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011 いじめ
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システィーナに怒られた日から、私は孤立した。友人や知り合いに会っても無視されるか、「もう関わらないでくれ」と突き放されてしまった。上級貴族の怒りを買った下級貴族なんて、怖くてみんな近寄らない。しかも、非は自分にあるのだから尚更だ。
周囲の私を見る目は、変わった。ヒソヒソと話されるのは相変わらずだけど、そこに嘲笑が交じっている。曰く「シュヴァルツ殿下に近づくふしだらな女」「殿下に恋する身の程知らず」「身分の差が分からないバカ」「殿下の誘惑に失敗したブス」「婚約者にバレて怒られた憐れな道化」などなど、もう言いたい放題だ。
覚悟はしていたけど、いじめってやっぱり辛い。一人は寂しいし、周囲の声は無視しようとしても、ふとした時に耳に届く。孤独は、周囲を渦巻く心無い言葉は、確実に私の精神を削っていった。
授業が終わり、シュヴァルツの元へ行こうとすると、私の前に4人の影が立ちはだかる。あぁ…今日も捕まってしまった…。
「あらマリアベル。どこに行こうというの?」
「シュヴァルツ殿下の元に行かせるわけないでしょう」
「身分の差をわきまえなさい。この阿婆擦れ」
「シュヴァルツ殿下もお可哀想。こんなブスに好意を持たれてしまうなんて」
彼女たちは最近私に絡んでくるようになったホッケカイヤ王国貴族の子達である。ホッケカイヤ王国はアルルトゥーヤ帝国に併呑されてしまった。彼女たちはアルルトゥーヤ帝国から逃れ、この国に亡命してきたホッケカイヤ王国貴族の子ども達だ。その背景から『国無し』と蔑まれていた子達だ。たぶん、システィーナの手先になって自分達の立場を得ようというのだろう。もしくは、自分達より立場の弱い者を見つけて、いじめているだけかもしれない。
彼女たちを無視して行こうとすると、回り込まれてしまった。ここを通してはくれないみたいだ。
「シュヴァルツ殿下にはシスティーナ様という婚約者がいるのよ」
「少しはわきまえなさいよ。あなたは貴族の面汚しよ」
この子たちの言ってることは間違ってないから反論もできない。貴族の常識に反しているのは私の方だ。彼女たちにして見れば、私は何度言っても言うことを聞かない分からず屋だろう。現に、これだけ言われてるのにシュヴァルツに会いに行こうとしているしね。でも、私の家族の為にも、国の為にもシュヴァルツとヴァイスには和解してもらわないと困るのだ。だから、どんなに言われてもシュヴァルツに会いに行く。システィーナには申し訳ないと思うけどね。
私を取り囲んだ4人は、私を逃がすつもりは無いみたいだ。周囲の人も遠巻きに見て嗤うばかりで、私を助けてはくれない。
どうやってこの包囲網を抜け出そうか考えていた時だった。
「あなた達、何をしているの?」
教室から緑髪の背の高い女の子が出て来た。この娘は…!
「廊下の真ん中で邪魔よ。消えなさい」
その言葉に恐れをなしたのか、ホッケカイヤ貴族の娘たちがこちらを睨み付けながらもすごすごと去っていく。すごい、言葉だけで相手を退かせてしまった。
「災難だったわね、マリアベル様」
「ありがとうございます、アラスティア様」
アラスティア・ファ・ロンデリウム。ゲームでのシュヴァルツルートにおけるヒロインちゃんの友人ポジの娘だ。今まで接点なんて無かったから、友人にはなれないかもと思っていたけど、助けてくれた。たぶんゲームでもこうして接点を持ったのだろう。でも、助けてくれたのは嬉しいけど、素直に喜べない。
「警戒しなくてもよろしくてよ?わたくしはあなたの味方です。シュヴァルツ殿下との恋、応援していますわ」
アラスティアがにっこりと笑顔を浮かべて話しかけてくる。
「わたくしとシュヴァルツ殿下は、そんな関係じゃありません」
「隠さなくてよろしいのに。応援しているというのは嘘ではありませんのよ?」
たぶん本当に応援しているのだろう。だってアラスティアの実家ロンデリウム伯爵家はゴリゴリのヴァイス派閥だ。敵対派閥であるシュヴァルツやシスティーナのスキャンダルなんて欲しくてたまらないだろう。
私を助けたのも、私を応援するのもヴァイス派閥の為だ。私を思ってのことじゃない。ゲームでは良い友達だなとしか思わなかったけど、裏が分かると、とても仲良くできそうにない。
「今日はこの辺にしておきましょう。では、ごきげんよう」
「…ごきげんよう、アラスティア様。ありがとうございました」
でも、助かったのは事実だし、お礼を言う。友達にはなれないだろうけど、割り切って付き合うには良い相手かもしれない。ヴァイス派閥の人だから、いじめに巻き込まれることもないだろうし。それに、話し相手になってくれるだけでもすごく助かるのは事実だ。お友達いなくなっちゃったからね、私。でも、アラスティアに依存してしまわないように気を付けないと…。
アラスティアと別れると、私はシュヴァルツに会う為に林へと足を進める。正規ルートである木々の迷路を避けて、林の中にある木々の隙間が空いた穴、初めてシュヴァルツに会った時にくぐり抜けた穴へと向かう。迷路の方はホッケカイヤ貴族の娘たちが見張ってるみたいなのよね。なので、出入りにはこちらの道を使っていた。さてさて、今日はシュヴァルツは居るかな?
