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052 これがあれば……ッ!
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使い魔の模擬戦の時間。以前は嫌いで仕方がなかったが、今はとても待遠しかった。理由は簡単、早く新しく覚えた影を操る魔法『操影』を模擬戦で試してみたいのだ。我は珍しくうずうずしている。
「ではこれより模擬戦を開始する。最初は、ハーシェ君とルーデルチ君だ」
「「はい」」
「いくわよ、クロ」
アリアに続いて前に出る。ルサルカとイノリスが前に出る姿が見える。初っ端、しかも相手がイノリスとは、相手にとって不足はない。イノリスはこれまで無敗だ。一回引き分けはあるが、後は全て勝利で飾っている。クラス最強の使い魔と言ってもいいだろう。
「では、両者位置について」
先生に促され、アリアの前、開始位置につく。
「分かってるわね? 最初が肝心よ」
「分かっている」
アリアの言葉に頷き、開始の時を待つ。
「では、始め!」
開始の合図が聞こえた瞬間、我は実体化と操影の魔法を自分の影に使う。自分の影を操り、自分を丸く包み込む様に展開する。早さが重要だ。歪でも良いのでとにかく早く展開する。周りから見たら、我が突然黒い球体に取り込まれたように見えただろう。
「へぶっ!」
展開が完了した瞬間、息を付く暇もなく強い衝撃に襲われ、我の体が左側の影の壁に叩きつけられた。体を殴り飛ばされたのではない。イノリスが影のドームを殴った衝撃でよろめき、左の壁にぶつかっただけだ。
イノリスは開始と同時に高速で相手に肉薄し、相手を殴り飛ばすことを得意としている。イノリスの模擬戦を見ていると、イノリスの初手は必ずそうだった。身体能力を強化したイノリスの速度は脅威だ。生半可な回避では間に合わない。たぶん我では回避できないだろう。だから、我は回避ではなく、防御することにした。
「うおっ!」
イノリスが自分の一撃を防がれたことで、追撃を繰り出してきた。その度に影のドームが殴られた衝撃で動き、中にいる我はドームの内側に叩きつけられることになった。けっこう痛い。なんだか自分がイノリスの玩具になったような気分だ。傍から見たら、イノリスが半球状の玩具にじゃれ付いているように見えたかもしれない。
「この……調子に乗るなよッ!」
我は影のドームを操り、イノリスに向けて槍の様に鋭い突きを放つ。六度放つが、全て回避されてしまった。しかし、距離が空いたためイノリスの攻撃が止む。漸く息をつく暇を得た。この隙に我は伸びた影の槍を回収し、ドームをトゲトゲに加工していく。ふっふっふ、これで下手に手が出せまい。イノリスの弱点は遠距離攻撃の手段が無いことだ。肉弾戦にはめっぽう強いが、こういう搦め手は苦手だろう。
しばし、イノリスと影を挟んで睨み合う。イノリスは攻めあぐねているようだ。我はイノリスに意識を集中する。正確にはイノリスの影に意識を集中していく。
「喰らえっ!」
イノリスの影を実体化し、操る。イメージするのは硬い柱だ。影の柱を下からイノリスの顎に打ち付ける。予想外の一撃だったのか、意識外の衝撃を受けたイノリスの身体が仰け反り、ビクリと震える。だが、まだ足りない。
「まだまだぁッ!」
イノリスの影を操り、イノリスの身体を影で覆っていく。頑丈さに重きを置いた影だ。いくらイノリスの身体能力でも抜け出せまい。自分の身体が絡め取られているのに気が付いたイノリスが暴れる。
「グアァアアアアァッ!」
ピシピシッ―――!
イノリスの力に耐えかねて、イノリスを覆っていた影にヒビが走った。
マジか!? 我は新たにイノリスの影を実体化し、イノリスを更に覆い、硬め、身動きを取れなくしていく。
「イノリス!」
ルサルカがイノリスを覆う影目掛けて石の槍の魔術を放つ。石の槍が命中した箇所の影が少し削られるが、それだけだ。我は影を操り、ヒビ割られた影や削られた影をすぐに補修し、更にイノリスの身体を影で覆っていく。
「クロ、いくわよ! とばりッ!」
アリアの魔術が発動し、イノリスの周りが暗くなる。我はアリアの魔術によりできた影を実体化する。イノリスを含む空間が影に飲まれる。ここまで厚い影に覆われれば、流石のイノリスでも抜け出すことはできまい。以前、使用を禁じられた戦法だが、呼吸ができないのが問題であって、影を操り、顔を出して呼吸できるようにしてやれば良い。影の中から現れたイノリスの顔は、なんとも情けない顔をしていた。
「にゃー……」
「そこまで! ハーシェ君の勝利とする」
先生により、我らの勝利が告げられた。やった! イノリスに勝ったぞ!
