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001 アリア視点 退学処分
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「アリア・ハーシェ、君を退学処分にする」
あぁ……。
私は今朝から続いていた嫌な予感が見事的中したことを知った。全然嬉しくない。むしろハズレてほしかった……。
ここは王立魔道学院の学院長室。赤い絨毯の敷かれた大きな執務机の向こうで、ハゲで太ったおじさんが椅子に座りながら、机の上で指を組んで私を睨みつけてくる。額縁に飾られた歴代の学院長の肖像画も、まるで私を見下しているようで嫌な感じだ。
「我々も君には期待していたのだよ? 簡易魔力検査で21点もの点数を叩き出した君にはね」
そう。私は、生まれ故郷の村で実施された簡易魔力検査で、とんでもない高得点を出してしまった。今思えば、あの時から私の人生は狂ってしまったのだ。
「それが、放出口が1しかない欠陥品だとはな」
学院長が、フンッと鼻を鳴らして、私を見る目が更に厳しくなった。
魔術を扱う力である魔力は、3つの項目の総合得点で評価される。
魔術の源であるマナを体に取り込む能力:供給口
体内にマナを溜め込める量:魔力量
体内に溜めたマナを体の外に出す能力:放出口
それぞれが1~10の10段階で評価され、個人の持つ魔力の素養を計る目安となっている。
聞いたところによると、魔力の平均点は、10点ほどらしい。その倍以上の点数を持つ私は、たしかに学院長の言う通り、期待されていたのだろう。
しかし、期待はすぐに失望へと変わった。
学院に入学してから実施された精密魔力検査。その結果判明した私の魔力がこれだ。
供給口:10
魔力量:10
放出口:1
こんなに偏るのは珍しいらしい。嫌なレアを引いてしまった。放出口が1では、第一位階の魔術しか使えないことになる。第一位階の魔術なんて、実戦では使えない子ども騙しのような魔術ばかりしかない。
いくら高い魔力回復力と魔力量を持っていても、使える魔術が第一位階だけでは、宝の持ち腐れ……いいえ、魔力の持ち腐れね。
そのことが、今回の退学騒動とも関係している。
「それでも我々は君に期待して2年もの間教育を施してやった。万が一、億が一の可能性ではあるが、君が優秀な使い魔を召喚する可能性があったからだ。それがまさか、使い魔召喚の魔術陣すら起動できんクズとは……。我々はつくづく君には失望したよ」
使い魔契約の魔術陣は、今の技術では再現不可能という“失われた技術”で作られた巨大な魔術回路のことだ。その魔術回路は、放出口が1しかない私にとって、起動することもできないほど大き過ぎる代物だった。
それにしても、期待していたのは分かるけどクズって……。相変わらず上から目線でひどい言いようね……。
たしかに、私の魔力の素養は、使い魔召喚の魔術陣も起動できないようなポンコツだけど、魔力が高いからと、私を攫うように強制的に学院に連れてきたクセに。勝手に期待して、勝手に失望して、お貴族様って本当に自分勝手ね。
「よって、アリア・ハーシェ。君を退学処分とする。これまでかかった2年間分の学費を払い、速やかに学院から去るように」
「え……?」
退学処分は仕方ないと思っていた。でも、最後になんでもないように付け加えられた一言に、私は自分の耳を疑うほど驚いた。
「まったく、やはり平民なんぞに期待すること自体が愚かだったのだ……。何をしている? 君はもう当学院の生徒ではない。早くこの由緒正しい学院長室から出ていきたまえ」
「ちょちょ、ちょっと待ってください!」
お貴族様の言葉に異を唱えるなんて、普通じゃ考えられないほどの暴挙だ。だけど、今回ばかりは黙っていられなかった。
「学費……? そんなお金、家には……」
私は辺境の寒村の出だ。家族に金銭的な余裕なんてこれぽっちも無いことは分かっている。学院の授業料は、お貴族様が入学するのを諦めるほど高いなんて有名な話だ。絶対に払えっこない。
「必ず学費は回収する。絶対にだ。金が無いのならば、その身を奴隷にしてでも払ってもらう。粗野ではあるが、君なら高値で売れるかもしれんぞ?」
ハゲおやじの粘り気を帯びた視線が、ジロジロと私の体を上下するのを感じた。気持ち悪い。死ねこのハゲ。
「まぁ、君一人では不足だろうな。君の家族もまとめて売ってしまうか。それでも不足するだろうが……さて、どうするか……」
「そんな……」
私のせいで家族が……。お貴族様の都合で無理やり連れてこられて、勝手に期待されて、勝手に失望されて、いらなくなったら家族まとめて売り飛ばすって……。そんな……そんなの酷過ぎる。あんまりだ。
でも、お貴族様にただの平民が盾突くことなんてできない。そんなことしたら、家族まとめて死刑になっちゃう。どうしたら……どうしたらいいの……?
