【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)

文字の大きさ
上 下
19 / 124

019 パチパチ

しおりを挟む
「「「「「「おぉー……!」」」」」」

 パチパチパチパチパチパチパチパチッ!

 気が付いたら、井戸の周りで洗濯していた奥様方が、オレを見てどよめいたような歓声を上げていた。拍手までしている奴もいる。広場と云っても、真ん中に井戸があるだけの集合住宅に囲まれた狭い広場だ。耳をすまさななくてもオレたちの会話なんて丸聞こえだったんだろうが……なんでこんなに注目されてるんだ?

「あんた、やるじゃないか」

 おばちゃんと言ってもいいだろう年齢の女が、イイネとばかりにオレに親指を立ててみせる。何言ってるんだ、このおばちゃん?

「ありゃどこの誰と誰だい?」
「1人は冒険者さんみたいだけど、もう1人は……」
「ボロ着てるし、教会の子じゃないかい?」
「そうかもねぇ。でも綺麗な子じゃないか」
「あんなに綺麗なら、どっかの大店の旦那のお妾さんになった方がいいんじゃなぁい? 年も離れてるし、冒険者なんて、いつおっ死んじまうか分からないし……」
「でも見て。あの冒険者さん、地味な格好だけど仕立ての良い服着てるじゃないか。羽振りがいいんじゃない?」
「迷いどころねぇ……。あのお嬢ちゃんはどうするのかしら?」
「お嬢ちゃん、女は度胸よ!」

 井戸の周りに居る奥様方が、洗濯している手を止めずに、ガヤガヤと勝手に喋っている。その目はオレとイザベルの間を行ったり来たりしていた。オレたちのことを囃し立てているみたいだが、奥様方の話を聞いていると、なんだか話が見えてこない。オレはイザベルに謝罪しているだけなのだが……妾? 羽振り? どうしてそんな言葉が出てくるんだ? 訳が分からない。

 イザベルも困惑しているのか、困ったような顔で奥様方とオレを交互に見ている。その顔は、だんだんと赤みが増していき、もうこれ以上ないくらい真っ赤だ。よく見ると、目尻に今にも溢れてしまいそうなほど涙が溜まっているのが分かる。

 奥様方の噂の標的にされて恥ずかしいのか、それとも泣くほどオレに対して怒りを感じているのか……。判断が付かないな。

 イザベルの顔色を窺っていると、ふとイザベルの虹の瞳と目が合った。イザベルは目を見開き、これ以上ないと思われていた頬の赤みを更に加速させる。その口はなにか言葉を紡ごうとして開かれ、しかし言葉にならず、わなわなと震えている。

 どれほどイザベルと見つめ合っただろう。先に目を逸らしたのは、イザベルだった。オレの視線から逃れるように、バッと下を向いて俯いてしまう。

 イザベルは強気な少女かと思っていたんだが……その姿は、まるで先程までと違う。とてもしおらしい乙女に見えた。もしかすると、今までの強気な態度は虚勢で、これが本来の彼女の姿なのかもしれないな。

「叔父さん……」

 頭の中でイザベルの評価を改めていると、地を這うようなクロエの声が聞こえてきた。驚いてイザベルから視線を外しクロエを見ると、まるで曇りガラスのように光の無い無機質な黒い瞳と目が合う。喜怒哀楽、情というものが窺えない仮面のような、生気をまるで感じさせない表情。なんだか本能的な恐怖を感じる姿だ。

「クロエ……?」

 不安になって呼びかけると、ミシミシと音が聞こえてきそうなほどゆっくりとクロエの表情が変わっていく。眉を寄せて現れるのは、怒と哀の表情だ。クロエは怒り悲しんでいる。

「叔父さんの……ッ!」

 一瞬クロエの姿が消えたように見えた。だが違う。クロエが過度な前傾姿勢でこちらに向かって駆けてきて、あっという間にオレとの距離を潰す。

 オレはこれでも長年冒険者をやってる身だ。自分の間合いというものを把握しているし、相手の間合いもなんとなく分かる。オレの胸くらいまでしか身長の無いクロエだ。腕の長さが違う分、当然オレの間合いの方が広い。

 しかし、そのリーチの差を活かす前に、一瞬にしてクロエに距離を詰められてしまった。もうほとんどオレにくっつくような距離だ。ここまでくると、今度はオレの間合いの広さが逆に仇となる。近すぎるのだ。

 オレには近すぎて逆に力を発揮できない不自由な距離。しかし、クロエにとっては最高の間合い。

 仮にも現役の冒険者であるオレの懐に潜り込むとは……ッ!

 油断もしていたし、警戒もしていなかった。だが、こうも易々と間合いを潰されると、クロエのことを過小評価していたと認めざるをえない。

 クロエは磨けば光るものを持っている。そう確信させるに足る鋭い接近だ。これはクロエの大きな武器になるだろう。オレはクロエの評価を上方修正する。

 オレとクロエの距離は、もう密着と表現してもいいほど縮まっている。オレは来る衝撃に備えて、少し体の重心を下げた。転んでは格好悪いからな。しかし、なぜ今クロエはオレの胸に飛び込んでくるんだ? 昔みたいにタックルして抱き付いてくるのだろうか? だが、なぜ今なんだ?

 先程見たクロエのガラス玉のような瞳が頭を過る。クロエの情緒が分からない。クロエはなにがしたいんだ?

 その答えは二度の刺すような鋭い衝撃と共に訪れた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...