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117 ブランディーヌ
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「アベルッ!?」
エレオノールに向けて大剣を振りかぶっていたブランディーヌ。オレはブランディーヌの大剣を振り下ろさせるわけにはいかないと、ブランディーヌに躍りかかる。
ブランディーヌはクルリと器用に大剣を回してオレの剣戟を防ぐと、憎悪の表情でオレを睨みつけてきた。
「くそッ! よくもクロードとセドリックを! 絶対に許さんぞッ!」
いつもの似非お嬢様言葉はどこに行ったのか、歯を剥き出しにして憤怒の表情を浮かべるブランディーヌ。顔を真っ赤にして、なんだかサルみたいだ。
だが、その剣技のレベルは、断じてサルではありえない。オレを力任せに弾き飛ばすと、追撃の大剣が迫る。
クソッ! 大剣を小枝みたいに振り回しやがって! この筋肉ゴリラめッ!
オレは辛うじて迫りくる漆黒の大剣に剣を合わせる。剣の柄と刃先を両手で掴み、全力で自分の身を守った。
ガギギィィイイインッ!
けたたましい金属音が響き渡り、オレはまるで後方に引っ張られるようにぶっ飛ばされた。
「アベルさん!?」
なんとか転ぶことなく両足で着地したオレに、ブランディーヌが躍りかかってくる。イノシシかよ。大剣を頭の後ろにまで振りかぶった振り下ろし。さすがに剣で受けるには荷が重い。
「エル! お前はジゼルたちの援護を!」
「は、はいっ!」
オレは短く指示を出すと、サイドステップを踏み回避を試みた。しかし……。
「キェェェェェッ!」
まるでサルのような猿叫を上げて大剣を振り下ろすブランディーヌ。いつもの似非お嬢様みたいな態度などどこにもない。それだけブランディーヌの奴が本気だということだ。
「ッ!?」
サイドステップで避けているのに、ブランディーヌの大剣が、まるでオレに吸い付くように寄ってくる。このままではマズイ……ッ!
「ぜああああああああああッ!」
オレは地面に着いた右足を軸に、体を前方斜め上方向に回転させる。丁度、ブランディーヌの大剣を“極光の担い手”で撃ち返そうとする形だ。
「ああああああああああああッ!」
無理な挙動に右脚、腰が悲鳴を上げるのを無視し、オレは“極光の担い手”を降り来る漆黒の大剣へとぶつける。
ガギィンッ!!
両の剣がぶつかり合い。けたたましい金属音を打ち鳴らした。
だが、質量のまるで違う大剣と片手剣だ。振り下ろした加速度も相まって、ブランディーヌの大剣を止めきることができない。
ピシッ! パリィィイイインッ!
まるでガラスが割れたような澄んだ音を響く。その瞬間、急に右手が軽くなり、右腕を振り抜けた。オレの愛剣である片手剣の宝具“極光の担い手”が砕かれたのだ。
まさか、ブランディーヌの一撃で砕かれるとは……ッ!
しかし、“極光の担い手”は最後の仕事を果たした。“極光の担い手”とぶつかることで、ブランディーヌの大剣は軌道を変えたのだ。それにより、オレはブランディーヌの一撃を躱すことができた。
ズガァアアンッ!
ブランディーヌの大剣が空を切り、けたたましい音を立てて地面にぶち当たる。
もうもうと土煙が上がり、地面には薄っすらとクレーターのようなものができていた。なんて威力だよ。
オレは右足一本で大きくバックステップを踏み、ブランディーヌから距離を取る。
そんなオレを嘲笑うように、ブランディーヌがゆっくりと体を起こした。武器を失くした間抜けを嗤っているのだろう。
「いひひっ! かっこよく助太刀とはいかなかったようね! あんたは気が済むまで嬲り殺してやるわ! クロードとセドリックの仇よ!」
クロードは既に死んでいるが、セドリックはまだギリギリ生きてるんだがなぁ。
「こりゃ驚いたな。お前に仲間を思いやる心なんてあったのかよ?」
「これまで大切に育ててきた駒ですもの。高くつくわよ?」
「仲間を駒扱いか……」
育てたのはブランディーヌではなくオレなのだが。まぁ、そのへんはブランディーヌのおめでたい頭で自分の都合のいいように曲解されているのだろう。今更、現実を教えてやる義理も無いか。
「クロードとセドリックには、まだ使い道があったのに。もったいないことするわね。でも、いいわ。ようやく目障りだったお前を殺すことができるんですもの。さっそく甚振ってあげるわ。許しを請うなら今の内よ?」
「一思いに殺さないのか?」
「あんたには、金を出してもらわないとね。金を出したら殺してあげるわ。ふふふははっ! あんたはいつまで保つかしらねぇ?」
ブランディーヌの中では、オレが剣を失った段階で、もはや勝敗は決しているのだろう。すがすがしいまでにナメ腐ってやがる。
まぁ、オレの剣術はブランディーヌには及ばないし、剣を持っていてもナメられていたかもな。
「お前はいつから自分の勝利は動かないと錯覚してやがるんだ?」
「ガハハハ! あんた、自分の弱さを自覚してなかったの? あのバカみたいな威力のクロスボウが無いあんたなんて、まったく、これっぽっちも脅威じゃないのよ! そして、クロスボウをクロードに使った今、あんたにはなにもできないの!」
「果たしてそうかな?」
オレは、折れた“極光の担い手”を補うように深淵の収納空間を展開する。実戦では初めてだが、たぶんいけるだろう。
エレオノールに向けて大剣を振りかぶっていたブランディーヌ。オレはブランディーヌの大剣を振り下ろさせるわけにはいかないと、ブランディーヌに躍りかかる。
ブランディーヌはクルリと器用に大剣を回してオレの剣戟を防ぐと、憎悪の表情でオレを睨みつけてきた。
「くそッ! よくもクロードとセドリックを! 絶対に許さんぞッ!」
いつもの似非お嬢様言葉はどこに行ったのか、歯を剥き出しにして憤怒の表情を浮かべるブランディーヌ。顔を真っ赤にして、なんだかサルみたいだ。
だが、その剣技のレベルは、断じてサルではありえない。オレを力任せに弾き飛ばすと、追撃の大剣が迫る。
クソッ! 大剣を小枝みたいに振り回しやがって! この筋肉ゴリラめッ!
