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霧の中のささやき
霧の中のささやき・・・その2
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「あっ、そっか。そういえば愛奈ちゃんは知らなかったのよね?」
「はい・・・。今、初めて聞きました」
「とは言っても、そういう私も、知ったのはここ一年くらいなんだけどね」
「裕子さんも・・・?」
「そう・・・。それまでは、そんな雪子の姿なんて知らなかったわ」
「それじゃ、あの・・・やっぱり、ビンタも?」
「本当みたい・・・。私も見ちゃったし」
「見ちゃったって・・・あの・・・もしかして?」
「ええ・・・。雪子が夏樹さんの頬をバチン!ってするのを」
「うっそ・・・?」
「本当よ。しかも手加減なしで・・・。まあ、その瞬間を見ていた私も、正直、自分の目を疑ったけど」
「あの・・・お母さんが・・・う~ん」
「そんでね、そのあとね、ケラケラ笑ってるの・・・」
「笑ってるって・・・やっぱり・・・ですか?」
「そう・・・夏樹さんじゃなくて、雪子が・・・笑ってるの」
「う~ん・・・思わず、あなたはいったいどちらのお母さん?みたいですね?」
「そうそう!それよ!それ!。去年の大晦日から、ずっと、そんな感じなのよ」
裕子から聞かされる雪子の姿に、愛奈はとても信じられないという瞳で、いつも見ていた母親の姿を思い出していた。
「でもね、そんな雪子の姿を見ていると、嬉しさよりも寂しさが見え隠れしてしまうのよね」
「お母さんの寂しさ・・・?」
「雪子がね、夏樹さんに甘えれば甘える程に、言いようのない寂しさが湧き上がってしまって」
「お母さんが夏樹さんに・・・甘える・・・ですか?」
「きっと、夏樹さんに愛されたくて愛されたくて・・・いえ・・・違うわね?そうじゃないわ!」
「はい・・・?」
雪子が夏樹さんに甘えるのは、なぜ?
いえ・・・雪子が夏樹さんに甘えられるのは・・・なぜ?
「あの・・・どうしたんですか?」
「あっ・・・いえ、なんでもないわ」
「う~ん・・・。何か思い出したとか?」
「ううん・・・そうじゃないんだけど・・・ちょっと、あれ?って思っちゃっただけ」
「でも、さっきの裕子さんの言葉では、お母さんは夏樹さんに愛されてなかったとか?」
「それは、あり得ないわ。雪子はこの世界の誰よりも夏樹さんに愛されていたのよ。きっと、今も」
「あの・・・確か、裕子さんも夏樹さんとお付き合いをしていたんですよね?」
「まあ・・・そんな頃もあったけど。もう、遠い昔のお話・・・」
「でも、そうするとですよ?そうすると、裕子さんも夏樹さんに愛されていたんですよね?」
「ううん・・・違うわね」・・・裕子は霞み笑みを浮かべながら優しく言葉を返す。
「えっ?・・・でも・・・」
「確かに、あの頃はそう思っていたかもしれないけど。でも、きっと、違うわね」
「あの・・・違うっていうのは?」
愛されていた・・・。
夏樹さんの前で戯れる雪子の甘える姿を見るまでは、少しはそんな風にも思った事もあったけど
夏樹さんの前で、雪子のように戯れる仕草も、甘える愛らしさも、私にはなかったのかもしれない。
今まで、ずっと知らなかった、夏樹さんといる時間の中にだけ見せる、雪子の隠そうとしない姿。
それは、雪子は夏樹さんに愛されようとか、愛されたいとかというのとは、どこか少し違う・・・
どちらかというと、雪子自身が、自分の身体の全てで夏樹さんを愛してあげたい・・・。
そんな愛らしい雪子の仕草の中に、その姿を見つけた時、私は初めて知ったのかもしれない。
少しの笑みの他に見つからない裕子は、夏樹から告げられたさよならを霞む笑みで包むように