「クロー! やったわ! ってこの影の実体化の魔法解いてよ」
アリアが我に駆け寄ってきたが、影のドームの前で右往左往している。そうだな、もう模擬戦も終わったし、解除しなくては。我は影の実体化の魔法を解いていく。影のドームが消え、イノリスを拘束していた影も姿を消す。
「やったわクロ! 私たち、やればできるじゃない!」
影のドームが消えた途端に、アリアに抱え上げられて抱きしめられた。ちょっと苦しい。アリアはイノリスに勝てたことがよっぽど嬉しいらしい。我も嬉しい。これまで模擬戦では負け続きだったが、今回はクラス最強のイノリスに勝てたのだ。これは実質、我が一番強いということではないか? 違うか。
あのイノリスにも勝利できる力。これがあれば……ッ!。
「ではこれより模擬戦を開始する。最初は、ハーシェ君とルーデルチ君だ」
「「はい」」
「いくわよ、クロ」
アリアに続いて前に出る。ルサルカとイノリスが前に出る姿が見える。初っ端、しかも相手がイノリスとは、相手にとって不足はない。イノリスはこれまで無敗だ。一回引き分けはあるが、後は全て勝利で飾っている。クラス最強の使い魔と言ってもいいだろう。
「では、両者位置について」
先生に促され、アリアの前、開始位置につく。
「分かってるわね? 最初が肝心よ」
「分かっている」
アリアの言葉に頷き、開始の時を待つ。
「では、始め!」
開始の合図が聞こえた瞬間、我は実体化と操影の魔法を自分の影に使う。自分の影を操り、自分を丸く包み込む様に展開する。早さが重要だ。歪でも良いのでとにかく早く展開する。周りから見たら、我が突然黒い球体に取り込まれたように見えただろう。
「へぶっ!」
展開が完了した瞬間、息を付く暇もなく強い衝撃に襲われ、我の体が左側の影の壁に叩きつけられた。体を殴り飛ばされたのではない。イノリスが影のドームを殴った衝撃でよろめき、左の壁にぶつかっただけだ。
イノリスは開始と同時に高速で相手に肉薄し、相手を殴り飛ばすことを得意としている。イノリスの模擬戦を見ていると、イノリスの初手は必ずそうだった。身体能力を強化したイノリスの速度は脅威だ。生半可な回避では間に合わない。たぶん我では回避できないだろう。だから、我は回避ではなく、防御することにした。
「うおっ!」
イノリスが自分の一撃を防がれたことで、追撃を繰り出してきた。その度に影のドームが殴られた衝撃で動き、中にいる我はドームの内側に叩きつけられることになった。けっこう痛い。なんだか自分がイノリスの玩具になったような気分だ。傍から見たら、イノリスが半球状の玩具にじゃれ付いているように見えたかもしれない。
「この……調子に乗るなよッ!」
我は影のドームを操り、イノリスに向けて槍の様に鋭い突きを放つ。六度放つが、全て回避されてしまった。しかし、距離が空いたためイノリスの攻撃が止む。漸く息をつく暇を得た。この隙に我は伸びた影の槍を回収し、ドームをトゲトゲに加工していく。ふっふっふ、これで下手に手が出せまい。イノリスの弱点は遠距離攻撃の手段が無いことだ。肉弾戦にはめっぽう強いが、こういう搦め手は苦手だろう。
しばし、イノリスと影を挟んで睨み合う。イノリスは攻めあぐねているようだ。我はイノリスに意識を集中する。正確にはイノリスの影に意識を集中していく。
「喰らえっ!」
イノリスの影を実体化し、操る。イメージするのは硬い柱だ。影の柱を下からイノリスの顎に打ち付ける。予想外の一撃だったのか、意識外の衝撃を受けたイノリスの身体が仰け反り、ビクリと震える。だが、まだ足りない。
「まだまだぁッ!」
イノリスの影を操り、イノリスの身体を影で覆っていく。頑丈さに重きを置いた影だ。いくらイノリスの身体能力でも抜け出せまい。自分の身体が絡め取られているのに気が付いたイノリスが暴れる。
「グアァアアアアァッ!」
ピシピシッ―――!
イノリスの力に耐えかねて、イノリスを覆っていた影にヒビが走った。
マジか!? 我は新たにイノリスの影を実体化し、イノリスを更に覆い、硬め、身動きを取れなくしていく。
「イノリス!」
ルサルカがイノリスを覆う影目掛けて石の槍の魔術を放つ。石の槍が命中した箇所の影が少し削られるが、それだけだ。我は影を操り、ヒビ割られた影や削られた影をすぐに補修し、更にイノリスの身体を影で覆っていく。
「クロ、いくわよ! とばりッ!」
アリアの魔術が発動し、イノリスの周りが暗くなる。我はアリアの魔術によりできた影を実体化する。イノリスを含む空間が影に飲まれる。ここまで厚い影に覆われれば、流石のイノリスでも抜け出すことはできまい。以前、使用を禁じられた戦法だが、呼吸ができないのが問題であって、影を操り、顔を出して呼吸できるようにしてやれば良い。影の中から現れたイノリスの顔は、なんとも情けない顔をしていた。
「にゃー……」
「そこまで! ハーシェ君の勝利とする」
先生により、我らの勝利が告げられた。やった! イノリスに勝ったぞ!
「クロー! やったわ! ってこの影の実体化の魔法解いてよ」
アリアが我に駆け寄ってきたが、影のドームの前で右往左往している。そうだな、もう模擬戦も終わったし、解除しなくては。我は影の実体化の魔法を解いていく。影のドームが消え、イノリスを拘束していた影も姿を消す。
「やったわクロ! 私たち、やればできるじゃない!」
影のドームが消えた途端に、アリアに抱え上げられて抱きしめられた。ちょっと苦しい。アリアはイノリスに勝てたことがよっぽど嬉しいらしい。我も嬉しい。これまで模擬戦では負け続きだったが、今回はクラス最強のイノリスに勝てたのだ。これは実質、我が一番強いということではないか? 違うか。
あのイノリスにも勝利できる力。これがあれば……ッ!。
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