【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)

文字の大きさ
上 下
3 / 86

003 説教(物理)

しおりを挟む
 悪魔に魂を売る覚悟を決めたオレ。悪魔に魂を売る程度でコルネリアを助けることができるのなら安いものだ。

 そんなオレの目の前には、怯えを含んだ疑心暗鬼の表情を浮かべた子供たちが居た。オレが集めさせた領内に居る三歳から十五歳の子供たちだ。

「聞け!」

 ざわざわとざわめきを切り裂いて、オレの甲高い声が響き渡った。

「お前たちには、これから教育を受けてもらう」
「教育?」
「オラたちをどうするだ?」

 集められた中でも年長の者が疑問の声をあげた。貴族の話を遮るのは褒められた行為ではない。だが、元々この領では礼儀などあって無きがごとしだ。いちいち注意してても始まらない。

 まぁ、これからはそうはいかんがな。

 偉ぶるなんて趣味じゃないし、辛い生活だけど皆仲良しみたいな牧歌的なこの領の雰囲気は好きだが、これもいたしかたない。

「主に礼儀や文字の読み書き、算術、そして体術などを予定している。お前たちは、教育されたことを活かして、他領に出稼ぎに出てもらうつもりだ」
「出稼ぎ……」
「それなら今でもやってるけど……」

 元々貧しい領地だ。出稼ぎに出ているものは多い。

「今のままではロクな仕事に付けん! 文字の読み書きができれば、今よりも良い給料の仕事に就ける! 礼儀を身につければ、算術ができれば、強ければ! お前たちが教育を受けるのは、より良い仕事に就き、給料を上げるためだ! つまり、がんばればがんばるほど、お前たちの将来の給料は上がっていく!」
「「おぉー!」」

 教育費だとか、養育費だとか、マイナスなことは言わない。やる気を削ぎたくないからな。

「以上だ! お前たちの努力を期待する!」

 家の使用人は爺と爺の息子。それと母親が連れてきたメイドの三人しかいない。

 メイドにはコルネリアの面倒を見てもらうとして、爺たち二人だけでは子どもの教育はたいへんだろう。オレも子どもたちの教育を手伝うつもりだ。そうしなければ破綻するのは目に見えている。

 オレは算数は日本で習ったし、文字も習得した。礼儀作法も王に謁見する時に爺に叩き込まれたからな。オレも子どもたちを教えることができる。

 もっとも、オレが教えられるのはあと二年程度だろう。七歳になれば、オレは神からギフトを授かる。このギフトが治癒の能力だ。

 ギフトを与えられてからは、オレはギフトの成長にすべてを捧げるつもりだ。子どもたちの教育に係わってる時間はなくなるだろう。


 ◇


「さて、算数の時間だな。今日はオレが教鞭をとる」

 屋敷で一番大きな部屋。ちょっとボロい部屋だが、その中に集められたのは二十五人の子どもたちだ。彼らには長机と椅子が与えられていた。急遽用意したが、一応教室にはなっているだろう。

 これから彼らに算数を教えることになるんだが……。

「んでよ、俺が殴ったらソイツ、肥溜めに落ちやがってよ」
「マジかよ、大人に勝つなんてすげーな!」
「俺にかかればそんなもんよ! 今度ここのジジイもぶっとばしてやるぜ!」
「すげー!」

 どこにでもアホっているもんだなぁ……。たぶん十二歳のガキが、自分の武勇伝を高らかに語っていた。いや、オレが年下だからナメてるのか。

 オレは教鞭を持って駄弁ってる奴らの元に向かう。

「私語を慎め」
「んだ? ガキはママのおっぱいでも吸ってろよ」

 オレは教鞭を勢いよく振り抜く。狙いは偉そうにしているガキの顔だ。

「痛ッ!? てめぇなにしやがる! 貴族だかなんだか知らねえが、調子乗ってんじゃねえぞ!」

 ガキが勢いよく椅子から立ち上がった。デカい。オレの倍くらいはありそうだ。

 たしかこいつは沸騰のギフト持ちだったか。水を沸騰させるだけのギフトだが、本人も沸騰しやすいらしい。

「貴族に対する礼がなってないな」

 礼儀の授業はやったはずだが?

