じてはいた。だが……。

「お、お願い。ルーで、ルーでイかせて!そんなおもちゃでイキたくないのぉ!」

 と、目に涙を浮かべて懇願されてしまった。ミレイユが本気で嫌がっていることを察した私は、ミレイユにもう大人のおもちゃを使わないことを約束して謝った。まさかここまで嫌がるとは思っていなかった。ミレイユには悪いことをしたな……。



 リリムも大人のおもちゃに難色を示した。

「あーしが好きなのは、そんなおもちゃじゃなくてルールーだし!」

 ただ、私の気持ちも汲んでくれたのか、たまになら使ってもいいとも言ってくれた。ただし、ちゃんとリリムのことを愛した上での話だ。彼女が求めているのは、私からの愛のある行為であって、その間に大人のおもちゃが入るのを快く思わないらしい。



 2人に難色を示されてしまった大人のおもちゃ。私はダメで元々の気持ちでディアネットに大人のおもちゃについて訊いてみた。

「興味はある…」

 意外にもディアネットは大人のおもちゃについて興味を示した。ディアネットは、愛のある行為ならば、その手段にはあまりこだわらない人間らしい。

 手に持った卵型のローターをしげしげと眺めるディアネット。

「これは…?」
「これはここを捻ると……」

 ディアネットの手の中で震え出す大人のおもちゃ。宝具を使っているからなのか、駆動音はしない。無音に静かに震え続けている。

「これだけ…?」

 ただ震えるだけの大人のおもちゃに、ディアネットは不思議そうな目を向ける。宝具を使った大人のおもちゃと言ったから、もっとすごい機能を想像していたのかもしれない。それとも、ただ震えるだけのおもちゃの使用用途が分からなかったのかな?

「これはこう使うんだ」

 私はディアネットの手から震えるおもちゃを取り上げると、ディアネットの胸に押し当てる。

「んっ…」
「どうだ?」
「くすぐったい…」

 くすぐったいか……まぁ服の上からだし、そんなものか。私は、ディアネットの胸をおもちゃで円を描くようになぞる。そして、その円を胸の頂点に向かってだんだんと狭めていく。おもちゃが胸の頂点に達した瞬間……。

「ぁ…」

 ディアネットから微かに甘い吐息が漏れる。

 私はおもちゃでディアネットの胸の先端を弄びながら尋ねる。

「どうだ?」
「気持ち、いい…?」

 疑問をにじませながら答えるディアネット。初めての感覚に戸惑っているようだ。

「でも、ルーの方が、好き…」

 おもちゃよりも私に直接触られた方が好きらしい。そのことを嬉しく感じる反面「せっかく大人のおもちゃを買ったのに……」と思わなくもない。

 結局3人とも大人のおもちゃに対して、あまり良い反応を示さなかった。3人ともおもちゃよりも私に触られることの方が好きらしい。それはそれで嬉しいが、せっかく買ったのだから大人のおもちゃを有効活用したい。

 そこで私は考えた。大人のおもちゃには、私が直接触れない時の代わりをしてもらおう。


 ◇


「ねぇルールー、ほんとにすんの?」
「不安…」

 リリムが綺麗に整った眉をハの字にして情けない顔を浮かべている。声も若干震えていた。ディアネットも本人の言うように、不安そうな表情を浮かべている。

「バレたらヤバイって……」
「心配するな。バレなければいいんだ」

 心配そうに言うリリムを宥めて、私は手元のボタンをポチッと押した。

「ぁうっ…!」
「んっ…!」

 するとリリムとディアネットの2人がビクリと体を震わせて甘い息を漏らす。

 実は2人のパンツの中には大人のおもちゃを忍ばせてある。私が手元のボタンを押すと、大人のおもちゃが震え出す仕組みだ。言ってしまえば、遠隔操作のローターである。

「ヤバイ。これヤバイよルールー。絶対バレちゃう」
「ダメ、かも…」
「大丈夫、大丈夫。じゃあ行こうか」

 私は2人の手を引いてリビングへと向かうのだった。


 ◇


 リビングでは、エレオノールがテーブル席に座って本を読んでいた。おそらく初代【赤の女王】アリスたちの残したダンジョンの手記を読んでいるのだろう。先人が残したダンジョンの手記は、私たちの貴重な情報源になっている。真面目な優等生のエレオノールは、ダンジョンの手記をよく読み込み、その情報を私たちに共有してくれるのだ。パーティのリーダーとしての責任感が強いのだろう。

「あら、3人ともおはようございます」

 私たちに気が付いたエレオノールが、花の咲く様な笑みを見せる。

「おはようエル。良い朝だね」

 エレオノールはいつ見ても可憐だな。そんなことを思いながら、私は手元のボタンを押す。

「っ…!お、おはよっ」
「おはっ、よぅ…」

 リリムとディアネットが若干調子の外れた声で挨拶を返すのを、私はニヤニヤと眺める。

「3人とも立ってないでどうぞ座ってくださいな」
「そうだね。さぁ座ろうか2人とも」

 私はリリムとディアネットの腰を押して椅子へと向かわせる。もちろん手元のボタンは押しっぱなしだ。

「ぁっ…うん…」
「はぁ…はぁ…ぁん…」

 2人ともスリ足でゆっくりと椅子に向かって歩くのだった。
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