この世界で唯一『スキル合成』の能力を持っていた件

なかの

文字の大きさ
上 下
33 / 71

第三十三話『太刀筋の精度』

しおりを挟む
当てても死なないけど、太刀筋の訓練には使えるといった感じの道具なのだろう。剣道の竹刀は、防具無しで打ち合うとかなり危険だし。

その柔らかい竹刀を、僕とニコは構えた。

「かかってきなさい!」
ニコは笑顔で言った。
新たな訓練が始まる。

「とう!」
と、あまり締まらない掛け声を出して、僕は上段からニコの頭に目掛けて柔らかい竹刀を振った。

その瞬間、ニコは視界から、消え。
僕はお腹に衝撃を受けた。
そう、ニコが僕の剣を颯爽と避け、僕に水平の剣戟を加えていたのだ。

「おっそーい!!」
とニコが笑う。

「まじか・・・」
あまりの一瞬の出来事に、理解が追いつかなかった。

「真剣だったら、死んでるわよ!」
とニコが言う。

全くだ。
こんなに差があるのか・・・。
と、更に実感した。

リオンの時のことも合わせて、より強く思った。
武道というのはこんなに差がつくのかと・・・。

「ほらほら!ぼけっとしてないの!ドンドンいくわよ!」
「望むところだ!」
と、僕も、しっかりとニコの構えを見て真似してみた。
心なしか力が入りやすくなった気がする。

「あ、いい構えになったじゃない!頭はいいのよねタカシは!」とニコが言う。
褒められているのか、貶されているのか、よくわからなかった。

「お褒めに預かり光栄です!」
と、言いながら、ニコに斬りかかった。
しかし、その太刀筋をギリギリ、見切って、バックステップで避ける。

「まじすか・・・」
そんなこと出来るの??

と、僕は思った。
そして、ニコはそのまま、剣を僕の手先に振り下ろした。

その衝撃で、剣を落とした。

そして、流れるように、僕の喉元に柔らかい竹刀をスッと、突きつけた。

「はい、本物なら二回死んだわよ!」
と、ニコが笑う。

「ほんとだよ・・・」
と僕は思った。

しかし、訓練で擬似的なものですむのならそれで、体験すべきことだ。本番で死ぬよりずっといい。

いままでの、やりとりでわかっていたことがある。
僕の動きは無駄が多いのだ。
逆にニコの動きは、ほんとに、無駄がない。

狙ったところに、ピタッと、届かせているし、ミリ単位で避けている。
それはもはや人間業なのかわからなかったが。

僕の動きは精度が悪い、狙ったところから数センチ位はずれている。そのレベルで済んでいればいいが、ヘタすればもっとだろう。

意識を集中して、精度を高める。

「いくぞ!」
と、今度は、ニコの腕、目掛けて斬りかかる。

そもそも、いままでは、狙った所を最後まで見る、ということすらできていなかった。だから、狙ったところに当たったかどうかすら、わかっていないのだった。

こんどは、集中して、ニコの手首のみを狙う。

「すごい、いいわね!動きがいきなり良くなったわ!でも、今度は、勢いが減ったわね!」
と、僕の剣を軽やかによけて、僕の手首に真っ直ぐ、剣を振り下ろした。

僕はその衝撃で、また、剣を落とした。
これはなかなか悔しい。

「いやぁ、ニコ、強いね!」
と僕は笑って言った。
ふふ、そうでしょ!
とニコは満面の笑みで笑っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...