なんかよく分からない理由でパーティ追放されたけど、とりあえず美少女の彼女できたわ。

くーねるでぶる(戒め)

文字の大きさ
上 下
9 / 10

009 お姫様

しおりを挟む
 ってお前かよー!

 オレは内心ツッコミを入れる。冒険者ギルドで出会った女達に付いて行った先、待っていたのはリディアだった。

 女たちに見覚えがあるはずだ。コイツらリディアのパーティメンバーじゃないか!いっつもリディアが絡んでくるから、リディアの印象が強すぎて忘れてたわ。

 此処は、冒険者ギルドからほど近い、わりと大き目な一軒家。おそらく『業火斬』の拠点なのだろう。綺麗に片付いてるし、ちょっとした小物が女の子っぽい。あと良い匂いがする。

「座んな」

「…おう」

 女に促されて席に着く。オレの席の向かいにはリディアが座っている形だ。

 オレを此処に呼んだ理由は何だ?先程の続きか?リディア一人ではオレに勝てないと踏んで、仲間を呼んだのだろうか?これはちょっとマズイかもな…。

 リディア達のパーティは、たしかダンジョンの40階層付近を攻略している実力者パーティだ。さすがに1対5では分が悪い。盾と鎧があればちったー違うんだが……。生憎、今のオレは剣しか持ってない。

 これは判断を誤ったかもな。知らない人に付いて行ってはいけませんってやつだな。まさかこの年でそれを実感させられるとは…。

 相手はオレを囲んでボコって楽に勝つつもりだろうが、そうはさせるかよ。最低2人は持っていく。

 オレが静かに決意を固めていると、オレを此処に連れてきた女達は、席に座らずにリディアの後ろへと移動した。

 オレを囲んでボコすつもりじゃないのか?
 少なくとも後ろからの奇襲を気にしなくて良くなったのはありがたい。

「姫、連れてきたよ」

「ひゃんっ」

 女の一人が、リディアの肩に手を置くと、リディアがビックリしたように声を漏らす。ひゃんってなんだよ、ひゃんって。

「ほら、姫。アイツに言う事があるんだろ?」

「姫、がんばって!」

「勇気を出してください!」

 リディアはオレに言いたいことがあるようだ。いったい何の話だ?

 それにしても、リディアの様子がおかしい。いつもの堂々としいた態度はどこへやら、今は体を縮こまらせて、顔も俯いている。いつも真っ直ぐ見つめてきた瞳は、今や伏し目がちにチラチラとこちらを窺う感じだ。目が合うと、さっと伏せられてしまう。その美しい双眸を困ったようにハの字にして、その瞳は潤んでいる。顔も真っ赤だ。リディアの新雪のような白く眩しい肌が、今は首から上を淡いピンクに染めている。

 いつもと違う様子のリディアに、少し心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

「あの!その……」

 リディアが顔を上げてしゃべり出す。だが、言葉が続かないのか、言葉も態度も萎んでいく。

 リディアがモジモジと体を震わせる。伏せた視線を左右に彷徨わせ、口を小さく開けたり閉じたりを繰り返している。これ、本当にリディアか?双子の妹とかじゃなくて?別人みたいにしおらしいんだけど。

「姫、女は度胸です」

「早くしないと誰かに取られちゃうかも」

 リディアが「それは嫌です…!」と呟くと、体を起こして、深呼吸するように大きく息を吸い込む。

 そして、真っ直ぐにオレを見つめてきた。リディアの顔は可哀想になるくらい真っ赤だ。目の端には涙が浮かんでいる。オレは何もしていないというのに、なにやら悪い事をした気分になるのはなんでだ?

「アレクサン……」

「あぁ」

 リディアがポツリと呟くように語り出す。

「貴方は今日、その……」

「なんだ?」

 今日の決闘未遂事件のことだろうか?たしかにオレも言い過ぎたところはあるかもしれないが、先に煽ってきたのはリディアの方だ。

「わたくしを…、抱きたい、と言ったのは、本気ですか?」

 それ、今聞く?リディアの後ろに居る女達が、怖い顔してオレのこと見てるんだけど?侮蔑の視線なんですけど!?

「それはその、なんだ……本気だ」

 返答に迷うが、結局、自分の気持ちに嘘は吐けず、肯定する。後ろの女達の事なんて知るか!

 リディアの顔が、更に赤くなる。その瞳は、今にも涙が零れそうなくらいウルウルだ。

「それは!その…わたくしに、好意があるということ、ですよね?」

「それは…」

 好意か…。あるんだろうか?オレの中にリディアへの好意って存在するのか?

