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009 お姫様
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ってお前かよー!
オレは内心ツッコミを入れる。冒険者ギルドで出会った女達に付いて行った先、待っていたのはリディアだった。
女たちに見覚えがあるはずだ。コイツらリディアのパーティメンバーじゃないか!いっつもリディアが絡んでくるから、リディアの印象が強すぎて忘れてたわ。
此処は、冒険者ギルドからほど近い、わりと大き目な一軒家。おそらく『業火斬』の拠点なのだろう。綺麗に片付いてるし、ちょっとした小物が女の子っぽい。あと良い匂いがする。
「座んな」
「…おう」
女に促されて席に着く。オレの席の向かいにはリディアが座っている形だ。
オレを此処に呼んだ理由は何だ?先程の続きか?リディア一人ではオレに勝てないと踏んで、仲間を呼んだのだろうか?これはちょっとマズイかもな…。
リディア達のパーティは、たしかダンジョンの40階層付近を攻略している実力者パーティだ。さすがに1対5では分が悪い。盾と鎧があればちったー違うんだが……。生憎、今のオレは剣しか持ってない。
これは判断を誤ったかもな。知らない人に付いて行ってはいけませんってやつだな。まさかこの年でそれを実感させられるとは…。
相手はオレを囲んでボコって楽に勝つつもりだろうが、そうはさせるかよ。最低2人は持っていく。
オレが静かに決意を固めていると、オレを此処に連れてきた女達は、席に座らずにリディアの後ろへと移動した。
オレを囲んでボコすつもりじゃないのか?
少なくとも後ろからの奇襲を気にしなくて良くなったのはありがたい。
「姫、連れてきたよ」
「ひゃんっ」
女の一人が、リディアの肩に手を置くと、リディアがビックリしたように声を漏らす。ひゃんってなんだよ、ひゃんって。
「ほら、姫。アイツに言う事があるんだろ?」
「姫、がんばって!」
「勇気を出してください!」
リディアはオレに言いたいことがあるようだ。いったい何の話だ?
それにしても、リディアの様子がおかしい。いつもの堂々としいた態度はどこへやら、今は体を縮こまらせて、顔も俯いている。いつも真っ直ぐ見つめてきた瞳は、今や伏し目がちにチラチラとこちらを窺う感じだ。目が合うと、さっと伏せられてしまう。その美しい双眸を困ったようにハの字にして、その瞳は潤んでいる。顔も真っ赤だ。リディアの新雪のような白く眩しい肌が、今は首から上を淡いピンクに染めている。
いつもと違う様子のリディアに、少し心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
「あの!その……」
リディアが顔を上げてしゃべり出す。だが、言葉が続かないのか、言葉も態度も萎んでいく。
リディアがモジモジと体を震わせる。伏せた視線を左右に彷徨わせ、口を小さく開けたり閉じたりを繰り返している。これ、本当にリディアか?双子の妹とかじゃなくて?別人みたいにしおらしいんだけど。
「姫、女は度胸です」
「早くしないと誰かに取られちゃうかも」
リディアが「それは嫌です…!」と呟くと、体を起こして、深呼吸するように大きく息を吸い込む。
そして、真っ直ぐにオレを見つめてきた。リディアの顔は可哀想になるくらい真っ赤だ。目の端には涙が浮かんでいる。オレは何もしていないというのに、なにやら悪い事をした気分になるのはなんでだ?
「アレクサン……」
「あぁ」
リディアがポツリと呟くように語り出す。
「貴方は今日、その……」
「なんだ?」
今日の決闘未遂事件のことだろうか?たしかにオレも言い過ぎたところはあるかもしれないが、先に煽ってきたのはリディアの方だ。
「わたくしを…、抱きたい、と言ったのは、本気ですか?」
それ、今聞く?リディアの後ろに居る女達が、怖い顔してオレのこと見てるんだけど?侮蔑の視線なんですけど!?
「それはその、なんだ……本気だ」
返答に迷うが、結局、自分の気持ちに嘘は吐けず、肯定する。後ろの女達の事なんて知るか!
リディアの顔が、更に赤くなる。その瞳は、今にも涙が零れそうなくらいウルウルだ。
「それは!その…わたくしに、好意があるということ、ですよね?」
「それは…」
好意か…。あるんだろうか?オレの中にリディアへの好意って存在するのか?