 オレは腰に吊っていた短剣を抜いた。

 貴族には無礼打ちが許されている世界だ。これで少しは冷静になるだろう。

「んなもん怖くねえ!」

 過剰な自信からか、ガキがオレに対して腕を振り上げる。こいつ、本物のバカだ。

 だが、オレは剣の達人なんかじゃない。拳を避けて相手を斬るなんて芸当できるわけがない。

「はぁあ!」

 オレにできたのは闇雲に短剣を振るって、ガキの腹を少し斬る程度だった。

 ガツンッと頭に衝撃が走り、体が吹っ飛ばされた。意識が飛んでしまいそうな強烈な一撃だ。意識を失わずに済んだのは、相打ちを覚悟していたからだろう。

「いでええええええ!」

 ガキが騒いでいる。刃物の傷っての痛いからな。

 オレがふらふらになりながら立ち上がると、ガキは腹を抱えてうずくまっていた。

「血が、血が止まんねえええ」
「おい! そこのお前! 爺を呼んで来い!」

 オレは一人を指すと、そいつは怯えた表情をしながらも急いで駆け出した。

 オレはうずくまってるガキに近づくと、その頭を蹴り上げる。

「貴様! 貴族に手をあげるとは何事だ! このまま殺してもいいんだぞ?」
「こ、殺さないでくれぇ~。頼むよ、それだけは勘弁してくれぇ~」
「それはお前のこれからの態度次第だ」

 オレはそれだけ言うと、振り返って怯えた様子でこちらを見る子どもたちに言い渡す。

「貴様らもこうなりたくなければ勉学を励むことだな!」

 その後到着した爺によって、ガキは傷口を縫われた。無論、麻酔など無い。ガキは泣きながら傷を縫われていた。

 こんなのでも大事な資源だからな。

 この事件の後、子どもたちが素直に言うことをきくようになったのは嬉しい誤算だな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

死にかけたら謎のステータスが見える様になった件。

メカ
ファンタジー
大学二回生の青年「掛井 嗣仁」は、ある日事故に合う。 凡そ1か月後、目を覚ました彼の眼には「謎の数字」が見えていた。 そして「ソレ」が次第に、彼の生活を崩壊させていく・・・。 元の生活に戻る為、何も分からないまま歩み続けるしかなかった・・・。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

【完結】優しき世界にゼロ点を 〜Sランクヒーラーだった俺、美少女を蘇生した代償に回復能力を失いました〜

七星点灯
ファンタジー
「ヒーラーなんて、ゼロ点しか貰えませんよ」  そこは魔法を取り入れた現代日本。攻撃、回復、防御、それらは学問となっている。魔物や厄災の巣食うこの世界では、冒険者という勇敢な人間だっている。 そんな優しい世界の物語。  一般的な容姿の青年、アスト・ユージニアはかつて神童と呼ばれ、Sランクパーティのヒーラーとして活躍していた。しかし突如襲来したドラゴンによってパーティはアスト以外全滅し、孤独の放浪者となる。  約数年後……  彼はドラゴンを倒すため学園に通うこととなる。なんとかギリギリで入学試験を突破し、当初の予定とは異なる『回復学部』に入学。そして入学式後、学園長にこんなお願いをされた。  「お前には彼女達の教師になってほしい。その回復学の知識で教え、導いてほしいのさ」  いよいよ始まる学園生活…… *この作品は『カクヨム』『pixiv』『小説家になろう』にも掲載しています

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

ギフト争奪戦に乗り遅れたら、ラストワン賞で最強スキルを手に入れた

みももも
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたイツキは異空間でギフトの争奪戦に巻き込まれてしまう。 争奪戦に積極的に参加できなかったイツキは最後に残された余り物の最弱ギフトを選ぶことになってしまうが、イツキがギフトを手にしたその瞬間、イツキ一人が残された異空間に謎のファンファーレが鳴り響く。 イツキが手にしたのは誰にも選ばれることのなかった最弱ギフト。 そしてそれと、もう一つ……。

処理中です...