 リディアは面倒くさい奴だ。いつも絡んでくるし、ダルい。だけど、オレはリディアを嫌いになれないでいた。

 リディアの見た目がオレの好みだったからだろうか?確かにそれもあるだろう。でも、それだけじゃない。

 オレは、リディアが絡んできてくれて、嬉しかった……のだと思う。

 オレはただでさえ体が大きくて厳つい顔だから威圧感があるのだろう。あまり人が寄ってこない。今日たくさんに奴に話しかけられたのは、オレの中ではとても例外的な出来事だ。嬉しかったのだろう。ついつい相手をしてしまった。

 それまでオレに話しかけてきたのは、『蒼天』の奴らや<閃光>のおっさんを除けば、リディアぐらいしか居なかったからな。オレは、口では面倒くさい、ダルいと言いつつも、リディアに好意を持っていたのだろう。

 オレは、リディアへの好意を自覚すると、途端に恥ずかしくなった。え?オレ今、好きな子に問い詰められてる感じなの?

 リディアへの好意を、本人を目の前にして言うには恥ずかしい。

「……」

 口を開くが、なかなか言葉にならない。意味も無く視線が左右を彷徨い、リディアの顔をまともに見られない。

「……ある」

 漸く、呟くようにそれだけ口に出せた。なにこれ、めっちゃ恥ずい。

「ゃ……」

 リディアが蚊の鳴く様な声を出す。その顔は呆然としていて、口も半開きだ。これも惚れた弱みなのか、リディアが美人だからなのか、そんな顔のリディアもかわいかった。

 しかし、リディアの目から、遂に涙がつーっと零れる。え?泣くほど嫌だった?「ゃ……」じゃなくて「いや……」だった!?

「やったね!姫!」

「おめでとうございます!」

「おめでとう!」

 オレを混乱を他所に、女達が騒ぎ出す。え?どういうこと?リディアも「皆さん、ありがとう」なんて言ってるし、え?何なの?

「アレク、この色男!姫を落とすなんてやるねー!」

 オレはその一言で、リディアに告白したのだと思い知らされる。え?姫を落とした?ってことは…。

 オレは確認するようにリディアを見つめる。

 リディアはコクンと確かに頷いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

TS転移勇者、隣国で冒険者として生きていく~召喚されて早々、ニセ勇者と罵られ王国に処分されそうになった俺。実は最強のチートスキル持ちだった~

夏芽空
ファンタジー
しがないサラリーマンをしていたユウリは、勇者として異世界に召喚された。 そんなユウリに対し、召喚元の国王はこう言ったのだ――『ニセ勇者』と。 召喚された勇者は通常、大いなる力を持つとされている。 だが、ユウリが所持していたスキルは初級魔法である【ファイアボール】、そして、【勇者覚醒】という効果の分からないスキルのみだった。 多大な準備を費やして召喚した勇者が役立たずだったことに大きく憤慨した国王は、ユウリを殺処分しようとする。 それを知ったユウリは逃亡。 しかし、追手に見つかり殺されそうになってしまう。 そのとき、【勇者覚醒】の効果が発動した。 【勇者覚醒】の効果は、全てのステータスを極限レベルまで引き上げるという、とんでもないチートスキルだった。 チートスキルによって追手を処理したユウリは、他国へ潜伏。 その地で、冒険者として生きていくことを決めたのだった。 ※TS要素があります(主人公)

ダイナマイトと目隠しの勇者

咲間 咲良
ファンタジー
【あらすじ】 小動物のモグラだった前世をもつ少年、コード8032(ハチミツ)。 人間に転生したので今度こそ地上で暮らしたい!…と思ったのに、今世でも【モグラ】と呼ばれている。 【モグラ】とはつまり、広大な地下坑窟で魔法鉱石を掘り出す採掘師たちの通称だ。 ある日、採掘師になるための最終試験として廃坑道で採掘をしていたハチミツは助けを求める声を耳にして──。 ※地上に出るまでやや長いです。 ※ファンタジーなので地学・鉱物学的なツッコミはご容赦ください。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

みんなからバカにされたユニークスキル『宝箱作製』 ~極めたらとんでもない事になりました~

黒色の猫
ファンタジー
 両親に先立たれた、ノーリは、冒険者になった。 冒険者ギルドで、スキルの中でも特に珍しいユニークスキル持ちでがあることが判明された。 最初は、ユニークスキル『宝箱作製』に期待していた周りの人たちも、使い方のわからない、その能力をみて次第に、ノーリを空箱とバカにするようになっていた。 それでも、ノーリは諦めず冒険者を続けるのだった… そんなノーリにひょんな事から宝箱作製の真の能力が判明して、ノーリの冒険者生活が変わっていくのだった。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...