リディアは面倒くさい奴だ。いつも絡んでくるし、ダルい。だけど、オレはリディアを嫌いになれないでいた。
リディアの見た目がオレの好みだったからだろうか?確かにそれもあるだろう。でも、それだけじゃない。
オレは、リディアが絡んできてくれて、嬉しかった……のだと思う。
オレはただでさえ体が大きくて厳つい顔だから威圧感があるのだろう。あまり人が寄ってこない。今日たくさんに奴に話しかけられたのは、オレの中ではとても例外的な出来事だ。嬉しかったのだろう。ついつい相手をしてしまった。
それまでオレに話しかけてきたのは、『蒼天』の奴らや<閃光>のおっさんを除けば、リディアぐらいしか居なかったからな。オレは、口では面倒くさい、ダルいと言いつつも、リディアに好意を持っていたのだろう。
オレは、リディアへの好意を自覚すると、途端に恥ずかしくなった。え?オレ今、好きな子に問い詰められてる感じなの?
リディアへの好意を、本人を目の前にして言うには恥ずかしい。
「……」
口を開くが、なかなか言葉にならない。意味も無く視線が左右を彷徨い、リディアの顔をまともに見られない。
「……ある」
漸く、呟くようにそれだけ口に出せた。なにこれ、めっちゃ恥ずい。
「ゃ……」
リディアが蚊の鳴く様な声を出す。その顔は呆然としていて、口も半開きだ。これも惚れた弱みなのか、リディアが美人だからなのか、そんな顔のリディアもかわいかった。
しかし、リディアの目から、遂に涙がつーっと零れる。え?泣くほど嫌だった?「ゃ……」じゃなくて「いや……」だった!?
「やったね!姫!」
「おめでとうございます!」
「おめでとう!」
オレを混乱を他所に、女達が騒ぎ出す。え?どういうこと?リディアも「皆さん、ありがとう」なんて言ってるし、え?何なの?
「アレク、この色男!姫を落とすなんてやるねー!」
オレはその一言で、リディアに告白したのだと思い知らされる。え?姫を落とした?ってことは…。
オレは確認するようにリディアを見つめる。
リディアはコクンと確かに頷いた。
オレは内心ツッコミを入れる。冒険者ギルドで出会った女達に付いて行った先、待っていたのはリディアだった。
女たちに見覚えがあるはずだ。コイツらリディアのパーティメンバーじゃないか!いっつもリディアが絡んでくるから、リディアの印象が強すぎて忘れてたわ。
此処は、冒険者ギルドからほど近い、わりと大き目な一軒家。おそらく『業火斬』の拠点なのだろう。綺麗に片付いてるし、ちょっとした小物が女の子っぽい。あと良い匂いがする。
「座んな」
「…おう」
女に促されて席に着く。オレの席の向かいにはリディアが座っている形だ。
オレを此処に呼んだ理由は何だ?先程の続きか?リディア一人ではオレに勝てないと踏んで、仲間を呼んだのだろうか?これはちょっとマズイかもな…。
リディア達のパーティは、たしかダンジョンの40階層付近を攻略している実力者パーティだ。さすがに1対5では分が悪い。盾と鎧があればちったー違うんだが……。生憎、今のオレは剣しか持ってない。
これは判断を誤ったかもな。知らない人に付いて行ってはいけませんってやつだな。まさかこの年でそれを実感させられるとは…。
相手はオレを囲んでボコって楽に勝つつもりだろうが、そうはさせるかよ。最低2人は持っていく。
オレが静かに決意を固めていると、オレを此処に連れてきた女達は、席に座らずにリディアの後ろへと移動した。
オレを囲んでボコすつもりじゃないのか?
少なくとも後ろからの奇襲を気にしなくて良くなったのはありがたい。
「姫、連れてきたよ」
「ひゃんっ」
女の一人が、リディアの肩に手を置くと、リディアがビックリしたように声を漏らす。ひゃんってなんだよ、ひゃんって。
「ほら、姫。アイツに言う事があるんだろ?」
「姫、がんばって!」
「勇気を出してください!」
リディアはオレに言いたいことがあるようだ。いったい何の話だ?
