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139 カサンドラ②
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「ドーラ、ちょっといいか?」
「どうなさいましたの?」
夜の寝室。オレは隣でいそいそと夜着を脱ごうとしていたカサンドラに思い切って声をかけた。
「今日は自分で脱がしますか? そういう方が好きという殿方もいらっしゃると聞いた覚えがあります」
「いや、ちがくて……」
カサンドラはもう完全に夜の性活の準備をしていた。
まぁ、毎晩のように求めていたら、それが自然になるよね。
性欲が異常なほど強くなったオレは、隣に魅力的な美少女が寝ていたら我慢なんてできない。
オレはベッドの上であぐらをかくと、ランプの薄明りの中、白く浮かび上がるカサンドラの顔を見つめた。
「真面目な話なんだ」
「なんでしょう?」
カサンドラは脱ごうとしていた夜着を戻すと、オレの方を見た。
「答えにくいことを訊くんだが、正直に答えてほしい。ドーラはオレのことを……。愛せそうだろうか……?」
カサンドラは「こいつはなにを言っているんだ」と言わんばかりに半目になって呆れたような表情をみせた。
「愛せそうもなにも、わたくしは既にディーのことを愛していますよ?」
「ッ!?」
カサンドラの気持ちを知って、オレの胸は高鳴る。今まで、カサンドラがオレへの想いを直接口にすることはなかった。嬉しい。思わずカサンドラの豊かな胸に飛び込みそうになるほどだ。
「ドーラの気持ちはとても嬉しい。オレもドーラを愛しているよ。ドーラが居ない生活などもう考えられないくらいだ」
「嬉しいです」
そう言って柔らかく笑うカサンドラの姿に嘘は見えなかった。
だからわからなくなる。
普通は、自分の夫に妻が増えることを歓迎するものなのだろうか?
全員を平等に愛するなんて寝言を言ってる奴が居たが、妻が増えれば一人一人の妻にかけられる時間が少なくなるのが道理だ。カサンドラだってそんなことはわかっているだろう。
では、なぜカサンドラはオレの妻が増えることを歓迎しているのだろう?
「ドーラ、君の本当の気持ちを教えてくれ。オレはクラウと婚約した。いずれ結婚することになるだろう。そして、リアやリリーのこともある。ドーラはそれを歓迎しているように見えたが、本当にいいのか?」
「えーっと……」
珍しくカサンドラが答えづらそうに言葉に詰まり、眼を泳がせる。
「ディーはもう知っているのかと思っていましたけど……。まだ気づいてませんか?」
「え?」
オレが気が付く? 何に? オレは何を見落としている?
「その様子では気が付いてないようですね。ディーはへんなところで鈍いですから仕方がないのかしら?」
「オレが、鈍い?」
「ええ、特に人間関係や恋愛に関しては壊滅的です」
「オレが……?」
オレは驚くと同時に納得してしまった。人間関係と恋愛。どちらも前世では縁のなかったものだ。経験値がとにかく足りていないのだろう。
「そうか……」
「そんなディーにわたくしの事情を言ってしまうべきかとても悩みます。はたしてディーの理解を得られるかどうか……。でも、わたくしは間違いなくディーを愛していますし、同時にディーが複数の妻を持つことに賛成です」
「それは高位貴族の娘として政治的な話か?」
「それもありますけど、わたくしの趣味の方が比重が大きいですわ。お聴きになりますか?」
「…………」
オレは聞くべきなのだろうか?
いや、聞くべきなのだろう。
「教えてくれ。オレはドーラをできる限り理解したいし、愛したい」
「ディーはストレートに愛情を伝えてくれるので、少し照れてしまいますね」
そう言うカサンドラの頬は少し赤く染まっていた。
「えっと、わたくしがディーの妻が増えることに賛成なのは、わたくしの趣味が大きく関係しています。わたくしはかわいい女の子が大好きなのです!」
「はい……?」
なんだか予想外の発言がきたぞ。
「ですから、かわいい女の子が大好きなのです! 一番は姫様ですが、リアさんやリリーさんもかわいいですよね? ディーもかわいいと思いますよね?」
「あ、ああ」
「そうですよね! わたくしがディーとの結婚に賛成したのは、姫様がディーと結ばれる可能性が高かったからです! わたくしは、姫様と一緒になりたいのです!」
「なるほど……」
「……理解してくださいますか?」
「ああ……」
つまりカサンドラは、女性が好きな女性ってこと?
オレも詳しいわけじゃないが、オレは前世の日本の記憶がある。性の自認や同性愛者という言葉を知っている。
「素晴らしいです、ディー! まさか、理解してくださる殿方がいらっしゃるなんて! ああ、女神様。感謝いたします!」
大袈裟なと思うかもしれないが、ここはジェンダー論に関して後進国と言われている日本よりも認識がひどい異世界だ。カサンドラのような同性愛者にとってとても生きにくい世界なのだろう。
「でも、ドーラは女性が好きなのなら、オレのことは……?」
「たしかにわたくしは女性が好きですけど、ディーのことは不思議と愛せることができます。そうでなければ、毎晩のように抱かれたりしません」
「なるほど……」
カサンドラの言葉には説得力があった。
つまり、オレはカサンドラにとっての例外なのだろう。
「よかった。オレはドーラの望まないことを強要していたわけじゃないんだね……」
「もう少しだけ回数を考えてくれると助かるのですけど」
「ドーラが魅力的なのが悪い」
「もう。でも、そういうことにしておきますわ」
「ごめんね?」
「夫の欲望を受け止めるのも妻の務めですもの。それに、ディーもまだ十四歳。お姉さんに任せなさい」
「どうなさいましたの?」
夜の寝室。オレは隣でいそいそと夜着を脱ごうとしていたカサンドラに思い切って声をかけた。
「今日は自分で脱がしますか? そういう方が好きという殿方もいらっしゃると聞いた覚えがあります」
「いや、ちがくて……」
カサンドラはもう完全に夜の性活の準備をしていた。
まぁ、毎晩のように求めていたら、それが自然になるよね。
性欲が異常なほど強くなったオレは、隣に魅力的な美少女が寝ていたら我慢なんてできない。
オレはベッドの上であぐらをかくと、ランプの薄明りの中、白く浮かび上がるカサンドラの顔を見つめた。
「真面目な話なんだ」
「なんでしょう?」
カサンドラは脱ごうとしていた夜着を戻すと、オレの方を見た。
「答えにくいことを訊くんだが、正直に答えてほしい。ドーラはオレのことを……。愛せそうだろうか……?」
カサンドラは「こいつはなにを言っているんだ」と言わんばかりに半目になって呆れたような表情をみせた。
「愛せそうもなにも、わたくしは既にディーのことを愛していますよ?」
「ッ!?」
カサンドラの気持ちを知って、オレの胸は高鳴る。今まで、カサンドラがオレへの想いを直接口にすることはなかった。嬉しい。思わずカサンドラの豊かな胸に飛び込みそうになるほどだ。
「ドーラの気持ちはとても嬉しい。オレもドーラを愛しているよ。ドーラが居ない生活などもう考えられないくらいだ」
「嬉しいです」
そう言って柔らかく笑うカサンドラの姿に嘘は見えなかった。
だからわからなくなる。
普通は、自分の夫に妻が増えることを歓迎するものなのだろうか?
全員を平等に愛するなんて寝言を言ってる奴が居たが、妻が増えれば一人一人の妻にかけられる時間が少なくなるのが道理だ。カサンドラだってそんなことはわかっているだろう。
では、なぜカサンドラはオレの妻が増えることを歓迎しているのだろう?
「ドーラ、君の本当の気持ちを教えてくれ。オレはクラウと婚約した。いずれ結婚することになるだろう。そして、リアやリリーのこともある。ドーラはそれを歓迎しているように見えたが、本当にいいのか?」
「えーっと……」
珍しくカサンドラが答えづらそうに言葉に詰まり、眼を泳がせる。
「ディーはもう知っているのかと思っていましたけど……。まだ気づいてませんか?」
「え?」
オレが気が付く? 何に? オレは何を見落としている?
「その様子では気が付いてないようですね。ディーはへんなところで鈍いですから仕方がないのかしら?」
「オレが、鈍い?」
「ええ、特に人間関係や恋愛に関しては壊滅的です」
「オレが……?」
オレは驚くと同時に納得してしまった。人間関係と恋愛。どちらも前世では縁のなかったものだ。経験値がとにかく足りていないのだろう。
「そうか……」
「そんなディーにわたくしの事情を言ってしまうべきかとても悩みます。はたしてディーの理解を得られるかどうか……。でも、わたくしは間違いなくディーを愛していますし、同時にディーが複数の妻を持つことに賛成です」
「それは高位貴族の娘として政治的な話か?」
「それもありますけど、わたくしの趣味の方が比重が大きいですわ。お聴きになりますか?」
「…………」
オレは聞くべきなのだろうか?
いや、聞くべきなのだろう。
「教えてくれ。オレはドーラをできる限り理解したいし、愛したい」
「ディーはストレートに愛情を伝えてくれるので、少し照れてしまいますね」
そう言うカサンドラの頬は少し赤く染まっていた。
「えっと、わたくしがディーの妻が増えることに賛成なのは、わたくしの趣味が大きく関係しています。わたくしはかわいい女の子が大好きなのです!」
「はい……?」
なんだか予想外の発言がきたぞ。
「ですから、かわいい女の子が大好きなのです! 一番は姫様ですが、リアさんやリリーさんもかわいいですよね? ディーもかわいいと思いますよね?」
「あ、ああ」
「そうですよね! わたくしがディーとの結婚に賛成したのは、姫様がディーと結ばれる可能性が高かったからです! わたくしは、姫様と一緒になりたいのです!」
「なるほど……」
「……理解してくださいますか?」
「ああ……」
つまりカサンドラは、女性が好きな女性ってこと?
オレも詳しいわけじゃないが、オレは前世の日本の記憶がある。性の自認や同性愛者という言葉を知っている。
「素晴らしいです、ディー! まさか、理解してくださる殿方がいらっしゃるなんて! ああ、女神様。感謝いたします!」
大袈裟なと思うかもしれないが、ここはジェンダー論に関して後進国と言われている日本よりも認識がひどい異世界だ。カサンドラのような同性愛者にとってとても生きにくい世界なのだろう。
「でも、ドーラは女性が好きなのなら、オレのことは……?」
「たしかにわたくしは女性が好きですけど、ディーのことは不思議と愛せることができます。そうでなければ、毎晩のように抱かれたりしません」
「なるほど……」
カサンドラの言葉には説得力があった。
つまり、オレはカサンドラにとっての例外なのだろう。
「よかった。オレはドーラの望まないことを強要していたわけじゃないんだね……」
「もう少しだけ回数を考えてくれると助かるのですけど」
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