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074 アルトマイヤー将軍②
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「閣下、お手をお貸し願えませんか?」
「うん? かまわんが……」
手にはその人の人となりが現れるなんて言葉がある。
アルトマイヤー将軍の手は、ゴツゴツとした分厚く大きい手だった。オレに手からその人の人となりを計る技術はないが、その手には将軍の実直な性格や、これまでの努力や苦労が刻まれているような気がした。
好感の持てる手だ。ヤバいね、ますますアルトマイヤー将軍のことが好きになりそうだ。
オレは最初の目的を思い出して、将軍の手から聖力を流し、将軍の健康状態を探ろうとする。
すると――――ッ!?
馴染みのあるオレの聖力に反発する感触。
まさか、アルトマイヤー将軍が邪神の呪い……?
なぜだ!? アルトマイヤー将軍はもう老人だぞ!? なんで邪神の呪いを患ってこの年まで生きているんだ!?
探ってみると、邪神の呪いはまだまだ初期段階のようだった。
最近呪われたのか? 邪神の呪いは、生まれつきのものではない……? 後天的に呪われる可能性もあるのか……?
どこで呪われた?
モンスターの中で呪いを操るモンスターが頭の中に列挙されていく。
いや、この老人は将軍だぞ。さすがに前線に立ってモンスターと対峙はしないだろう。どういうことだ?
「閣下、つかぬ事をお伺いしますが、ギフトを使えますか?」
「ッ!?」
アルトマイヤー将軍がまるで弾かれたように手を引いた。その顔には驚愕を噛み殺しきれなかったような並々ならぬ緊張感が走っていた。
「な、なぜそれをッ!? そこまでわかるのかッ!?」
将軍のその言葉がオレの言葉を肯定していた。
シャラリと涼やかな音を立ててアルトマイヤー将軍が腰の剣を抜き放った。オレの右肩の上、首のすぐ近くで将軍の剣が止まる。
「言わずともわかるな? なにも言わずに帰れ。そうすれば……」
「閣下、貴方は邪神の呪いに侵されています」
「黙れ! 軍を預かる者が邪神の呪いに屈したなど、ギフトを取り上げられたなど、そんなことはあってはならないのだッ!」
アルトマイヤー将軍は、決して己の保身のために言っているのではない。軍のトップである将軍がギフトを使えない。人とは認められないものに堕ちる。それは軍の存在そのものを揺るがしかねない大スキャンダルだ。
さすがに即座に軍が解体されることはないが、軍がこれまで犠牲を払ってでも推し進めてきた作戦が否定されかねない。
軍が女神の怒りを買ったためその長である将軍のギフトが取り上げられた。そんな解釈がされてしまっては最悪だ。
その可能性があると考えられるだけでもマズい。
なぜなら、もうすぐ邪神軍との戦争が控えているのをオレは知っているからだ。
今、軍の影響力が落ちることは絶対に避けなければならない。
だから将軍はここまで強硬に反応した。
「閣下のご懸念、ごもっともです。ですがご安心ください。私は邪神の呪いを解呪できます」
「信じられん! 今までどんな治癒師にあっても、どんな高価な薬を試そうとダメだったのだぞ!?」
「閣下はお忘れですか? 私は並みの治癒師ではありません。ギフトを進化させた聖者です。論より証拠。まずは邪神の呪いを解呪してしまいましょう」
「なに!?」
「手をお貸しください。治ればそれでよし、治らなくても今のまま。状態の悪化はありません」
「うむ……」
アルトマイヤー将軍は少し考えるような表情を見せると、剣を引いて手を差し出した。
「すぐに治りますよ」
オレはアルトマイヤー将軍の手を握ると、聖力を将軍の手に叩き込む。
「くっ!?」
「もうすぐです」
コルネリアたちに比べると軽い初期段階だったからか、邪神の呪いはすぐに解呪できた。
「終わりました。ギフトも使えるはずです」
「もうか!?」
アルトマイヤー将軍がジッと自分の手を見た。
すると、アルトマイヤー将軍の手から炎があがる。間違いなく将軍のギフトの力だ。
「ギフトが!? 使える! 使えるぞ! ははは! 女神は儂を、軍を、我が国を見捨てていなかった! 神に感謝を!」
アルトマイヤー将軍が、盛大に両腕を掲げてまるで待ちに待った雨に感謝する農夫のように天を仰ぎ見た。そのグレーの瞳からは、一筋の涙が流れていた。
アルトマイヤー将軍の喜びはオレには計り知れない。おそらく、将軍には背負うものが多すぎるのだ。
「感謝する! 感謝するぞ、バウムガルテン子爵! 今までの無礼を謝ろう! これで軍は救われた! 子爵のおかげだ! 子爵の功績は計り知れない! 地獄で百万の軍勢を得た気持ちだ! ああ、口が上手くない我が身が恨めしいほどだ!」
「おおぅ……」
すごい熱量の感謝だ。今までの突き放した態度が嘘のように変わっていた。
「閣下のお役に立てて幸いでした」
「なにを水臭い! どうすればこの感謝を表せられるか……。そうだな、貴君には報酬が必要だな! 貴君の比類ない働きには、それに報いるための報酬が必要だ!」
「あの閣下……? 金銭の受け渡しは教会の目もありますので……。それに、私としても得るものはありました。あまりお気になさらず……」
「水臭いことを言ってくれるな。儂にできることは限られているが……。ふむ、貴君への報酬はアレにしよう。きっと喜んでくれるはずだ」
「閣下?」
「まあこの死にぞこないに任せておけ! 損はさせんぞ!」
なんだか予想外のことになってきたな?