オレは辛うじて迫りくる漆黒の大剣に剣を合わせる。剣の柄と刃先を両手で掴み、全力で自分の身を守った。
ガギギィィイイインッ!
けたたましい金属音が響き渡り、オレはまるで後方に引っ張られるようにぶっ飛ばされた。
「アベルさん!?」
なんとか転ぶことなく両足で着地したオレに、ブランディーヌが躍りかかってくる。イノシシかよ。大剣を頭の後ろにまで振りかぶった振り下ろし。さすがに剣で受けるには荷が重い。
「エル! お前はジゼルたちの援護を!」
「は、はいっ!」
オレは短く指示を出すと、サイドステップを踏み回避を試みた。しかし……。
「キェェェェェッ!」
まるでサルのような猿叫を上げて大剣を振り下ろすブランディーヌ。いつもの似非お嬢様みたいな態度などどこにもない。それだけブランディーヌの奴が本気だということだ。
「ッ!?」
サイドステップで避けているのに、ブランディーヌの大剣が、まるでオレに吸い付くように寄ってくる。このままではマズイ……ッ!
「ぜああああああああああッ!」
オレは地面に着いた右足を軸に、体を前方斜め上方向に回転させる。丁度、ブランディーヌの大剣を“極光の担い手”で撃ち返そうとする形だ。
「ああああああああああああッ!」
無理な挙動に右脚、腰が悲鳴を上げるのを無視し、オレは“極光の担い手”を降り来る漆黒の大剣へとぶつける。
ガギィンッ!!
両の剣がぶつかり合い。けたたましい金属音を打ち鳴らした。
だが、質量のまるで違う大剣と片手剣だ。振り下ろした加速度も相まって、ブランディーヌの大剣を止めきることができない。
ピシッ! パリィィイイインッ!
まるでガラスが割れたような澄んだ音を響く。その瞬間、急に右手が軽くなり、右腕を振り抜けた。オレの愛剣である片手剣の宝具“極光の担い手”が砕かれたのだ。
まさか、ブランディーヌの一撃で砕かれるとは……ッ!
しかし、“極光の担い手”は最後の仕事を果たした。“極光の担い手”とぶつかることで、ブランディーヌの大剣は軌道を変えたのだ。それにより、オレはブランディーヌの一撃を躱すことができた。
ズガァアアンッ!
ブランディーヌの大剣が空を切り、けたたましい音を立てて地面にぶち当たる。
もうもうと土煙が上がり、地面には薄っすらとクレーターのようなものができていた。なんて威力だよ。
オレは右足一本で大きくバックステップを踏み、ブランディーヌから距離を取る。
そんなオレを嘲笑うように、ブランディーヌがゆっくりと体を起こした。武器を失くした間抜けを嗤っているのだろう。
「いひひっ! かっこよく助太刀とはいかなかったようね! あんたは気が済むまで嬲り殺してやるわ! クロードとセドリックの仇よ!」
クロードは既に死んでいるが、セドリックはまだギリギリ生きてるんだがなぁ。
「こりゃ驚いたな。お前に仲間を思いやる心なんてあったのかよ?」
「これまで大切に育ててきた駒ですもの。高くつくわよ?」
「仲間を駒扱いか……」
育てたのはブランディーヌではなくオレなのだが。まぁ、そのへんはブランディーヌのおめでたい頭で自分の都合のいいように曲解されているのだろう。今更、現実を教えてやる義理も無いか。
「クロードとセドリックには、まだ使い道があったのに。もったいないことするわね。でも、いいわ。ようやく目障りだったお前を殺すことができるんですもの。さっそく甚振ってあげるわ。許しを請うなら今の内よ?」
「一思いに殺さないのか?」
「あんたには、金を出してもらわないとね。金を出したら殺してあげるわ。ふふふははっ! あんたはいつまで保つかしらねぇ?」
ブランディーヌの中では、オレが剣を失った段階で、もはや勝敗は決しているのだろう。すがすがしいまでにナメ腐ってやがる。
まぁ、オレの剣術はブランディーヌには及ばないし、剣を持っていてもナメられていたかもな。
「お前はいつから自分の勝利は動かないと錯覚してやがるんだ?」
「ガハハハ! あんた、自分の弱さを自覚してなかったの? あのバカみたいな威力のクロスボウが無いあんたなんて、まったく、これっぽっちも脅威じゃないのよ! そして、クロスボウをクロードに使った今、あんたにはなにもできないの!」
「果たしてそうかな?」
オレは、折れた“極光の担い手”を補うように深淵の収納空間を展開する。実戦では初めてだが、たぶんいけるだろう。
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