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あなたの声が好き
あなたの声が好き・・・その11
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「まあ、商売でも、事業でもどっちでもいいんだけど、それに、んなもんで成功しようが親のすねで遊ぼうがどうでもいいの。そんなもん、全部、生きている時間だけの得意顔にしか過ぎないんだから」
「生きている時間だけの・・・?」
「そうよ。人なんてさ、死んじゃったら全部おしまい!その人がどれだけの財を成していても、どれだけの地位や名声を手に入れていたとしても、んなもん、残った人たちの好きなように食い物にされちゃうだけ。狼が死んで豚が肥えるもぎりぎり当てはまるかしらね?」
「はあ・・・」
「人ってね、死が避けられないとあきらめた僅かな時間の中で何を思うと思う?」
「う~ん・・・何をって言われましても・・・たぶん、家族とか友人とか、何かやらなけれなならない仕事の途中でしたらその仕事の事とか・・・かな?」
「それもあるわね。でもね、死を受け入れた時、その人の瞳に映る全ての景色が霞み始めるの」
「景色が・・・?」
「そうよ・・・。そして、少しずつ、少しずつ、未来が消えていくのよ」
未来が消えていく・・・?
そういえば、さっきも同じような言葉を聞いたような・・・。
「そして、生きてきた時間の中で心の中に刻まれていた想いが、静かにその姿を現し始めるの」
「心の中に刻まれていた想い・・・」
「皮肉よね!生きている時は目に映る物しか信じられなかったのに、死を意識し始めるとさ、その逆に、目に見えない何かを信じてしまうんだからね。まるで、科学を信じて魔法を信じなかった人が、科学を否定して魔法を信じちゃうみたいな・・・そう思わない?」
そう思わない・・・?と言われましても・・・私の思考回路をしましては・・・はい。です。
「きっと、父親の脳裏には、悔しさと寂しさが姿を現すのかもしれない・・・そう思うの」
「それって・・・あの・・・」
「もし、あたしが父親の子供として生まれていなかったのなら、父親はそんな寂しい想いを知る必要もなかっただろうし、父親の記憶にあたしとの時間も刻まれる事もなかったの」
「でも・・・」
「そう思えてしまうの・・・あたしの父親がどれほどの寂しい時間を過ごしてきたのかって?」
「いえ・・・それは・・・。でも、夏樹さんは、どうして寂しさって表現してしまうんですか?」
「ふふっ・・・普通なら、恨みとか悲しみとかって表現するものね?」
「ええ・・・私も、そう思いますけど・・・」
「感情の表現には色々あるけど、暗く静かな世界を現すのは寂しいって言葉だけなの」
「はあ・・・」
「あははっ!分かりやすく言えば、孤独。かしら?何も見えない何も聞こえない、どこまでもどこまでも暗く孤独な世界。そこには肯定も否定のない。まるで海の底みたいにね」
「それって・・・夏樹さんの・・・?」
「そう。父親に刻まれているあたしの記憶・・・きっと、今でも、それは続いているわ」
「でも、それはちょっと考え過ぎのような・・・あっ、ごめんなさい!」
「ふふっ、いいわよ別に。でもね、あたしには見えちゃうのよ、そんな父親の姿が・・・」
「見える・・・んですか?」
「そう・・・京子と離婚してからは余計にね」
「あの・・・それって京子は?京子にも分かるんでしょうか?」
「そんなあたしが・・・?」
「ええ・・・。夏樹さんがそんな風に思っているって京子には?」
「きっと、分からないと思うわよ。だって、ほら?あたしって父親とかの悪口言ってたから」
「あっ・・・確かに・・・」
「でもね、そんな風に寂しいだけの記憶が刻まれたままで過ぎていく時間の中で生きてきた父親が、何を思い、何を求め、そして何をあきらめてきたんだろうってね」
「それって、お父様に刻まれている夏樹さんの記憶・・・ですよね?」
「そうよ・・・。そして父親は、最後の瞬間、自分の人生をどんな笑みで閉じていくんだろう?って」
「もしかして・・・それは、京子にも・・・」
「当てはまるんじゃないかしら。人は死の直前に浮かび上がってくる、その人が生きてきた全ての記憶を、ありったけの想いで包み込みながら、その生涯を終えていくのよ」
そう言えば、そう、確か、夏樹さんが言ってた・・・。
京子は、自分の未来が消えていくように感じているはず・・・って。
「生きている時間だけの・・・?」
「そうよ。人なんてさ、死んじゃったら全部おしまい!その人がどれだけの財を成していても、どれだけの地位や名声を手に入れていたとしても、んなもん、残った人たちの好きなように食い物にされちゃうだけ。狼が死んで豚が肥えるもぎりぎり当てはまるかしらね?」
「はあ・・・」
「人ってね、死が避けられないとあきらめた僅かな時間の中で何を思うと思う?」
「う~ん・・・何をって言われましても・・・たぶん、家族とか友人とか、何かやらなけれなならない仕事の途中でしたらその仕事の事とか・・・かな?」
「それもあるわね。でもね、死を受け入れた時、その人の瞳に映る全ての景色が霞み始めるの」
「景色が・・・?」
「そうよ・・・。そして、少しずつ、少しずつ、未来が消えていくのよ」
未来が消えていく・・・?