ハゲデブの姿が不意にぐにゃりと歪む。私、泣いてる。どうすればいいのか分からなくて、悔しくて、惨めで……。誰か助けて……助けてよ……!
「まぁまぁ、学院長。これまで2年もの歳月をかけて教育を施してきたことに比べれば、たった2度の失敗で廃棄するなど、もったいないにもほどがあります。」
助けは意外なところから飛んできた。私の背後から、落ち着いた低い声が聞こえる。振り向くと、背の高い白衣を着た男性の姿が見えた。私の担任の先生だ。
先生は私を助けてくれるの? 先生は、なにを考えているのか分からない、いつも無表情で冷たい印象の人であまり好きではなかったけど、私は先生を期待のまなざしで見てしまう。
先生は、私の視線に気づかないのか、学院長を真っすぐ見て口を開いた。
「従魔契約魔術陣の起動に失敗したからといって、なにか減るものでもありません。ここはハーシェ君が成功するまでやらせてみてはいかがでしょうか?」
まさか先生が学院長に異を唱えるとは思っていなかったのか、学院長の眉が不機嫌そうにピクリと上がるのが見えた。
「グエスタルト君、いいかね? 魔術陣というのは使えば劣化するのだ。これは常識だよ? 彼女は、その貴重な機会を2度も棒に振ったのだ。当然、罰があってしかるべきだろう?」
しかし、学院長の言葉に先生は頭を横に振って溜息を吐いてみせた。
「学院長、貴方の常識には間違いがあります。魔術陣の劣化が確認できるのは、魔術の発動に成功した場合のみです。当学院の長を名乗るのならば、このくらいの常識は弁えていただきたい」
「ぐっ……!」
学院長の顔が怒りに歪み、火が付いたように顔が赤くなった。学院長から鋭い視線が先生に向けられるけど、先生は平然としていた。
「相手は今の技術では再現不可能なアーティファクト。200年以上も正常に稼働してる我々の常識では測れないものです。魔術を発動した際の魔術回路の劣化もあるのかどうか……。あったとしても極小。もしくは、魔術回路の回復機能もあるやもしれません。どちらにしろ、貴方の心配など杞憂ですよ」
先生も学院長もお貴族様だ。私にはよく分からないことだけど、お貴族様の中にも上下があるらしい。普通は学院長の方が偉い気がするのだけど、もしかしたら、貴族としての地位は先生の方が上なのかもしれない。
そう思わせるほど、学院長を怒らせてしまったというのに、先生はいつも通り涼しい顔を浮かべていた。
「……いいだろう……。グエスタルト君がそこまで言うのなら、アリア・ハーシェの使い魔召喚の儀の再挑戦を認めてやろう……」
「ッ!?」
もうこれ以上怒りを顔で表現するのは不可能というほどに歪み切った学院長の顔から、低く地を這うような声が零れる。しかも、その内容に驚いてしまう。私の再挑戦を認める。確かに学院長はそう口にした。つまり、私にはまだチャンスがある!
「しかし! 認めるのは1回だけだッ! 我が学院に無能に付き合っている時間は無いッ! そして、グエスタルト君。私の言葉に異を唱えたのだ。これは貴様への貸しだぞ?!」
学院長が先生に向ける視線は、もはや視線だけで人を殺せそうなほどだった。怖い。見られていない私でも背筋を這うような恐怖を感じるほどの鋭い視線。こんなに怒らせてしまって、先生は大丈夫なのかな……。
「私はただ貴方の間違いを正したに過ぎません。それを貴方がどう思おうと自由ですよ」
そう言って先生は滅多に浮かべない笑みを浮かべてみせた。怖っ! なんで笑えるのよ。助けてもらったのにこんなこと思うのも失礼だけど、先生イカレてる!
「コイツゥ……ッ! もう用は済んだだろう。私は気分が悪い。出ていけ! 今すぐに出ていけッ!」
「では、失礼します」
「し、失礼します……」
怒れる学院長の声に押されるように、先生と私は追い出されるように学院長室の外に出たのだった。
「あの……。先生、大丈夫なんですか……?」
あんなに学院長を怒らせても大丈夫なのだろうか。学院長はお貴族様だ。先生もお貴族様だけど、さすがにマズいんじゃあ……?
「ふんっ。問題あるまい。あんな能無しを学院長に据えている方が問題だ」
能無しって……。私にはお貴族様の事情はよく分からないけど、先生と学院長は仲が悪いことだけはしっかりと分かった。
あぁ……。
私は今朝から続いていた嫌な予感が見事的中したことを知った。全然嬉しくない。むしろハズレてほしかった……。
ここは王立魔道学院の学院長室。赤い絨毯の敷かれた大きな執務机の向こうで、ハゲで太ったおじさんが椅子に座りながら、机の上で指を組んで私を睨みつけてくる。額縁に飾られた歴代の学院長の肖像画も、まるで私を見下しているようで嫌な感じだ。
「我々も君には期待していたのだよ? 簡易魔力検査で21点もの点数を叩き出した君にはね」
そう。私は、生まれ故郷の村で実施された簡易魔力検査で、とんでもない高得点を出してしまった。今思えば、あの時から私の人生は狂ってしまったのだ。
「それが、放出口が1しかない欠陥品だとはな」
学院長が、フンッと鼻を鳴らして、私を見る目が更に厳しくなった。
魔術を扱う力である魔力は、3つの項目の総合得点で評価される。
魔術の源であるマナを体に取り込む能力:供給口
体内にマナを溜め込める量:魔力量
体内に溜めたマナを体の外に出す能力:放出口
それぞれが1~10の10段階で評価され、個人の持つ魔力の素養を計る目安となっている。
聞いたところによると、魔力の平均点は、10点ほどらしい。その倍以上の点数を持つ私は、たしかに学院長の言う通り、期待されていたのだろう。
しかし、期待はすぐに失望へと変わった。
学院に入学してから実施された精密魔力検査。その結果判明した私の魔力がこれだ。
供給口:10
魔力量:10
放出口:1
こんなに偏るのは珍しいらしい。嫌なレアを引いてしまった。放出口が1では、第一位階の魔術しか使えないことになる。第一位階の魔術なんて、実戦では使えない子ども騙しのような魔術ばかりしかない。
いくら高い魔力回復力と魔力量を持っていても、使える魔術が第一位階だけでは、宝の持ち腐れ……いいえ、魔力の持ち腐れね。
そのことが、今回の退学騒動とも関係している。
「それでも我々は君に期待して2年もの間教育を施してやった。万が一、億が一の可能性ではあるが、君が優秀な使い魔を召喚する可能性があったからだ。それがまさか、使い魔召喚の魔術陣すら起動できんクズとは……。我々はつくづく君には失望したよ」
使い魔契約の魔術陣は、今の技術では再現不可能という“失われた技術”で作られた巨大な魔術回路のことだ。その魔術回路は、放出口が1しかない私にとって、起動することもできないほど大き過ぎる代物だった。
それにしても、期待していたのは分かるけどクズって……。相変わらず上から目線でひどい言いようね……。
たしかに、私の魔力の素養は、使い魔召喚の魔術陣も起動できないようなポンコツだけど、魔力が高いからと、私を攫うように強制的に学院に連れてきたクセに。勝手に期待して、勝手に失望して、お貴族様って本当に自分勝手ね。
「よって、アリア・ハーシェ。君を退学処分とする。これまでかかった2年間分の学費を払い、速やかに学院から去るように」
「え……?」
退学処分は仕方ないと思っていた。でも、最後になんでもないように付け加えられた一言に、私は自分の耳を疑うほど驚いた。
「まったく、やはり平民なんぞに期待すること自体が愚かだったのだ……。何をしている? 君はもう当学院の生徒ではない。早くこの由緒正しい学院長室から出ていきたまえ」
「ちょちょ、ちょっと待ってください!」
お貴族様の言葉に異を唱えるなんて、普通じゃ考えられないほどの暴挙だ。だけど、今回ばかりは黙っていられなかった。
「学費……? そんなお金、家には……」
私は辺境の寒村の出だ。家族に金銭的な余裕なんてこれぽっちも無いことは分かっている。学院の授業料は、お貴族様が入学するのを諦めるほど高いなんて有名な話だ。絶対に払えっこない。
「必ず学費は回収する。絶対にだ。金が無いのならば、その身を奴隷にしてでも払ってもらう。粗野ではあるが、君なら高値で売れるかもしれんぞ?」
ハゲおやじの粘り気を帯びた視線が、ジロジロと私の体を上下するのを感じた。気持ち悪い。死ねこのハゲ。
「まぁ、君一人では不足だろうな。君の家族もまとめて売ってしまうか。それでも不足するだろうが……さて、どうするか……」
「そんな……」
私のせいで家族が……。お貴族様の都合で無理やり連れてこられて、勝手に期待されて、勝手に失望されて、いらなくなったら家族まとめて売り飛ばすって……。そんな……そんなの酷過ぎる。あんまりだ。
でも、お貴族様にただの平民が盾突くことなんてできない。そんなことしたら、家族まとめて死刑になっちゃう。どうしたら……どうしたらいいの……?
ハゲデブの姿が不意にぐにゃりと歪む。私、泣いてる。どうすればいいのか分からなくて、悔しくて、惨めで……。誰か助けて……助けてよ……!
「まぁまぁ、学院長。これまで2年もの歳月をかけて教育を施してきたことに比べれば、たった2度の失敗で廃棄するなど、もったいないにもほどがあります。」
助けは意外なところから飛んできた。私の背後から、落ち着いた低い声が聞こえる。振り向くと、背の高い白衣を着た男性の姿が見えた。私の担任の先生だ。
先生は私を助けてくれるの? 先生は、なにを考えているのか分からない、いつも無表情で冷たい印象の人であまり好きではなかったけど、私は先生を期待のまなざしで見てしまう。
先生は、私の視線に気づかないのか、学院長を真っすぐ見て口を開いた。
「従魔契約魔術陣の起動に失敗したからといって、なにか減るものでもありません。ここはハーシェ君が成功するまでやらせてみてはいかがでしょうか?」
まさか先生が学院長に異を唱えるとは思っていなかったのか、学院長の眉が不機嫌そうにピクリと上がるのが見えた。
「グエスタルト君、いいかね? 魔術陣というのは使えば劣化するのだ。これは常識だよ? 彼女は、その貴重な機会を2度も棒に振ったのだ。当然、罰があってしかるべきだろう?」
しかし、学院長の言葉に先生は頭を横に振って溜息を吐いてみせた。
「学院長、貴方の常識には間違いがあります。魔術陣の劣化が確認できるのは、魔術の発動に成功した場合のみです。当学院の長を名乗るのならば、このくらいの常識は弁えていただきたい」
「ぐっ……!」
学院長の顔が怒りに歪み、火が付いたように顔が赤くなった。学院長から鋭い視線が先生に向けられるけど、先生は平然としていた。
「相手は今の技術では再現不可能なアーティファクト。200年以上も正常に稼働してる我々の常識では測れないものです。魔術を発動した際の魔術回路の劣化もあるのかどうか……。あったとしても極小。もしくは、魔術回路の回復機能もあるやもしれません。どちらにしろ、貴方の心配など杞憂ですよ」
先生も学院長もお貴族様だ。私にはよく分からないことだけど、お貴族様の中にも上下があるらしい。普通は学院長の方が偉い気がするのだけど、もしかしたら、貴族としての地位は先生の方が上なのかもしれない。
そう思わせるほど、学院長を怒らせてしまったというのに、先生はいつも通り涼しい顔を浮かべていた。
「……いいだろう……。グエスタルト君がそこまで言うのなら、アリア・ハーシェの使い魔召喚の儀の再挑戦を認めてやろう……」
「ッ!?」
もうこれ以上怒りを顔で表現するのは不可能というほどに歪み切った学院長の顔から、低く地を這うような声が零れる。しかも、その内容に驚いてしまう。私の再挑戦を認める。確かに学院長はそう口にした。つまり、私にはまだチャンスがある!
「しかし! 認めるのは1回だけだッ! 我が学院に無能に付き合っている時間は無いッ! そして、グエスタルト君。私の言葉に異を唱えたのだ。これは貴様への貸しだぞ?!」
学院長が先生に向ける視線は、もはや視線だけで人を殺せそうなほどだった。怖い。見られていない私でも背筋を這うような恐怖を感じるほどの鋭い視線。こんなに怒らせてしまって、先生は大丈夫なのかな……。
「私はただ貴方の間違いを正したに過ぎません。それを貴方がどう思おうと自由ですよ」
そう言って先生は滅多に浮かべない笑みを浮かべてみせた。怖っ! なんで笑えるのよ。助けてもらったのにこんなこと思うのも失礼だけど、先生イカレてる!
「コイツゥ……ッ! もう用は済んだだろう。私は気分が悪い。出ていけ! 今すぐに出ていけッ!」
「では、失礼します」
「し、失礼します……」
怒れる学院長の声に押されるように、先生と私は追い出されるように学院長室の外に出たのだった。
「あの……。先生、大丈夫なんですか……?」
あんなに学院長を怒らせても大丈夫なのだろうか。学院長はお貴族様だ。先生もお貴族様だけど、さすがにマズいんじゃあ……?
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