それにしても、リディアの様子がおかしい。いつもの堂々としいた態度はどこへやら、今は体を縮こまらせて、顔も俯いている。いつも真っ直ぐ見つめてきた瞳は、今や伏し目がちにチラチラとこちらを窺う感じだ。目が合うと、さっと伏せられてしまう。その美しい双眸を困ったようにハの字にして、その瞳は潤んでいる。顔も真っ赤だ。リディアの新雪のような白く眩しい肌が、今は首から上を淡いピンクに染めている。
いつもと違う様子のリディアに、少し心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
「あの!その……」
リディアが顔を上げてしゃべり出す。だが、言葉が続かないのか、言葉も態度も萎んでいく。
リディアがモジモジと体を震わせる。伏せた視線を左右に彷徨わせ、口を小さく開けたり閉じたりを繰り返している。これ、本当にリディアか?双子の妹とかじゃなくて?別人みたいにしおらしいんだけど。
「姫、女は度胸です」
「早くしないと誰かに取られちゃうかも」
リディアが「それは嫌です…!」と呟くと、体を起こして、深呼吸するように大きく息を吸い込む。
そして、真っ直ぐにオレを見つめてきた。リディアの顔は可哀想になるくらい真っ赤だ。目の端には涙が浮かんでいる。オレは何もしていないというのに、なにやら悪い事をした気分になるのはなんでだ?
「アレクサン……」
「あぁ」
リディアがポツリと呟くように語り出す。
「貴方は今日、その……」
「なんだ?」
今日の決闘未遂事件のことだろうか?たしかにオレも言い過ぎたところはあるかもしれないが、先に煽ってきたのはリディアの方だ。
「わたくしを…、抱きたい、と言ったのは、本気ですか?」
それ、今聞く?リディアの後ろに居る女達が、怖い顔してオレのこと見てるんだけど?侮蔑の視線なんですけど!?
「それはその、なんだ……本気だ」
返答に迷うが、結局、自分の気持ちに嘘は吐けず、肯定する。後ろの女達の事なんて知るか!
リディアの顔が、更に赤くなる。その瞳は、今にも涙が零れそうなくらいウルウルだ。
「それは!その…わたくしに、好意があるということ、ですよね?」
「それは…」
好意か…。あるんだろうか?オレの中にリディアへの好意って存在するのか?
リディアは面倒くさい奴だ。いつも絡んでくるし、ダルい。だけど、オレはリディアを嫌いになれないでいた。
リディアの見た目がオレの好みだったからだろうか?確かにそれもあるだろう。でも、それだけじゃない。
オレは、リディアが絡んできてくれて、嬉しかった……のだと思う。
オレはただでさえ体が大きくて厳つい顔だから威圧感があるのだろう。あまり人が寄ってこない。今日たくさんに奴に話しかけられたのは、オレの中ではとても例外的な出来事だ。嬉しかったのだろう。ついつい相手をしてしまった。
それまでオレに話しかけてきたのは、『蒼天』の奴らや<閃光>のおっさんを除けば、リディアぐらいしか居なかったからな。オレは、口では面倒くさい、ダルいと言いつつも、リディアに好意を持っていたのだろう。
オレは、リディアへの好意を自覚すると、途端に恥ずかしくなった。え?オレ今、好きな子に問い詰められてる感じなの?
リディアへの好意を、本人を目の前にして言うには恥ずかしい。
「……」
口を開くが、なかなか言葉にならない。意味も無く視線が左右を彷徨い、リディアの顔をまともに見られない。
「……ある」
漸く、呟くようにそれだけ口に出せた。なにこれ、めっちゃ恥ずい。
「ゃ……」
リディアが蚊の鳴く様な声を出す。その顔は呆然としていて、口も半開きだ。これも惚れた弱みなのか、リディアが美人だからなのか、そんな顔のリディアもかわいかった。
しかし、リディアの目から、遂に涙がつーっと零れる。え?泣くほど嫌だった?「ゃ……」じゃなくて「いや……」だった!?
「やったね!姫!」
「おめでとうございます!」
「おめでとう!」
オレを混乱を他所に、女達が騒ぎ出す。え?どういうこと?リディアも「皆さん、ありがとう」なんて言ってるし、え?何なの?
「アレク、この色男!姫を落とすなんてやるねー!」
オレはその一言で、リディアに告白したのだと思い知らされる。え?姫を落とした?ってことは…。
オレは確認するようにリディアを見つめる。
リディアはコクンと確かに頷いた。
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