そういえば、さっきも同じような言葉を聞いたような・・・。
「そして、生きてきた時間の中で心の中に刻まれていた想いが、静かにその姿を現し始めるの」
「心の中に刻まれていた想い・・・」
「皮肉よね!生きている時は目に映る物しか信じられなかったのに、死を意識し始めるとさ、その逆に、目に見えない何かを信じてしまうんだからね。まるで、科学を信じて魔法を信じなかった人が、科学を否定して魔法を信じちゃうみたいな・・・そう思わない?」
そう思わない・・・?と言われましても・・・私の思考回路をしましては・・・はい。です。
「きっと、父親の脳裏には、悔しさと寂しさが姿を現すのかもしれない・・・そう思うの」
「それって・・・あの・・・」
「もし、あたしが父親の子供として生まれていなかったのなら、父親はそんな寂しい想いを知る必要もなかっただろうし、父親の記憶にあたしとの時間も刻まれる事もなかったの」
「でも・・・」
「そう思えてしまうの・・・あたしの父親がどれほどの寂しい時間を過ごしてきたのかって?」
「いえ・・・それは・・・。でも、夏樹さんは、どうして寂しさって表現してしまうんですか?」
「ふふっ・・・普通なら、恨みとか悲しみとかって表現するものね?」
「ええ・・・私も、そう思いますけど・・・」
「感情の表現には色々あるけど、暗く静かな世界を現すのは寂しいって言葉だけなの」
「はあ・・・」
「あははっ!分かりやすく言えば、孤独。かしら?何も見えない何も聞こえない、どこまでもどこまでも暗く孤独な世界。そこには肯定も否定のない。まるで海の底みたいにね」
「それって・・・夏樹さんの・・・?」
「そう。父親に刻まれているあたしの記憶・・・きっと、今でも、それは続いているわ」
「でも、それはちょっと考え過ぎのような・・・あっ、ごめんなさい!」
「ふふっ、いいわよ別に。でもね、あたしには見えちゃうのよ、そんな父親の姿が・・・」
「見える・・・んですか?」
「そう・・・京子と離婚してからは余計にね」
「あの・・・それって京子は?京子にも分かるんでしょうか?」
「そんなあたしが・・・?」
「ええ・・・。夏樹さんがそんな風に思っているって京子には?」
「きっと、分からないと思うわよ。だって、ほら?あたしって父親とかの悪口言ってたから」
「あっ・・・確かに・・・」
「でもね、そんな風に寂しいだけの記憶が刻まれたままで過ぎていく時間の中で生きてきた父親が、何を思い、何を求め、そして何をあきらめてきたんだろうってね」
「それって、お父様に刻まれている夏樹さんの記憶・・・ですよね?」
「そうよ・・・。そして父親は、最後の瞬間、自分の人生をどんな笑みで閉じていくんだろう?って」
「もしかして・・・それは、京子にも・・・」
「当てはまるんじゃないかしら。人は死の直前に浮かび上がってくる、その人が生きてきた全ての記憶を、ありったけの想いで包み込みながら、その生涯を終えていくのよ」
そう言えば、そう、確か、夏樹さんが言ってた・・・。
京子は、自分の未来が消えていくように感じているはず・・・って。
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