愛して欲しいと言えたなら

zonbitan

文字の大きさ
上 下
381 / 386
あなたの声が好き

あなたの声が好き・・・その20

しおりを挟む
「裕子さんは、(が)ではなく、(は)という言葉を使うんですね」

「ふふっ・・・。(が)は夏樹さんの目線、(は)は雪子の目線・・・違う?」

「それじゃ、その表現を使ったのは私じゃなくて夏樹さんだって事も?」

「だから敵わないの。夏樹さんにその言葉を言わせる雪子には・・・」

「お母さんが・・・?」

「そうよ・・・。もしかして、私に急いで知らせたかった事って?」

「あっ、はい・・・。でも、裕子さんがもうすでに知っていたなんてちょっとびっくりです」

「ううん、知っていたわけじゃないのよ。なんとなくそう思っていただけ・・・」

「あっ、あの・・・それじゃ、これはどうですか?」

「ん・・・?もしかして、雪子と、どこで会うかって事?」

「あのですね・・・もしかし・・・なくても知ってたりして?」

「きっと、夏樹さんは知ってるじゃないかしら?・・・違う?」

「正解です・・・。やっぱり裕子さんはすごいです」

「ふふっ、そうじゃないのよ」

「へっ・・・?」

「雪子がよく行く喫茶店のマスターに教えられたの。夏樹さんの性格上、もし、本当に雪子の行き先が分からなかったなら探すのではないかと思われます。って」

「喫茶店のマスターに・・・?」

「ええっ・・・。でも、その時はまだそこまでは分からなかったけど、今の愛奈ちゃんの話を聞いてね、それでなの。そして、そこから連想するとね、もしかしたら夏樹さんは雪子と会う日も、会う場所も、そして、雪子と会う時間さえも、きっと知ってるんじゃないのかな?ってね。そんな風に思ったのよ」

「えええ===っ?」

「ふふっ、そんなに驚かなくてもいいわよ」

「だ~って~!」

「でも、愛奈ちゃんが教えに来てくれたので、ひとつは安心したわ」

「ひとつは・・・?それじゃ、まだ何か他にもあるんですか?」

「ええ・・・まあ。あるといえばあるんだけど・・・」

「あるといえばある?・・・ですか?」

「ええ・・・。でも、これは二人の問題だから、私がどうこう心配するような・・・でもね」

「う~ん・・・なにかあるんですね?」

「まあね・・・。それよりも、夏樹さん、他にも何か言ってなかった?」

「他にはっていうと・・・。あっ、今度の休日に冴ちゃんと動物園に行くのよ!って言ってました」

「動物園・・・?」

「はい。それで、動物園にクマさんたちに会いに行くのよ!って、もち、女言葉で」

「女言葉・・・ふふっ。でも、まさか、あの夏樹さんが女装家になっていたなんてね。正直、今でも信じられないわね」

「夏樹さんが女装している事に、お母さんはびっくりしなかったんですか?」

「それが全然・・・。やっぱ!そこいったんだ~って!」

「そこいったんだ~?・・・ですか?」

「あっ、そっか。愛奈ちゃんは知らないのよね?雪子の話し方っていうか言葉遣いって」

「言葉遣い?・・・何か違うんですか?」

「ええ・・・全然、違うわね。特に夏樹さんといる時の雪子はね」

全然、違う・・・?お母さんも裕子さんみたいに、違うお母さんがもう一人存在している?

「もしかして、裕子さんみたいに、もう一人のお母さんがいるんですか?」

「ふふっ・・・。私の場合は、もう一人というのではなくて、女性なら誰でも持っている、もう一人の女性の顔みたいなものなのよ」

「お母さんは違うんですか?」

「そうね・・・違うとか別の顔とかというのではなくて・・・。う~ん、何て言ったらいいのかしら?」

どこか懐かしむように、遠い日を愛しむように、裕子は優しい笑みを言葉に添わせてみる。

「う~ん・・・そうね~。・・・そう!ペンギン!雪子はペンギンに変身してしまうの!」

「あい・・・?」

「ふふっ・・・。それで、他には何か言ってなかった?」

「他に・・・あの・・・もしかして、さっき言ってたひとつは安心した以外の・・・?」

「ええ・・。夏樹さん、何か言ってなかった?」

「何かって言われましても、お母さんの居場所とか会う日とか以外にはこれと言っては」

「そう・・・」

「ただ・・・」

「ただ・・・なに?」

「ちょっと変な事をっていうか、何ていうか・・・」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。

音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。 格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。 正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。 だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。 「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。

処理中です...