周囲の私を見る目は、変わった。ヒソヒソと話されるのは相変わらずだけど、そこに嘲笑が交じっている。曰く「シュヴァルツ殿下に近づくふしだらな女」「殿下に恋する身の程知らず」「身分の差が分からないバカ」「殿下の誘惑に失敗したブス」「婚約者にバレて怒られた憐れな道化」などなど、もう言いたい放題だ。
覚悟はしていたけど、いじめってやっぱり辛い。一人は寂しいし、周囲の声は無視しようとしても、ふとした時に耳に届く。孤独は、周囲を渦巻く心無い言葉は、確実に私の精神を削っていった。
授業が終わり、シュヴァルツの元へ行こうとすると、私の前に4人の影が立ちはだかる。あぁ…今日も捕まってしまった…。
「あらマリアベル。どこに行こうというの?」
「シュヴァルツ殿下の元に行かせるわけないでしょう」
「身分の差をわきまえなさい。この阿婆擦れ」
「シュヴァルツ殿下もお可哀想。こんなブスに好意を持たれてしまうなんて」
彼女たちは最近私に絡んでくるようになったホッケカイヤ王国貴族の子達である。ホッケカイヤ王国はアルルトゥーヤ帝国に併呑されてしまった。彼女たちはアルルトゥーヤ帝国から逃れ、この国に亡命してきたホッケカイヤ王国貴族の子ども達だ。その背景から『国無し』と蔑まれていた子達だ。たぶん、システィーナの手先になって自分達の立場を得ようというのだろう。もしくは、自分達より立場の弱い者を見つけて、いじめているだけかもしれない。
彼女たちを無視して行こうとすると、回り込まれてしまった。ここを通してはくれないみたいだ。
「シュヴァルツ殿下にはシスティーナ様という婚約者がいるのよ」
「少しはわきまえなさいよ。あなたは貴族の面汚しよ」
この子たちの言ってることは間違ってないから反論もできない。貴族の常識に反しているのは私の方だ。彼女たちにして見れば、私は何度言っても言うことを聞かない分からず屋だろう。現に、これだけ言われてるのにシュヴァルツに会いに行こうとしているしね。でも、私の家族の為にも、国の為にもシュヴァルツとヴァイスには和解してもらわないと困るのだ。だから、どんなに言われてもシュヴァルツに会いに行く。システィーナには申し訳ないと思うけどね。
私を取り囲んだ4人は、私を逃がすつもりは無いみたいだ。周囲の人も遠巻きに見て嗤うばかりで、私を助けてはくれない。
どうやってこの包囲網を抜け出そうか考えていた時だった。
「あなた達、何をしているの?」
教室から緑髪の背の高い女の子が出て来た。この娘は…!
「廊下の真ん中で邪魔よ。消えなさい」
その言葉に恐れをなしたのか、ホッケカイヤ貴族の娘たちがこちらを睨み付けながらもすごすごと去っていく。すごい、言葉だけで相手を退かせてしまった。
「災難だったわね、マリアベル様」
「ありがとうございます、アラスティア様」
アラスティア・ファ・ロンデリウム。ゲームでのシュヴァルツルートにおけるヒロインちゃんの友人ポジの娘だ。今まで接点なんて無かったから、友人にはなれないかもと思っていたけど、助けてくれた。たぶんゲームでもこうして接点を持ったのだろう。でも、助けてくれたのは嬉しいけど、素直に喜べない。
「警戒しなくてもよろしくてよ?わたくしはあなたの味方です。シュヴァルツ殿下との恋、応援していますわ」
アラスティアがにっこりと笑顔を浮かべて話しかけてくる。
「わたくしとシュヴァルツ殿下は、そんな関係じゃありません」
「隠さなくてよろしいのに。応援しているというのは嘘ではありませんのよ?」
たぶん本当に応援しているのだろう。だってアラスティアの実家ロンデリウム伯爵家はゴリゴリのヴァイス派閥だ。敵対派閥であるシュヴァルツやシスティーナのスキャンダルなんて欲しくてたまらないだろう。
私を助けたのも、私を応援するのもヴァイス派閥の為だ。私を思ってのことじゃない。ゲームでは良い友達だなとしか思わなかったけど、裏が分かると、とても仲良くできそうにない。
「今日はこの辺にしておきましょう。では、ごきげんよう」
「…ごきげんよう、アラスティア様。ありがとうございました」
でも、助かったのは事実だし、お礼を言う。友達にはなれないだろうけど、割り切って付き合うには良い相手かもしれない。ヴァイス派閥の人だから、いじめに巻き込まれることもないだろうし。それに、話し相手になってくれるだけでもすごく助かるのは事実だ。お友達いなくなっちゃったからね、私。でも、アラスティアに依存してしまわないように気を付けないと…。
アラスティアと別れると、私はシュヴァルツに会う為に林へと足を進める。正規ルートである木々の迷路を避けて、林の中にある木々の隙間が空いた穴、初めてシュヴァルツに会った時にくぐり抜けた穴へと向かう。迷路の方はホッケカイヤ貴族の娘たちが見張ってるみたいなのよね。なので、出入りにはこちらの道を使っていた。さてさて、今日はシュヴァルツは居るかな?
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