愛して欲しいと言えたなら

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あなたの声が好き

あなたの声が好き・・・その15

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「雪子にとって、それ以外のあたしなんてどうでもいいはずよ!」

「はい・・・?」

「ふふっ。でもさ、そうまで言い切れる想いって、あんた、どう思う?」

またまた、突如、出現する十字路交差点のように話題に、いえ、次の一枚が今まで見ていた絵柄とは、まったく違う、予想外の絵柄を見せられた紙芝居のように、物語を変えていくような夏樹の言葉。
そんな夏樹の言葉に驚くよりも、どこか楽しさを覚えてしまう直美である。

「その想いって、たった一つの想いであり、夏樹さんの中に居る、ただ一人の夏樹さんなんですよね?」

「そうよ・・・」

「そう言い切れる程の想いが、それ以外の夏樹さんの、その全てさえも包み込んでしまうのなら・・・」

「これ以上の幸せはない・・・?かしら?」

「ええ・・・そう思います。でも、今までそんな風に考えた事なんてなかったので、どう表現したらいいのか分からないというのが、正直な答えかもしれません。・・・あっ・・・。」

「ふふっ・・・。気が付いたみたいね」

「もし、私が、雪子さんの立場だったなら・・・。そして、もし、私が京子の立場だったなら・・・。雪子さんにとって、これ以上の幸せを感じる他の夏樹さんの姿はきっと存在しないはず。そして、京子にとって、それ以上に許せない夏樹さんも・・・きっと、存在しないはず・・・。違いますか?」

「そして、それは?」

「雪子さんを想っている夏樹さんだけに存在する、時の世界・・・。違いますか?」

直美の言葉とその言葉の答え合わせを煙の中に流すように、煙草の煙の行く先に視線を合わせる夏樹。
そんな夏樹の仕草を瞳の隣に捕えながら、コーヒーカップを手に持つ直美が不思議な感覚に襲われていく自分自身の思考回路の震えに驚き始めていた。

全てが繋がった・・・の?
もしかして・・・繋がったんじゃないかしら?

不思議な表情から、不思議でない表情に変わっていく・・・
というより、頭の中でパズルのピースを合わせ始めていると表現した方が正解かもしれない。
そんな直美の表情の変化に笑みを浮かべながら残り少なくなった煙草の火を灰皿で消す夏樹。

「これから先は、自分でゆっくり考えてみるといいわ」

「はい・・・。えっ?」

「ふふっ・・。あんた、変わったわね」

「えっ?・・・あの・・・はい?」

「あははっ!・・・そういうところは変わってないけど!」

「へへっ・・・。えっ?あの?」

「繋がったでしょ?・・・というより、繋がり始めてる、の方が正解かしら?」

「あっ、あの・・・分かるんですか?」

「んなの、あんたの顔を見ていれば分かるわよ」

「はぁ・・・へへっ・・・」

夏樹は、残りかけのコーヒーを飲みながら言葉を続ける。

「あんたに知って欲しかったのはね・・・う~ん、こっちかな?あんたに会得して欲しかったのはね、何をするべきかの答えじゃないの。何が起きているのかを理解しようとする術であり、見えている現実ではなくて、見えない真実を繋ぎ合わせていくための理解力と創造力なの」

「はぁ・・・」

「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥、とかいって何でもすぐに答えを聞きたがるのもいいけど。それだけでは解き明かせない謎もあるの」

「解き明かせない謎・・・?」

「何でも聞けば答えにすぐにたどり着けるど、でもね、そこには式は存在していないのよ」

「式・・・ですか?」

「まあ、方程式みたいなもんよ。だから簡単に知った答えでは、1ミリずれただけの違う疑問は解けないのよ」

「う~ん・・・それじゃ、あの・・・もしかして、私を教育していたみたいない・・・?」

「ふふっ・・・。そんな大げさなもんじゃないわよ!方程式ってね、一つだけ覚えてしまえば、あとはいくらでも応用することが出来るのよ。もちろん人の人生の場合に限ってだけどね」

「はぁ・・・」

「あんたは京子の友人であり親友でもある。でもね、義務じゃないの。分かる?」

「義務じゃない・・・?」

「それに、あんたは京子の奴隷でもなければ従者でもないの」

「はい・・・?」

「だから、これからの京子をどう料理するかなんて、そんなのは、あんたの気分次第。それから、京子に対して手を抜こうが、良い顔だけで振り回ろうが、みんな、あんたの気分次第なのよ」

「そんな・・・気分次第だなんて・・・」

「例えの言葉は悪いけど、そうじゃないかしら?」

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