報酬を貰えるなら貰うが、なにをくれるんだ?
「うん? かまわんが……」
手にはその人の人となりが現れるなんて言葉がある。
アルトマイヤー将軍の手は、ゴツゴツとした分厚く大きい手だった。オレに手からその人の人となりを計る技術はないが、その手には将軍の実直な性格や、これまでの努力や苦労が刻まれているような気がした。
好感の持てる手だ。ヤバいね、ますますアルトマイヤー将軍のことが好きになりそうだ。
オレは最初の目的を思い出して、将軍の手から聖力を流し、将軍の健康状態を探ろうとする。
すると――――ッ!?
馴染みのあるオレの聖力に反発する感触。
まさか、アルトマイヤー将軍が邪神の呪い……?
なぜだ!? アルトマイヤー将軍はもう老人だぞ!? なんで邪神の呪いを患ってこの年まで生きているんだ!?
探ってみると、邪神の呪いはまだまだ初期段階のようだった。
最近呪われたのか? 邪神の呪いは、生まれつきのものではない……? 後天的に呪われる可能性もあるのか……?
どこで呪われた?
モンスターの中で呪いを操るモンスターが頭の中に列挙されていく。
いや、この老人は将軍だぞ。さすがに前線に立ってモンスターと対峙はしないだろう。どういうことだ?
「閣下、つかぬ事をお伺いしますが、ギフトを使えますか?」
「ッ!?」
アルトマイヤー将軍がまるで弾かれたように手を引いた。その顔には驚愕を噛み殺しきれなかったような並々ならぬ緊張感が走っていた。
「な、なぜそれをッ!? そこまでわかるのかッ!?」
将軍のその言葉がオレの言葉を肯定していた。
シャラリと涼やかな音を立ててアルトマイヤー将軍が腰の剣を抜き放った。オレの右肩の上、首のすぐ近くで将軍の剣が止まる。
「言わずともわかるな? なにも言わずに帰れ。そうすれば……」
「閣下、貴方は邪神の呪いに侵されています」
「黙れ! 軍を預かる者が邪神の呪いに屈したなど、ギフトを取り上げられたなど、そんなことはあってはならないのだッ!」
アルトマイヤー将軍は、決して己の保身のために言っているのではない。軍のトップである将軍がギフトを使えない。人とは認められないものに堕ちる。それは軍の存在そのものを揺るがしかねない大スキャンダルだ。
さすがに即座に軍が解体されることはないが、軍がこれまで犠牲を払ってでも推し進めてきた作戦が否定されかねない。
軍が女神の怒りを買ったためその長である将軍のギフトが取り上げられた。そんな解釈がされてしまっては最悪だ。
その可能性があると考えられるだけでもマズい。
なぜなら、もうすぐ邪神軍との戦争が控えているのをオレは知っているからだ。
今、軍の影響力が落ちることは絶対に避けなければならない。
だから将軍はここまで強硬に反応した。
「閣下のご懸念、ごもっともです。ですがご安心ください。私は邪神の呪いを解呪できます」
「信じられん! 今までどんな治癒師にあっても、どんな高価な薬を試そうとダメだったのだぞ!?」
「閣下はお忘れですか? 私は並みの治癒師ではありません。ギフトを進化させた聖者です。論より証拠。まずは邪神の呪いを解呪してしまいましょう」
「なに!?」
「手をお貸しください。治ればそれでよし、治らなくても今のまま。状態の悪化はありません」
「うむ……」
アルトマイヤー将軍は少し考えるような表情を見せると、剣を引いて手を差し出した。
「すぐに治りますよ」
オレはアルトマイヤー将軍の手を握ると、聖力を将軍の手に叩き込む。
「くっ!?」
「もうすぐです」
コルネリアたちに比べると軽い初期段階だったからか、邪神の呪いはすぐに解呪できた。
「終わりました。ギフトも使えるはずです」
「もうか!?」
アルトマイヤー将軍がジッと自分の手を見た。
すると、アルトマイヤー将軍の手から炎があがる。間違いなく将軍のギフトの力だ。
「ギフトが!? 使える! 使えるぞ! ははは! 女神は儂を、軍を、我が国を見捨てていなかった! 神に感謝を!」
アルトマイヤー将軍が、盛大に両腕を掲げてまるで待ちに待った雨に感謝する農夫のように天を仰ぎ見た。そのグレーの瞳からは、一筋の涙が流れていた。
アルトマイヤー将軍の喜びはオレには計り知れない。おそらく、将軍には背負うものが多すぎるのだ。
「感謝する! 感謝するぞ、バウムガルテン子爵! 今までの無礼を謝ろう! これで軍は救われた! 子爵のおかげだ! 子爵の功績は計り知れない! 地獄で百万の軍勢を得た気持ちだ! ああ、口が上手くない我が身が恨めしいほどだ!」
「おおぅ……」
すごい熱量の感謝だ。今までの突き放した態度が嘘のように変わっていた。
「閣下のお役に立てて幸いでした」
「なにを水臭い! どうすればこの感謝を表せられるか……。そうだな、貴君には報酬が必要だな! 貴君の比類ない働きには、それに報いるための報酬が必要だ!」
「あの閣下……? 金銭の受け渡しは教会の目もありますので……。それに、私としても得るものはありました。あまりお気になさらず……」
「水臭いことを言ってくれるな。儂にできることは限られているが……。ふむ、貴君への報酬はアレにしよう。きっと喜んでくれるはずだ」
「閣下?」
「まあこの死にぞこないに任せておけ! 損はさせんぞ!」
なんだか予想外のことになってきたな?
報酬を貰えるなら貰うが、なにをくれるんだ?
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