「違う」と答えた言葉の続きを口にする。
「きっと・・・憐れみ・・・。今は、そう素直に思えるの」
「はい・・・。今、初めて聞きました」
「とは言っても、そういう私も、知ったのはここ一年くらいなんだけどね」
「裕子さんも・・・?」
「そう・・・。それまでは、そんな雪子の姿なんて知らなかったわ」
「それじゃ、あの・・・やっぱり、ビンタも?」
「本当みたい・・・。私も見ちゃったし」
「見ちゃったって・・・あの・・・もしかして?」
「ええ・・・。雪子が夏樹さんの頬をバチン!ってするのを」
「うっそ・・・?」
「本当よ。しかも手加減なしで・・・。まあ、その瞬間を見ていた私も、正直、自分の目を疑ったけど」
「あの・・・お母さんが・・・う~ん」
「そんでね、そのあとね、ケラケラ笑ってるの・・・」
「笑ってるって・・・やっぱり・・・ですか?」
「そう・・・夏樹さんじゃなくて、雪子が・・・笑ってるの」
「う~ん・・・思わず、あなたはいったいどちらのお母さん?みたいですね?」
「そうそう!それよ!それ!。去年の大晦日から、ずっと、そんな感じなのよ」
裕子から聞かされる雪子の姿に、愛奈はとても信じられないという瞳で、いつも見ていた母親の姿を思い出していた。
「でもね、そんな雪子の姿を見ていると、嬉しさよりも寂しさが見え隠れしてしまうのよね」
「お母さんの寂しさ・・・?」
「雪子がね、夏樹さんに甘えれば甘える程に、言いようのない寂しさが湧き上がってしまって」
「お母さんが夏樹さんに・・・甘える・・・ですか?」
「きっと、夏樹さんに愛されたくて愛されたくて・・・いえ・・・違うわね?そうじゃないわ!」
「はい・・・?」
雪子が夏樹さんに甘えるのは、なぜ?
いえ・・・雪子が夏樹さんに甘えられるのは・・・なぜ?
「あの・・・どうしたんですか?」
「あっ・・・いえ、なんでもないわ」
「う~ん・・・。何か思い出したとか?」
「ううん・・・そうじゃないんだけど・・・ちょっと、あれ?って思っちゃっただけ」
「でも、さっきの裕子さんの言葉では、お母さんは夏樹さんに愛されてなかったとか?」
「それは、あり得ないわ。雪子はこの世界の誰よりも夏樹さんに愛されていたのよ。きっと、今も」
「あの・・・確か、裕子さんも夏樹さんとお付き合いをしていたんですよね?」
「まあ・・・そんな頃もあったけど。もう、遠い昔のお話・・・」
「でも、そうするとですよ?そうすると、裕子さんも夏樹さんに愛されていたんですよね?」
「ううん・・・違うわね」・・・裕子は霞み笑みを浮かべながら優しく言葉を返す。
「えっ?・・・でも・・・」
「確かに、あの頃はそう思っていたかもしれないけど。でも、きっと、違うわね」
「あの・・・違うっていうのは?」
愛されていた・・・。
夏樹さんの前で戯れる雪子の甘える姿を見るまでは、少しはそんな風にも思った事もあったけど
夏樹さんの前で、雪子のように戯れる仕草も、甘える愛らしさも、私にはなかったのかもしれない。
今まで、ずっと知らなかった、夏樹さんといる時間の中にだけ見せる、雪子の隠そうとしない姿。
それは、雪子は夏樹さんに愛されようとか、愛されたいとかというのとは、どこか少し違う・・・
どちらかというと、雪子自身が、自分の身体の全てで夏樹さんを愛してあげたい・・・。
そんな愛らしい雪子の仕草の中に、その姿を見つけた時、私は初めて知ったのかもしれない。
少しの笑みの他に見つからない裕子は、夏樹から告げられたさよならを霞む笑みで包むように
「違う」と答えた言葉の続きを口にする。
「きっと・・・憐れみ・・・。今は、そう素直に思えるの」
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