377 / 386
あなたの声が好き
あなたの声が好き・・・その16
しおりを挟む
「でも、今のあたしの言葉にカチンとこないところを見ていると、あたしとしては安心だけどね」
「いや~・・・へへへ・・・」
「誰にも束縛されていない、誰にも監視されていない状況の中で一番大切なものは考える視線なの」
「考える視線・・・ですか?考える力・・・ではなく?」
「そうよ・・・。考える視線ってね、無意識に未来を見つめようとするの」
「う~ん・・・私としてはその違いがちょっと・・・」
「そうね、考える力は、立ち止まるけど、視線は決して立ち止まったりはしない。かしら?」
「へへへ・・・余計にこんがらがってしまってたりして・・・」
「ふふっ・・・。そのうち分かるわよ・・・。今のあんたならね!」
直美はちょっとドキッとしてしまった!
夏樹は別に意識して言葉を口にしたわけではないのだろが・・・。
「今のあんたならね!」・・・そう言われた直美には、その言葉は普通ではないらしい。
「でもね、あたしが口にする言葉をどれだけ着飾っても、寂しい、悲しい、可哀想にエトセトラと、どれだけの言葉を使い、わたしは優しい人だと、わたしは良い人なんだと、あんたの前で演じてみても、結局はあんたを利用しようとしているだけなの・・・」
「それは、分かってます!」
何を思ってかは知らないが、なぜか、自信たっぷりに答える直美である。
そんな直美に驚くわけでもなく、ただ、優しい視線と優しい笑みで直美を見つめる夏樹。
自分が答えた言葉に絡まろうとはせず、帰りの手土産を求めるように問いかける直美。
「あの・・・それで、省吾君には?」
「あんたに任せるわ。ただし、あたしは誰にも会わない・・・それだけよ。あっ、あんたは別よ」
夏樹の言葉に、嬉しそうに笑みを返しながら冴子の方へ視線を移す直美。
「そういえば、あんた、帰りはどうするの?」
「えっ?帰りは?って・・・あの、普通ですけど」
「普通じゃないから聞いてるのよ!」
「そうは言われましても・・・多分、大丈夫ではないかと・・・」
「最上級の方向音痴のあんたが?」
「いや~ぁ・・・ははは・・・」
「行きはよいよい帰りは怖いってやつね!それじゃ、あたしが送ってあげるわ!」
「えっ・・・?」
「嫌なの・・・?」
「いえ・・・いや・・・えっ?・・・あの・・・」
「それじゃ、決まりね!」
「えっ?だって、あの、夏樹さんはどうするんですか?」
「ん?どうするって?大丈夫よ、あたしの車で送ってあげるから」
「いえ・・・あのですね・・・えっ?」
「明日は土曜日だから冴ちゃんもお休みだし。冴ちゃん、ドライブが好きなのよ」
「いえ・・・あのですね。そういう問題ではないのではと・・・」
「冴ちゃんと一緒は嫌なの?」
「いえ・・・あの・・・」
「あははっ・・・」
「もう・・・。でも、私の車はどうなるんですか?」
「大丈夫よ!すぐに送り届けてあげるから」
「ちょっと!夏樹さんってば・・・」
「ふふっ、心配いらないわよ」
「心配いらないって?あのですね?」
「あたしのとっては、車の輸送費よりも、あんたの方が大切なの」
あんたの方が大切なの・・・あんたの方が大切なの・・・意識が無重力の中にいるみたいに
夏樹の最後の言葉が「やまびこ」か「こだま」のように直美の頭の中で反響を繰り返していた。
「いや~・・・へへへ・・・」
「誰にも束縛されていない、誰にも監視されていない状況の中で一番大切なものは考える視線なの」
「考える視線・・・ですか?考える力・・・ではなく?」
「そうよ・・・。考える視線ってね、無意識に未来を見つめようとするの」
「う~ん・・・私としてはその違いがちょっと・・・」
「そうね、考える力は、立ち止まるけど、視線は決して立ち止まったりはしない。かしら?」
「へへへ・・・余計にこんがらがってしまってたりして・・・」
「ふふっ・・・。そのうち分かるわよ・・・。今のあんたならね!」
直美はちょっとドキッとしてしまった!
夏樹は別に意識して言葉を口にしたわけではないのだろが・・・。
「今のあんたならね!」・・・そう言われた直美には、その言葉は普通ではないらしい。
「でもね、あたしが口にする言葉をどれだけ着飾っても、寂しい、悲しい、可哀想にエトセトラと、どれだけの言葉を使い、わたしは優しい人だと、わたしは良い人なんだと、あんたの前で演じてみても、結局はあんたを利用しようとしているだけなの・・・」
「それは、分かってます!」
何を思ってかは知らないが、なぜか、自信たっぷりに答える直美である。
そんな直美に驚くわけでもなく、ただ、優しい視線と優しい笑みで直美を見つめる夏樹。
自分が答えた言葉に絡まろうとはせず、帰りの手土産を求めるように問いかける直美。
「あの・・・それで、省吾君には?」
「あんたに任せるわ。ただし、あたしは誰にも会わない・・・それだけよ。あっ、あんたは別よ」
夏樹の言葉に、嬉しそうに笑みを返しながら冴子の方へ視線を移す直美。
「そういえば、あんた、帰りはどうするの?」
「えっ?帰りは?って・・・あの、普通ですけど」
「普通じゃないから聞いてるのよ!」
「そうは言われましても・・・多分、大丈夫ではないかと・・・」
「最上級の方向音痴のあんたが?」
「いや~ぁ・・・ははは・・・」
「行きはよいよい帰りは怖いってやつね!それじゃ、あたしが送ってあげるわ!」
「えっ・・・?」
「嫌なの・・・?」
「いえ・・・いや・・・えっ?・・・あの・・・」
「それじゃ、決まりね!」
「えっ?だって、あの、夏樹さんはどうするんですか?」
「ん?どうするって?大丈夫よ、あたしの車で送ってあげるから」
「いえ・・・あのですね・・・えっ?」
「明日は土曜日だから冴ちゃんもお休みだし。冴ちゃん、ドライブが好きなのよ」
「いえ・・・あのですね。そういう問題ではないのではと・・・」
「冴ちゃんと一緒は嫌なの?」
「いえ・・・あの・・・」
「あははっ・・・」
「もう・・・。でも、私の車はどうなるんですか?」
「大丈夫よ!すぐに送り届けてあげるから」
「ちょっと!夏樹さんってば・・・」
「ふふっ、心配いらないわよ」
「心配いらないって?あのですね?」
「あたしのとっては、車の輸送費よりも、あんたの方が大切なの」
あんたの方が大切なの・・・あんたの方が大切なの・・・意識が無重力の中にいるみたいに
夏樹の最後の言葉が「やまびこ」か「こだま」のように直美の頭の中で反響を繰り返していた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる